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フランスにちょっと変な名前の犬が多い理由

フランスに住んでいると、ちょこちょこ珍しい名前の犬に出くわすことがある。

例えば、友達の犬の散歩に付き合って公園に来た時。公園にはドッグランみたいに柵があって、犬の飼い主はそれぞれ犬を解放して遊ばせる。すると、ある犬の飼い主が「トーキョー!トーキョー!」と叫んでいる。フランスで突然耳に入った聞き馴染みのある都市に一瞬、もしかして私に向かって「君はもしかして東京出身だろう!」と言っているのか?と思った。が、飼い主の目線の先にはわんちゃん。

まさかと思いながらその飼い主さんに「お宅の犬の名前って…?」というと「ああ!トーキョーって言うんだ!」と。何ゆえ?と尋ねると「僕がトーキョーを飼い始めた年が、Tの年だったんだ」という。私は「へー」と相槌を打ちながら「どういうことだろう」と思った。

一応そのあと、犬のトーキョーくんにこっそり「私、東京(の辺り)から来たんだよ」と話しかけたが、トーキョーは他の犬に夢中で多分聞いてなかった。トーキョーはこのさき東京がどんな所か知ることはないのかな、と思うと少し切なかった。


他の日に、また別の友達のお家に遊びに行って、彼女の飼い犬と戯れていた時。
「この子の名前は?」と聞いたら「ナント」と。
私が「フランスの都市のナント(Nantes)のこと?」と聞くと、
「うん、でも綴りはNantoで、日本語の『南東』からとったの。好きな漫画で出てきた日本語なの。響きがいいと思って。それに私、ナント(Nantes)出身だし丁度いいかなって。」
「ふーん、珍しい名前だね」
「まあ、私が犬を飼い始めたのはNの年だったから」と友達。

私が「あ、何なのそれ!前も他の人が言ってた!」というと、友達は色々教えてくれた。フランスでは、犬を飼い始めた年によって犬の名前に使う頭文字が決められているのだそうだ。
より正確に言えば、飼い犬をLOF( le Livre des Origines Français、フランス血統書)に登録する場合はこのルールを守らなければいけないのだそう。頭文字を定めることで、犬の管理をしやすくするんだと。
この頭文字につけるアルファベット、干支のように順繰りに回ってくるのだが、K、Q、W、X、Y、Zの5つのアルファベットは「名前がつけにくい」という理由で除外されているのだそう。

ちなみに今年、2024年はV。
「Vなんか、除外されているKよりつけにくそうじゃないか。私はヴィクターとかヴィクトリアスとかしか思いつかないけどなあ」と思っていたのだが、
「今年から犬と暮らし始めるあなたへ!」的な記事に、Vから始まる名前がたくさんあげられていた。ヴァニー、ヴァロンとかいうものからVolvo(車でお馴染み)とかVan Gogh(ゴッホ)なんてのもあった。Van Goghなんて偉大な画家の名前をつけられたら犬の方も気が重いんじゃないか、と思う。

ところで、フランスでは(人間の)子どもの名前をつけるときは、カトリック聖人の名前からとることが多い。
もともと決められた中から選ぶ上に、その時のトレンドなんかもあるので、フランスでは日本以上に人々の名前がよく被っている。1クラスのなかに何人もクララ、ガブリエル、エンゾーがいる、ということがざらにある。
ちなみに今私が大学で取っている授業では、15人の生徒の中にピエールくんが2人いる。なので二人はピエール1(ピエールアン)とピエール2(ピエールドゥ)と呼ばれている。


人の名前はクラシックが好まれるのに対して
犬の名前はオリジナリティーが炸裂しているのが、なんだか面白い。

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