ド文系がイギリスCS大学院に合格するまで

初めまして。ド文系出身の私はつい最近イギリスのCS大学院に合格しましたが、「文系出身だけど専攻変えてコンピューターサイエンスを学びたい」という人に向けて、何か少しでも手助けになるようなことを書いていきたいと思います。情報が少なく、合格通知が来るまで結構孤独で不安だったので、後に続く人の不安を取り除けるように、できるだけ詳細に合格の経緯、各大学院のレベル感、豆知識などをお伝えしようと思います。

私のプロフィールは、

  • 大阪大学で英文学を主に専攻 (GPA 3.3, IELTS Overall 8.0)

  • 3年次にコロナ禍で交換留学の道が途絶える、1年間休学、プログラミングを独学で学び、スマホアプリを開発

  • イギリス留学の夢、プログラマーになる夢を叶えるべくイギリスCS大学院5校に出願

  • ノッティンガム大学院 MSc Computer Scienceから条件付き合格

なぜイギリス大学院?

CSを学ぶにあたってイギリスの大学院を選んだ理由は5つあります。

  1. 子供の頃からイギリスに移住することが夢だった

  2. イギリスのGraduate Visaの存在(卒業後2年間イギリスで就労可)

  3. イギリスCS大学院は文系でも受かりやすい(Conversion Coursesの存在)

  4. イギリス大学院は基本的に1年、学費もその分安い(他国と比べて)

  5. イギリス大学院は世界的にもハイレベル

一番目はすごく個人的なことですが、私の中の動機としては一番重要でした。小学校高学年の頃からイギリスの音楽、その他の文化にハマり出し、その時からずっとイギリスに行きたいと思っていました。コロナ禍でイギリス交換留学が中止になったときは絶望し、休学までしましたが、それが逆に卒業後大学院へ行くという決意に変わったということは結果的に良かったと思っています。

二番目は一番目に関係していますが、近年イギリスはGraduate Visaの期限を延長し、イギリスの大学卒業後2年間は就労可能なビザが降りることになりました。これで卒業後の現地就職の可能性が上がることとなりました。また、オランダにも世界大学ランキング200位以内の大学院を卒業後、1年間就労できるビザがあるということで、イギリス大学院は海外移住を目指す人におすすめな選択肢の一つだと思います。

三番目はイギリス大学院においてのConversion Coursesの存在です。コンピューターサイエンスの分野においても、イギリスのいろいろな大学において、文理問わず学生を求めているConversion Courseが存在しています。(参照 このリスト上の大学院以外にもあるので、各大学をよく調べてみてください) ImperialやUCLといった世界的にも名門の大学にも存在しており、CS分野以外の出身でも名門大学でCSの修士号が取得できるという点ではすごく魅力的です。日本にも京都大学情報学研究科などいくつかありますが、それらと比べて出願のプロセスも易しく、合格しやすいのも特徴だと思います。

四番目はイギリスの大学院は基本的に1年で卒業できること、それにより学費や生活費も圧縮できることです。アメリカやカナダ、オランダなどにも同じようなコースはありますが、やはり2年間で計算してみるとイギリスの方が安いです。一般的に学費がタダ、もしくは破格とされるドイツ、北欧などではConversion Courseの概念はないようで、学部時代で取得した単位の分野なども細かく見られるようです。

五番目はやはりイギリスには世界ランキング上位200位以内の大学が多数存在しており、国際色豊かで、世界的にも優れた学術的環境で学べるという点で、イギリスはすごく魅力的だと思います。(世界大学ランキングの信頼度は置いておいて)

出願結果

全ての大学院の結果が出揃ったので、書いておきます。

  • University College London Computer Science MSc -- 不合格 (11/15出願、12/7通知)

  • University of Glasgow MSc Software Development -- 不合格 (11/14出願、1/26通知)

  • University of Nottingham MSc Computer Science -- 合格 (11/21出願、2/8通知)

  • University of Birmingham MSc Computer Science -- 合格 (11/19出願、2/24通知)

  • Cardiff University MSc Computing -- 合格 (1/30出願、2/14通知)

いろいろなところで書かれていると思いますが、イギリス大学院は早い者勝ちなので、CSに限っては10月中に出すのが良いと思います。
Gathered Fieldといって数ステージに分けて選考を行うコースも多くあり(上記ではGlasgow, Birminghamが該当、Nottinghamも11月下旬に一旦締切)、第1ステージの締め切りは大体11月上旬〜下旬、結果発表は12月~1月なので、それに間に合わせるように出願すると、私みたいに何ヶ月も待っている間、精神的に不健康な状態を過ごすこともないと思います。
また、日本の大学からだと成績のGPAの換算、所属大学のレベルなど諸々の評価に時間がかかることが想定されるので、The Student Roomなどの掲示板でよく見かける「3週間でオファーが出た」みたいな書き込みを見て一喜一憂しないように、気長に待ちましょう。
また、結果通知に時間がかかることは裏を返せばあまたの志願者の中で健闘しているということなので、これまた気長に待ちましょう。

