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バケペンに魅せられて/#238

いつの日からだろうか、その存在に気づいたのは。間違いなく記憶しているのは濱田秀明さんを知るのと同時だったということ。その作品はどれも素敵で直ぐに虜になった。目に星が写るほどに輝いた瞳で多くの作品を食い入るように見つめていていた。その作品たちは自分が知っているカメラたちでは到底表せれないような世界の連続。

ここで気になるのがやはりカメラ。Twitter、Instagram、Webなどを調べると意外にも直ぐに分かり、PENTAX67Ⅱという中判フィルムカメラであると知ったのだ。

そこで初めて中判フィルムの世界を知りバケペンと呼ばれる大きくてロマンのあるPENTAX67は、憧れのカメラへなった。

どんなカメラで、どんな写真が撮れるのか。気になっていてもたってもいられなくなった。そこで友人に頼み込んで少しだけ借りられることに。そこではじめて中判の世界を知ることになる。

右も左も分からないまま、無我夢中でシャッターを切った。ガシャンと鳴り響く大きな音と振動は今でも覚えている。それほど衝撃的な体験。どう撮れたのかと期待に胸が膨らみワクワクとドキドキの波が次から次へと押し寄せてくる。

写真を目の当たりにして思わず息が漏れた。「はぁ、なんて良んだ」と。それからというものバケペンへの憧れがより強くなった。けれど、それを手にする理由やそれで撮りたいものは何だろうかと。バケペンは10枚しか撮れないことに併せて、その性質上しっかり構えて1枚を撮るスタイル。そのため使うシーンは限られる。

だからこそ、その真意を見極めたくて買えずにいた。

もっと凄いものを、写真としてもっと良いものをと追い求めすぎていたのかもしれない。何か独創的なものを追い求めすぎていたのだろう。ある時を境にしてそのような意識は吹っ切れていた。肩を張ったり背伸びするのは自分には似合わない。いつも通り残したいものと素直に向き合えば良い。そういう考えに変わったのだ。

先日、Kodakの公式アカウントでバケペンで撮った日常をFEATUREされた。自分のいつもの日常、いつもの撮影スタイルで撮った作品ばかり。改めてこれで良かったんだと背中を押された気がした。バケペンだからこそ撮れる世界や気づくことがある。絵としての美しさ以上に撮影体験を通して人として豊かさをもたらしてくれるカメラ。自分にはそう写っている。

だからその世界に魅せられる人は多いのだろう。

今はありがたいことに手元に自分のPENTAX6×7がある。活躍する機会はそう多くない。けれど、そのカメラでシャッターを切る時は間違いなく自分にとって大切な瞬間であることに間違いない。そういった記憶や記録をこれからも紡いでいきたい。


 SUBARU(マカベ スバル)
鳥取県在住 / なにげない日常をテーマに写真を撮っている / 出張撮影 / 写真イベント企画  / 鳥取のPR活動も行なっている。
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