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『ちょっと思い出しただけ』


なるほど、ちょっと思い出したのは、
その人・その場面だったのか。

同じ日を6年間遡る。
結末を知っているだけに、苦い思い出から、
出会った頃の甘い気持ちまで振り返る、
その順次がむしろ残酷だ。
だけど、苦くても、当時の思い出は鮮明に、その感情を伴って思い出される。

観ている私たちもそうだ。
照生と葉の、限定的な数日間だけでも、
2人の関係性がありありと描かれる。
たった数日間なのに。
何がきっかけとかもなく、いやきっかけはあったかもしれないけど、
そこはあえて描かず、
あくまでも日常から切り取られた7/26という日を。

『ナイトオンザプラネット』が流れたタイミング。
夜明け、2人は同じ空を見ていた。

花束は、2人の出会いからすれ違い、
別れまでを描いていたけど、
ちょい思も結果的にはそうなんだけど、
だけどもっと身近なものに感じた。

河合優実の存在もまたよい。
照生にきっと思いを馳せていたであろう後輩が、時が戻るにつれて、
照生への真っ直ぐな気持ちが露わになり、
それもむず痒い。

照生も葉も、6年間で環境が変わっただけな気がする。
2人は、2人自身は変わっていない。

松居大悟、やってくれたなぁ

多分、はじめて行った日本橋のtohoシネマズごと忘れない。
電車降りたときから目の前にいた子も、券売機の前で見た。
なんとなく、『ちょっと思い出しただけ』を見そうな気がしていた。

葉ちゃんに、ほっぺにホイップクリームを付けられた照生の表情だったり、
2人が出会った日に歩きながら地団駄踏む様子だったり、
泉美に対する優しい視線を送る照生だったり、
付き合う日の水族館に現れた葉を見てビックリする表情だったり、
真剣に告白する様子だったり、
池松壮亮の自然な演技がとても光っていた。

葉ちゃん演じる伊藤沙莉もお茶目だった。
2人がくっついて寝ているときの、眠そうな様子。
踊っているときの楽しそうな様子。
急いで部屋を出る2人、笑顔が溢れる2人。
タクシーの乗客に花束を押し付けようとキレる葉ちゃん。
伊藤沙莉、かわいかったな。

知らない2人だけど、身に覚えがあるような、むず痒い2人。
恥ずかしいな〜

ちょっと思い出すよね、人ってみんな。
そういう、ちょっとした思い出で、構成されてんだ。

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