評価基準

CSのコースの評価基準としてはおそらく、

  1. 学部時代での成績や専攻、取得単位の分野(特に理数系、情報系の授業の履修が多ければ良、またそれらの成績)

  2. 推薦状

  3. 志望動機書 (Personal Statement)

  4. IELTS

  5. ポートフォリオなど?

の順で重要だと思います。特に出願したり出願を検討した大学院の中では、UCLとBristolでAレベル程度の数学能力の証明を求められたので、文系出身の方は出願書類の中でどう数学の能力をアピールするかがポイントになってくると思います。

どこまで効果があったのかはわかりませんが、私はedXでHarvard CS50Imperial A-level Mathematicsを履修したことをアピールしたり、センター試験の成績通知表をスキャンして翻訳し、数学の点数(7割くらい、泣)をアピールしたりしました。今考えると、たまに大学のポータルサイトで時々流れてくる、各大学連合(APRUなど)や交流がある大学のCSや数学の授業をオンラインなどで履修し、好成績を収めることをした方がアピールの説得力も増し、よかったかなと思います。
UCLではさすがに上記の私の「足掻き」は通用せず、"Your academic record was not as strong as other candidates."と一蹴されました。とほほ。
また、自分の大学のGPAの計算方法やGitHubのアカウントへのリンクなどを貼った書類を追加で提出しました。あとは2つほどスマホアプリを作って、それもPSなどでアピールしました。

また、特殊なケースでグラスゴー大学のプログラムはPSの提出が必要ありませんでしたが、一応出しておいた方がよかったと後悔しているので、そのような場合は提出しておきましょう。特にボーダーラインにいる場合は、PSに書かれた内容による最後の一押しが効果があるかもしれません。

各大学院のコース、数学Aレベルのレベル感

上でAレベルについて言及しましたが、実際にAレベル数学の授業をMOOCで受けてみた感想としては、数I, II, A, Bに加えて、対数や微積分の少し発展的な内容、あとニュートン力学(suvat)などが教えられる感じでした。実際のAレベル資格試験の難易度は受けてないのでわかりませんが、内容自体は文系の方でも理解できると思います。

各大学院のコースのレベル感としては、早めに出願する場合、
Imperial: A first-class degreeが要求条件、東大京大でGPA3.7以上とかで合格?
UCL: A minimum of a 2:1 degreeが要求条件、おそらくは上位大学理系の人のGPA3.5以上で無難に合格するレベル?
Glasgow: A minimum of a 2:1 Honours degreeが要求条件、上位大学で文系ならばGPA3.5以上で無難に合格するレベル?
NottinghamとBirmingham: A 2:1 Honours degreeが要求条件、上位大学でGPA3.2くらいあれば大丈夫?

くらいのレベルかなと感じました。しかしながら、これらは個人的所感+他のいろいろな条件(勤務経験、取得単位など)で変わってくると思うので、これらのGPAに足りてない人でも「受かったら儲けもん」という気持ちでとりあえず出願しときましょう。他の方の体験談を見る限り、結構色々と奇跡はおきているようです。

ちなみにイギリス式GPAに換算済みの成績を提出代行してくれるサービス(留学エージェント、私は利用しなかった)もあるようですが、応募者のGPAは各大学院でちゃんと計算されているみたいです。(ノッティンガム大学から「どうやって計算するん?(意訳)」というメールが届いた) しかしながら大学院によっては志願者のあまりの多さから適当に審査しているところもあるらしいので(The Student RoomでUCLがボロクソに書かれてた)、もし自分の成績証明書にGPAが書かれていて所属大学の計算基準が厳しい場合は、そういったサービスを利用するか、自分で計算基準を書いた参考書類を提出するのも手だと思います。


