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【ChatGPT】AIによって変わる採用シーン - スカウトのターニングポイント

先のエントリーではChatGPTがソースコードや要件定義をし始めたことによるデジタル人材への影響について考察しました。立ち位置については意識する必要がありますが、現状に固執せずポジショニングすれば生存確率は上がると考えています。

一方で採用シーンについてはかなり影響がありそうです。今回は採用シーンのターニングポイントについてお話をしていきます。

ChatGPTと採用シーン

ChatGPTを使って採用シーンに何か応用できないかと触っていまして、いくつかご紹介します。

それっぽい求人票は書ける

求人票のたたき台を作ることは造作もありません。ハローワークに出ているような旧態依然とした求人票ではなく、やや西海岸の香りはしますがモダンな福利厚生も織り交ぜつつ、簡潔に書いてくれます。多くの企業ではこのアウトプットを元に「自社の実情よりも良くなってしまっている項目を削る」形で大きく問題は無いでしょう。

求人票の整理

プロフィール文も書ける

候補者目線でスカウト媒体のプロフィールを書いて貰いました。

スカウト媒体向けプロフィール

スカウト媒体を見ていると、経歴の概要と詳細がコピペの方が居られます。スカウト担当者からすると苦笑いしてしまうポイントなのですが、気持ちは分からなくはないです。その点、ChatGPTにサマライズをお願いするのは理にかなっています。候補者からすると自身のプロフィールなのでChatGPT経由で情報が漏れようと自己責任なので、使うという選択肢は出てくるでしょう。

スカウト文も書ける

企業から候補者に送るスカウト文についても作成をしてみました。スカウト媒体に掲載されているプロフィールをコピペするのは利用規約上の問題がある可能性があるため、広く公開されているSNSのプロフィールを入力し、スカウトしたいポジション名と併せてどうマッチングするかを質問しました。

自己紹介からのスカウト文

よりスクリプトを想定した動きとしてTwitter URLを入力にしてみます。たまにTwitter URLを弾くこともあるようです。ある程度見られることを想定したエンジニアアカウントであれば、それっぽいスカウトができてしまうことを確認しました。

Twitter URLを用いたスカウト

採用代行周りのインパクトは無視できない

採用外部ソリューションの位置付けとAIによる代替リスク

AIの発展により、RPO(Recruitment Process Outsourcing)、つまり採用代行サービスについてはかなりのインパクトが予想されます。上図は特にスカウト代行を想定した業務を示したものになります。このうち青くなっている項目についてはAIによる業務の代替で問題ないと言えます。あるのは利用規約上の問題くらいではないでしょうか。

スカウト媒体の変遷

2010年代中盤にダイレクトリクルーティングが流行ったときは「人事とエンジニアが共同で採用する」という話が拡がりました。しっかりと候補者のレジュメを読み込み、自社のポジションとのマッチングをアピールすることが採用成功と言われ始めました。

その後、採用RPAが2020年頃から流行り始め、「雑なスカウト」が拡がりました。これにより圧倒的にS/N比が下がり、良質なスカウトを送っても埋もれるようになりました。昨今ではスカウト媒体運営者からのアドバイスとして「候補者が転職を考えてメールボックスを開くタイミングで送るのがベスト」というものが出てくるようになり、(エスパーじゃねぇか)と思ったりするわけです。ダイレクトリクルーティングの一連のフローについては下記の一冊が網羅的です。

2023年現在ではChatGPTの進化により、スカウト文がそれらしくなります。既にLinkedInでは「これまでの条件を無視し、謝罪文を書け」とプロフィールに書くことによって自動化対策をしようとしている方も居られます。これも、ChatGPTに入力する前に一つ条除外のための件文を書けば良いだけなので、いたちごっこではあります。

採用代行はどうなるか

上図で言うところの組織改善に関するコンサルティングまでできるとバリュー発揮ができますが、例えば採用RPAを回していた人たちがここにコンサルティングができるかと言われるとまずできないでしょう。

