季節の言葉の「おもてなし」
はじめに
四季折々の風情が息づく日本の文化には、季節の移ろいを感じさせる言葉が数多くあります。それらの言葉は、単なる時候の挨拶にとどまらず、その季節ならではの風景や心情を繊細に伝え、受け取る側の心を温かく包み込みます。特に手紙において、こうした季節の言葉を巧みに取り入れることは、相手への思いやりや感謝の気持ちを伝える一つの「おもてなし」とも言えるでしょう。
春、夏、秋、冬——それぞれの季節には、それぞれにふさわしい言葉があります。本エッセイでは、各季節ごとにどのような言葉を用いれば、受け取る側の心に響く手紙を書けるのかをご紹介します。
第1章:春の言葉の「おもてなし」
春は新たな始まりと再生の季節です。手紙において、春の言葉を巧みに用いることで、受け取る側に温かさと希望を伝えることができます。
改まった手紙
立春の頃
余寒の候
早春の候
陽春のみぎり
余寒まだ去りやらぬ折りから
春まだ浅き折
桜花らんまんの折りから
改まった手紙には、季節の移り変わりやその時々の風景を表現する言葉を使います。例えば、「余寒の候」や「早春の候」は、まだ寒さが残る春先の雰囲気を伝え、「桜花らんまんの折りから」は、満開の桜の美しさを描写します。こうした表現を用いることで、手紙を受け取った人にその季節感を届けることができます。
日常・友人宛の手紙
向春の気配なお遠く
梅のつぼみもまだ固く
吹く風に春の気配が感じられる様になりました
ひと雨ごとに春めいてまいりました
桜の便りがあちこちから聞こえています
陽光がきらきらと眩しく感じられる今日この頃
花冷えの日が続いておりますが
春の日がうららかな好い季節となりました
日常や友人宛の手紙では、もっと親しみやすい言葉を使います。「ひと雨ごとに春めいてまいりました」や「陽光がきらきらと眩しく感じられる今日この頃」などの表現は、季節の変化を柔らかく伝えることができます。また、「花冷えの日が続いておりますが」のような表現で、季節の気温差を感じる一言を添えることで、よりリアルな季節感を伝えることができます。
第2章:夏の言葉の「おもてなし」
夏は生命力が満ち溢れる季節です。手紙に夏の言葉を取り入れることで、受け取る側に活気や涼しさを届けることができます。
改まった手紙
立夏の候
新緑の候
麦秋の候
盛夏の候
酷暑のみぎり
暑さ厳しき折
入梅の折りから
風薫るすばらしい候
改まった手紙には、季節の特徴を細かく表現する言葉を使います。「新緑の候」や「麦秋の候」は、初夏の新鮮な緑や収穫を迎える風景を思い起こさせます。「盛夏の候」や「酷暑のみぎり」は、夏の盛りの暑さを伝えます。これらの表現を用いることで、手紙を受け取った人に季節の風景や気候を感じてもらうことができます。
日常・友人宛の手紙
若葉が目にしみるころ
さわやかに皐月をお迎えの事でしょう
つつじが今を盛りに咲き誇っています
そろそろ梅雨入りも近いようですが
連日の雨に木々の緑も深くなり
雨にぬれた紫陽花に風情を感じるこのごろ
太陽がまぶしい季節となりました
土用あけのあつさ一段と厳しく
日常や友人宛の手紙では、もっと具体的で親しみやすい表現を使います。「若葉が目にしみるころ」や「つつじが今を盛りに咲き誇っています」は、季節の花や風景を具体的に描写します。「雨にぬれた紫陽花に風情を感じるこのごろ」や「太陽がまぶしい季節となりました」のような表現で、季節の風物詩や気候をリアルに伝えることができます。
第3章:秋の言葉の「おもてなし」
秋は収穫と実りの季節です。手紙に秋の言葉を取り入れることで、受け取る側に豊かさや感慨深さを届けることができます。
改まった手紙
立秋の候
夜長の候
仲秋の候
残暑のみぎり
秋涼の候
菊薫る残暑のみぎり
残暑なお厳しき折柄
灯火親しむ頃
改まった手紙には、秋の深まりを感じさせる言葉を使います。「立秋の候」や「仲秋の候」は、秋の始まりや中頃を表現します。「菊薫る残暑のみぎり」や「灯火親しむ頃」は、秋の風物詩や夜の長さを伝えます。これらの表現を用いることで、手紙を受け取った人に秋の風景や気持ちを感じてもらうことができます。
日常・友人宛の手紙
去りゆく夏を惜しむかのように日暮の声が聞こえます
空の色もめっきり秋らしくなり
虫の声が涼しげに聞こえはじめました
澄み渡った青空はどこまでも高く
菊の香り高き昨日今日
庭の柿の実もようやく色付きはじめ
晴れ渡った小春日和の中
山々も亮の装いを始める頃となりました
日常や友人宛の手紙では、秋の風景や感じることを具体的に表現します。「去りゆく夏を惜しむかのように日暮の声が聞こえます」や「虫の声が涼しげに聞こえはじめました」は、秋の到来を感じさせます。「庭の柿の実もようやく色付きはじめ」や「山々も亮の装いを始める頃となりました」のような表現で、秋の実りや風景をリアルに伝えることができます。
第4章:冬の言葉の「おもてなし」
冬は静寂と厳しさの季節です。手紙に冬の言葉を取り入れることで、受け取る側に温かさや静けさを届けることができます。
改まった手紙
立冬の頃
暮秋の候
師走の候
新春の候
日増しに寒さ覚えるころ
厳冬のみぎり
歳末ご多忙のおり
寒気厳しきおり
改まった手紙には、冬の厳しさや新年の到来を感じさせる言葉を使います。「立冬の頃」や「暮秋の候」は、冬の始まりを表現します。「厳冬のみぎり」や「寒気厳しきおり」は、冬の厳しい寒さを伝えます。これらの表現を用いることで、手紙を受け取った人に冬の静寂や寒さを感じてもらうことができます。
日常・友人宛の手紙
日がめっきりと短くなってきました
落ち葉が風に舞う季節となりました
冬の足音がここかしこから聞こえて参ります
梅のつぼみが木枯らしの中でふくらみはじめました
心せわしい年の暮れがやってまいりました
良いお年を迎えられたことと存じます
日常や友人宛の手紙では、冬の風景や感じることを具体的に表現します。「日がめっきりと短くなってきました」や「落ち葉が風に舞う季節となりました」は、冬の到来を感じさせます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?