IELTS

大体、イギリスのCS大学院コースのIELTSの要求スコアはOverall 6.5~7.0, Subtestで6.0~6.5が相場だと思います。
おそらくWritingとSpeakingが鬼門だと思うので、これらは早めに対策していた方がいいです。私は大学で英語のエッセイを書く機会が多くある授業を取ってみたり、留学生と積極的に交流することを心がけたりして(留学生混住寮で生活してみたり)、スキルを高めていきました。ReadingとListeningに関しては、普段から英語で情報を入手することを心がけたり(Redditなどおすすめ)、海外のYouTubeやPodcastなどを活用しながら高めていきましょう。英語の論文やエッセイを速読することも、すごく効果があると思います。
もしスコアが足りなかった場合、WritingとSpeakingに関しては不服申し立てすると結構スコアが上がったりするのでこれもダメ元でやってみましょう。申し立て料金は9000円くらいでしたが、スコアが改善されたら返金されます。実際私もWritingが6.0から6.5に上がったり、私の知り合いも0.5上がっていたりしたので、スコアが異様に低いなと感じたらじゃんじゃん申し立ててやりましょう。
しかしながら、QuoraなどでIELTSはイギリス大学院入試において足切りにしかならない、あまり重要視されていないと言われているので、ここは出来れば出願前にサクっとクリアしときましょう。

また私が開発したアプリの宣伝ですが、英単語を効率よく学習できるようなアプリを開発しました。スマホのブラウザ上などで単語を選択、アプリに共有することで検索、単語帳保存までシームレスにしたアプリです。保存した単語は暗記周期に応じて何度も復習でき、発音も聞くことができます。また単語カードをアプリ上で自作することも可能です。Google Play上で無料で公開していますので、是非一度お試しください!これでIELTS学習で必要な多読も単語学習も一石二鳥で行えます!


志望動機書

志望動機書は2ヶ月くらいじっくり時間をかけて、自己分析を行いながら下記の質問に対する答えをじっくり考えて、また熱意が伝わるような英語になるように添削していきましょう。特にCSのConversion Courseに関しては、カリキュラムがかなりタフなので、論理的・数学的思考力の他に勤勉さや多くの課題をこなす能力があることなどを重点的にアピールしましょう。

執筆の際、UCLの志望動機書のガイドラインは非常に参考になりました。

  • why you want to study Computer Science at graduate level

  • why you want to study Computer Science at UCL

  • what particularly attracts you to this programme

  • how your academic and professional background meets the demands of this programme

  • what mathematics experience you have to meet the requirements of the programme

  • what programming experience you have

  • where you would like to go professionally with your degree

添削はやはり留学生の友人やネイティブの先生にお願いすると、びっくり見違えるほど改善できます。アメリカの大学院出願における志望動機書の書き方とは少し違うようなので(アメリカはユニークさ、どうやったら目に留まるかを重視するらしい)、できればイギリス出身の人に頼むと良いと思います。私はイギリス出身の友人に頼んで添削してもらいました。(彼自身はオックスフォード大学院に進学、まじですごい) また、Personal StatementとStatement of Purposeは少し書く内容が異なる(PSは網羅的に書く、Statement of Purposeは進学先の大学院になぜ進学するかという目的に重点をおいて記述する)らしいです。
また、私はPersonal Statementの大まかな部分は使い回しましたが、やはりコアな部分(各大学院の魅力的な部分、授業やコースの内容、環境など)は各コースに沿った内容に変えて提出しました。

また、どれだけ気をつけていてもタイプミスや、各個所の書き忘れなどあるかと思います。私はノッティンガム大学出願の際、下書きを間違えて提出してしまいました。(気づいた時は死ぬほど焦った)しかし、そのような場合でも落ち着いて大学にメールを送って指示を仰ぐようにすると案外大丈夫です。出願書類の本質的な内容がきちんとしていれば少々のミスはどうってことないので、落ち着いていきましょう。

最後に、参考程度にノッティンガム大学に提出した私のPSを載せておきます。

推薦書

推薦書はこれもまた余裕を持って(少なくとも1ヶ月)推薦者に依頼しましょう。推薦者はやはり一番自分と関わりがあり、いい成績をキープしている授業の先生に頼むのが一番だと思います。となると、私はゼミの先生とお気に入りの授業のイギリス人の先生に依頼しました。依頼する時は、推薦者にアピールしてほしいこと、フォーマット、期限などをはっきりと伝えましょう。私は論理的思考力や授業態度、勤勉さなどを重点的にアピールしていただきました。
1~2通要求してくるコースが多いですが、ラッセルグループ下位の大学以下は推薦書免除のコースもあるので(カーディフ大学など)、滑り止めで受けるコースはそれらのコースを選ぶのもアリだと思います。

その他

出願校を選ぶ際は、大学間交流がある大学院を優先的に選ぶのも効果的かもしれません。特に私の大学の場合、交換留学先にノッティンガム大学があり、私の大学の学生のレベル感をよく把握しているというのも、相手の大学側にとって安心できる材料の一つだったかもしれません。

何か他に思いついたことがあったり、アップデートすることがあれば、順次追加していこうと思います。

なにはともあれ、無事受かってよかった〜。



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