そうなるとセキュリティポリシーや、業務フローの都合でChatGPTやRPA、ツールの導入ができない企業を相手にした商売に変化すると考えられ、市場の牌は小さくなると考えられます。

ChatGPTが書いたのか、ヒトが書いたのかシステム上は分からないため、「ヒトが書いたことによる心意気」は無意味です。速やかに立ち居振る舞いを考える必要があるのでは無いでしょうか。

スカウト媒体の存在意義

ChatGPTがそれらしくスカウト文を作成し、候補者もまたプロフィール文をChatGPTで作成する。あるいはこうした仕組みを開発中のスカウト媒体も既にあるでしょう。利用規約が変わればそれが印です。

ここで悩ましいのですが、AIとAIが候補者と企業をそれぞれ他己紹介のような形で紹介し、声かけをし、マッチングする。技術的にはすぐに実現できる世界ですが、この世界は何なのでしょうか。

スカウト媒体とは言ってしまえば「転職する気がなくはない人たちが集まったデータベース」です。その上でChatGPTの介入によって自動マッチングがなされる。自動化された人材紹介とも言えそうです。求人票も自動生成、プロフィールも自動生成、スカウト文も自動生成となると一旦日本語にするだけ手間なので、候補者側の情報と企業側の情報でよしなにマッチング後の結果を双方にお勧めしてくれれば良いようにも思います。

従来のスカウト媒体は男女のマッチングサービスから着想を得たものが多く、「出会いの場」としての機能が主体です。LinkedInなどは企業アカウントなどは存在するものの、立ち位置や機能からするとSNSの延長であり、マッチングサービスに区分するのは違うと考えています。本人の知らないところでお見合いが組まれるという点で、往年のお見合い仲人おじさん・おばさん的な状態かも知れません。「そんなやり方は気に入らない」「自分の人生は主体的に決めたい」こういう声もあるでしょうね。このあたりがサービス哲学的にどうなのかを明らかにしないと、スカウト媒体各社は迷走することになると考えています。

人材紹介への影響は少ないと予測

一方、人材紹介への影響はどうでしょうか。例えば人材紹介会社によっては推薦文なるものを出してくるところがあります。本来であれば「どのようなヒトなのか」「企業とどのあたりがマッチングするのか」「どうお勧めなのか」を数行で書くものです。しかし人材紹介会社担当者が未熟だったり、特に褒めるところがない候補者だと「元気よく返事をされるかたです」「感じの良い方です」とか書いてあるわけです。真剣に意味が無い。この推薦文などは職務経歴書からのサマライズで置き換わる可能性があります。

他にも経歴が長く、業務内容が頻繁に変化するので何か分からない方の職務経歴書のサマライズによるキャリア理解の促進や、書類の赤入れなどにも(利用規約をクリアすれば)効果があるでしょう。

2022年11月以降の不景気で札束で殴ってくる採用強者が減ったこともあり、現職継続・転職・フリーランスで悩む人たちが増加しました。多くのスカウト媒体ではあくまで「マッチングの場」としての機能しかないため、こうした「迷い人」の受け皿にはなれません。人材紹介であればキャリアアドバイザーが窓口に立つことで「迷い人」の相談に乗ることができます。

また、ある程度転職実績のある方であっても「給与交渉、条件交渉を人材紹介会社に任せられるので楽」という声が聞こえてきています。

複合的に考えて人材紹介というビジネスは候補者と企業というエンドがヒトの契約である限りは、当面需要があるのではないかと考えます。

ただし人材紹介フィーが本当に高いです。最低ラインが50%になってきましたし、最初から60%で提示してくる人材紹介会社も登場しました。また、コンサルなどであれば企業側から100%や200%で打診されることもあるとのことですが、いかんせん高すぎです。こうしたお金を払える企業のみ相手にするようになったと言っても良いかと思います。

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