見出し画像

四季の茶花の「おもてなし」

第一章:春の茶花

1.1 元旦の茶花

春の始まりを祝う元旦には、椿と突羽根を用います。椿はつばき科の常緑高木で、赤、白、薄紅など多彩な花色を持ち、一重咲きから八重咲きまであります。艶やかな葉に照り映える椿の花は、新年の華やかさを象徴するのにふさわしい花材です。突羽根はビャクダン科の落葉低木で、正月の空に舞う追羽根を思わせる姿から「羽子木」とも呼ばれ、正月の茶席にぴったりの花材です。

1.2 小寒の茶花

小寒には、梅の楉(ずわえ)と妙蓮寺椿を飾ります。梅はバラ科の落葉高木で、早春に先駆けて咲く五弁の白色や紅色の花が特徴です。茶花にはつぼみがちの枝や楉が好まれ、寒さを吹き飛ばすように真っすぐにいけられます。妙蓮寺椿の葉は三葉や五葉と奇数で扱われ、茶席に落ち着きと品格をもたらします。

1.3 七草の茶花

正月七日の七草粥に因み、七草の茶席には蕗の薹と福寿草を用います。蕗の薹は春一番に土から芽を出す「元日草」とも呼ばれ、全草が食用となる植物です。七草粥の代わりとして蕗の薹を食することから、七草の茶席にぴったりの花材です。また、福寿草を添えることで縁起の良い花いけとなります。

1.4 小正月の茶花

小正月には南天と白玉椿を飾ります。南天はメギ科の常緑低木で、「難を転ずる」という意味から正月の花材として用いられます。南天箸で小豆粥を食べながら、南天を飾る習わしがあります。白玉椿は、椿の中でも特に美しい品種で、清楚な白い花が小正月の茶席にふさわしい花材です。

第二章:夏の茶花

2.1 端午の節句の茶花

端午の節句には、菖蒲、花菖蒲、蓬を用います。菖蒲はアヤメ科の多年草で、成長のシンボルとされ、邪気祓いの意味もあります。花菖蒲の鮮やかな色と蓬の香りが、男の子の健康と成長を願う端午の節句にふさわしい花材です。

2.2 憲法記念日の茶花

憲法記念日には、雪待草を飾ります。雪待草はサトイモ科で、純白の花芯を持つ花が憲法の守る人権の象徴のようです。その純粋な美しさが、記念日の茶席にふさわしい花材です。

2.3 母の日の茶花

母の日には、サンダーソニアと白桔梗を用います。サンダーソニアはユリ科の多年草で、「クリスマスベル」とも呼ばれる袋形の花が特徴です。母の日に贈る花としてカーネーションが有名ですが、最近ではこの花も人気があります。白桔梗の清らかな花も、母への感謝を表すのに適しています。

2.4 葵祭の茶花

葵祭には、立葵を飾ります。アオイ科の越年草で、一般に葵と呼ばれる花は立葵のことです。祇園祭に合わせて飾られるハート形の二双葵は、祭りの華やかさとともに、茶席にも彩りを添えます。

第三章:秋の茶花

3.1 秋分の日の茶花

秋分の日には、オランダ三つ葉、菫、萱草を飾ります。オランダ三つ葉はセリ科の多年草で、白い小花が密集して咲きます。萱草はユリ科の多年草で、鮮やかなオレンジ色の花が特徴です。菫は日本に生息する野菫を用い、秋の茶席に涼しげな雰囲気をもたらします。

3.2 野遊びの茶花

野遊びには、烏の豌豆、菫、野蒜を用います。烏の豌豆は野豌豆とも呼ばれる野草で、紫色の小花が愛らしいです。野蒜はユリ科の多年草で、菫と共に野摘みの情景を茶花で表現します。

3.3 七五三の茶花

七五三には、千両、百両、万両を飾ります。千両はセンリョウ科の常緑低木で、赤い実が特徴です。百両と万両も同様に赤い実をつけ、子供たちの成長と健康を祝う七五三の茶席にふさわしい花材です。

3.4 文化の日の茶花

文化の日には、紅葉、萩、桔梗を用います。紅葉は秋の代表的な花材で、鮮やかな赤や黄色の葉が茶席に彩りを添えます。萩はマメ科の落葉低木で、白やピンクの小花が特徴です。桔梗の紫色の花も、文化の日の茶席にふさわしい花材です。

第四章:冬の茶花

4.1 冬至の茶花

冬至には、柊と南天を飾ります。柊はヒイラギ科の常緑低木で、鬼払いの木として古くから用いられてきました。南天は「難を転ずる」という意味から、冬至の茶席にもふさわしい花材です。

4.2 クリスマスの茶花

クリスマスには、ポインセチアとクリスマスローズを用います。ポインセチアはクリスマスの象徴ともいえる花で、赤や白の葉が特徴です。クリスマスローズはキンポウゲ科の多年草で、可憐な花がクリスマスの茶席に華を添えます。

4.3 大晦日の茶花

大晦日には、南天と千両を飾ります。南天は「難を転ずる」という意味から、一年の無事を感謝し、新年を迎える準備としてふさわしい花材です。千両の赤い実も、来年の豊かさを願う意味で大晦日の茶席にぴったりです。


四季折々の茶花を通じて、季節ごとのおもてなしの心を感じることができます。茶花は単なる装飾ではなく、茶の湯の精神を表現し、季節の移ろいを感じさせる大切な要素です。それぞれの季節にふさわしい花材を用いることで、茶席に集う人々に感謝と季節の美しさを伝えることができるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?