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【転職者の内定辞退】現職残留を選ぶITエンジニアが増えている

ここのところ様々な企業から「内定承諾後辞退の上で、現職残留を決める人が居る」というご相談を多く頂きます。

2023年現在では厳選採用の動きがあることから、選考フローも多いですし、採用ハードルも上がっていることから内定そのものが出にくくなっています。その上で他社決定ではなく自社残留を選ばれるということで、採用企業側の落胆が色濃く感じられます。採用に関する時間や、媒体などへのコスト投下を考えると現職残留の一報を受けて「なんで転職活動をしていたんだ?」と憤る方も居られます。今回はこうした現職残留を選ぶ方の増加背景についてお話します。

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現職残留を選ぶシナリオ

回収できた現職残留シナリオについていくつかピックアップしていきます。

給与理由

エンジニアバブル下では外資IT、コンサル、VCからの調達に成功したスタートアップによって転職者に対するオファー金額も高騰していきました。それ以外の企業についても「他社でこういう金額で内定が出たのですが」と本人や人材紹介会社に言われると呼応して載せていたこともあり、全体的に高い年収が提示されやすい傾向につながっていました。

就活や転職の際に重視したい項目を「軸」などと呼ぶことがあります。私は「提示年収が現年収の1.25倍を超えたタイミングで、転職の軸は提示年収になる」という説を唱えています。事業共感や業界への興味などを転職の軸に据えていた人たちも、提示年収がこのラインを超えていくと、どうでも良くなる人が多いです。

エンジニアバブル後である2022年11月以降はこうした高い提示をする企業が激減したため、全体的に提示年収が伸び悩む傾向にあります。

中には志望先の企業が社内準拠の給与を脚色なしに提示することから、大幅ダウン提示に繋がるケースもあります。特にエンジニアバブルにのっかって給与を伸ばせた方について、ダウン提示の傾向があります。

給与が伸び悩むとなると、他の転職理由が給与を上回る形で必要になります。これは2014年以前の転職市場ではよく見られましたが、7年もの長期間エンジニアバブルが続きましたので、暫くは理解されがたいものであろうと思われます。

一方で給与提示がそれなりの高さであっても、当該企業にとってはストレッチした内容であるために期待値が著しく高い場合もあります。年収が高いから良いかと言われると、入ってから尋常じゃなく苦労するケースもあります。パワハラやPIPに遭遇するケースも多いです。

業務内容の変わり映え、キャリアアップ、キャリアチェンジ

給与が伸び悩んだ場合、転職を決めるとすると「やりがい」「キャリアアップ」「キャリアチェンジ」などが焦点にあたっていきます。

一見良さそうなアプローチに見えるのですが、なかなかグリップができなくなっていると捉えています。

採用目標人数の達成を目的にしていたエンジニアバブル下では、転職を機にキャリアチェンジを受け入れる企業がそれなりに見られていました。しかし今では売り上げを立てることを目的にしている企業が多いため、即戦力が求められる傾向が強いです。そのため実績があり、手堅く即戦力が期待できる人を求めることから、現職と似たような業務内容で内定を出しやすいです。

業務内容が変わり映えがなく、給与も特に変わらない(もしくはダウン提示)とすると、転職についての合理性は見られないでしょう。

提示された労働条件を元に現職に掛け合ったら通った

エンジニアバブル下より少ないものの、待遇の改善、キャリアアップ、キャリアチェンジといったことが叶うこともあります。特に現職の給与が相場より低い場合、待遇アップは見込まれやすいです。

ここのところ相談が増加しているのが、こうした提示された条件を上長に提示することで現職がその条件を飲むというケースです。人間関係が良好な場合、転職先で再度人間関係を構築するのも面倒であり、現職で感じていた閉塞が払拭されるのであればということで現職残留を決めるというものです。

転職活動時の給与提示が現実的なものになったことで、「辞められて新しい人を採用して教育コストをかけるくらいなら、出せなくもない条件だし出すか」という意思決定が増えているようです。

私も遭遇したことがあるのですが、「転職活動をしたらこれだけの提示年収がなされた。私の市場価値はこれだけあるので上げてください。上げないと辞めます。困りますよね?」という企業脅迫のような交渉もあります。その後の業務での関りを考えると社内的にやりにくくなるため、交渉が下手だなと感じます。

そして、内定を出した企業からすると工数をかけてステ見積もりを出したような気持ちになれます。

提示された労働条件を元に現職に掛け合ったら通ったので辞退したが、変わらなかった

提示された労働条件を元に現職に掛け合い、内定辞退をして現職残留として転職活動も終わらせたものの、なんだかんだ理由をつけて待遇もキャリアも変わらなかったというトラブルも聞こえています。

役員や社長がNGを出した、その後の評価時期になって事業が芳しくないなどの理由もありますが、化かしあいのようだなとも思います。

候補者は「転職活動をする理由」を常に考える

転職をする理由は人それぞれです。年収、業務内容、働き方、人間関係。

転職活動をしていく上で、何故転職活動をしているのかということは自身の中で言語化しておきましょう。年収が理由の場合、早期に市場感にあたりをつけつつ転職活動を継続するべきかどうかを判断することが効率的です。

企業は随時「転職の軸」を確認しながら選考を進める

カジュアル面談を含めると、内定承諾までに接触する頻度は数回あると考えられます。この際に企業側は都度、転職の軸をヒアリングするようにしましょう。複数の企業の話を聞いたり、合格したりお祈りされたりしているうちに「転職の軸」は変わるものです。現状をお互いにすり合わせつつ、希望が自社で叶えられるかどうかを見ていくことによって、無駄な面接を削減できる可能性があります。

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