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[童話]幼い星


童話「幼い星」


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とある町のひとびとは、星に願いをかけます。



星たちは、その願いをかなえる役割をしていました。

ひとつの星がひとつの願いをかなえます。

星たちは、生まれては願いをかなえて大人になっていきます。

はじめはささやかな輝きの星は、大人になってきらきらと大きく輝くのでした。



あるとき、夜空に小さな星が生まれました。

幼い星は周りを見渡して、自分の仲間がたくさんいることが嬉しいと思いました。

周りの星のなかには、早々と人間の願いを聞き届けて大人になっていくものもありました。

幼い星は、そんな仲間の話を聞きながら、こんなことを考えていました。

「ぼくにもできるかしら。なぜだかとてもむずかしく思えるなぁ」



ある日、幼い星は流れ星に出会いました。

ふたりは少しおしゃべりをして、とても気が合うので仲良しになりました。

流れ星にはしっぽがついていて、それがどんどん短くなっていきなくなったとき、空から消える星なのです。

幼い星の仲間とは、違う運命をたどる星なのでした。

ひとびとの目にはあっという間に流れてしまいますが、星の時間では流れ星は消えるまで、いく日か夜空で過ごすのでした。

幼い星は、流れ星と仲良く話すうちに思いました。

「流れ星とずっと一緒にいたいなぁ。ぼくたちは願いをかなえて大人になるんだけど、ぼくの願いをかなえられないかしら。

流れ星がずっと消えないようにならないかしら」



幼い星は、星の願いをかなえる方法を知りたくて、星の王様に聞きました。

王様は諭すように言いました。

「星は人の願いをかなえることで大人になり輝くのだよ。

星の願いをかなえると、大人になれず輝くこともなく、暗い夜空の中に溶けこむような黒い星になってしまうと言われている。

それでもよいのかな?」

幼い星は答えました。

「それでもよいのです。ぼくは、ぼくの願いをかなえたい」

物知りな王様は、そう答えた星に、願いをかなえる方法を教えてくれました。



そうしているうちに、流れ星のしっぽは少しずつ短くなり、いよいよ消える日がやってこようとしていました。

幼い星は、流れ星のそばにきて、しっぽにそっとふれながら言いました。

「どうか君が消えてしまわないように」

そして、王様に教わったように願いをかけました。

すると、流れ星のしっぽに幼い星のささやかな輝きがうつりました。

そして流れ星は消えなくなり、幼い星はその隣で真っ黒の星に変わりました。


輝きを失ったけれども、幼い星は嬉しそうでした。



やがて、夜空に消えない流れ星を見つけた町のひとびとは、誇らしげに他の町から来たひとに話しました。

「今夜、空を見上げてごらん。いつまでも小さな尾をもった流れ星が見られるよ。その尾は笑っているように瞬いて見えるんだ」と。



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おわり。







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