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フラっと映画館に寄って鑑賞するのにちょうどいいロマコメ〜『恋するプリテンダー』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『恋するプリテンダー』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)


学校や仕事帰りにフラっと映画館に寄って鑑賞するのにちょうどいいロマコメ映画という印象です。

まず、オープニングの2人の出会いのシーンで、ベタだけど思わず笑ってしまうユーモア、2人の関係性についてつく嘘(カフェの店員に自分達が夫婦だと偽る)、などを手際よく描いて映画全体のトーンやストーリーを提示する演出が見事です。主役2人の性格(ビーは賢いが少しおっちょこちょい、ベンは軽薄そうに見えるが相手を気遣う優しさを持つ)を、説明台詞ではなく、それぞれの仕草や行動でさりげなく表していたのもスマートです。

物語が進んで、オーストラリアのシドニーに舞台が移ってからは、広大な青い海と空を大スクリーンで満喫しつつ、伏線を回収しながらテンポよく進む物語を堪能することができました。特に、飛行機の中で単なるギャグとして描かれているように思えたものが、中盤のとあるシーンでミュージカル的な盛り上げに結びつく展開には唸らされました。

不満点としては、(作品の根底に関わる部分ですが)ビーとベンを周囲の人がやたらと仲直りさせようとする展開です。
登場人物たちが「2人が恋に落ちれば万事オーケーに違いない!」とでも言うように、当人の気持ちは一切考慮せずに恋人同士に仕立て上げようとする様(さま)に、「余計なお世話だな〜。」と終始感じてしまいました。結果的に上手くいったので良かったといえば良かったのかもしれませんが、それは単に結果論でしかありません。なんだか、恋愛至上主義の考えを主役の二人に押し付けているように見えてしまい、見ている間あまり気持ちの良いものではありませんでした。さらに、ビーの両親は内緒で勝手にビーの元恋人を連れてきて復縁させようとするという常軌を逸した行動にも出ていて、これにはかなり困惑させられました。
人生においての優先順位のつけ方は、人それぞれで、恋愛が上位に来てもそうではなくても自由なはずです。今作でも、恋愛至上主義を相対化したような価値観のキャラクターが一人でもいたら印象が違ったのかもしれません(もしかしたらボウはそういう人物なのかもしれません)が、一つの伝統的な価値観を主役2人に押し付けているように見える登場人物たちには、違和感を覚えずにはいられませんでした。

気になる点はありつつ、作品全体としては、大人が気軽に楽しめる快作だとは思うので、多くの人に映画館で見てほしいとは思います。

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