夢日記 超能力で悪と戦った夢


#創作大賞2024 #エッセイ部門

夢と言うのは、展開が滅茶苦茶で、そのくせに妙にリアルだ。だから夢だとわかっていても、現実と混同して冷や汗をかいてしまう。痛みも苦しさもある。私の夢は特にリアルで、夢だと思えないくらいだった。

あんなに激しい冒険を繰り広げてきても、起床後じんわり記憶から剥がれ落ちていく。その感じも夢らしい。
面白かった夢があるので、こうしてまとめていこうと思う。
実は夢日記なるものをつけている。今回はその一つを紹介したい。
夢日記をつけると気が狂うという一説があるらしいが、そんなことは今のところない。夢を見て記録するだけなので、気が狂う要素がない気がする。

私の夢は空想と冒険の世界で満ち溢れていた。
夢の中で、よく火に飛び込む、ビルの中を飛ぶ、剣で戦う、魔法を使うなどファンタジーよりの夢を見る。
昔から妄想が大好きで、物語好き、他者と関わらずに読書を楽しんで来たせいで、無駄知識だけ豊富である。
そのせいか夢も物語としてしっかり出来上がっており、こちらが驚くような伏線回収があったり、あまりの大冒険に起床後に疲れ果てていることがある。疲れを取るための睡眠で疲れている。
そのくらい凄まじい夢を見るということだ。私の脳は一体私をどうしたいと言うのか。別にオリジナルの映画を見せてくれなんて頼んでいない。
こっちは安らかに眠りたいのだ。それなのにこの仕打ちである。

なんでそんなに疲れるのかと思うだろう。
私の夢はリアルすぎて、ほぼ現実に近いようなクオリティだからだ。自分の夢が売れるなら是非売りたい。
熱かったら熱いし、包丁で刺される夢なんて本当に死ぬほど痛い。空を飛ぶ夢では、空気抵抗や強風をしっかり感じている。

そんな私が見た夢を、今日は一つ紹介しよう。


今回は私がとある歌を歌い始めたところから始まる。内容は覚えていないが、若者ならみんな知っている曲を口ずさんでいた。室内だったが、外に聞こえていたらしい。
そして外に出かけると、複数の人間に「聞こえていた歌を歌ってくれ」と頼まれた。あまりの勢いに断れず、歌うとみんな絶賛した。
私は一人カラオケなどは好きなものの、そんなに歌が上手いわけではない。プロの歌手の方が、絶対に歌唱力がある。そこで「素人だから、そんなに頼むのはやめてくれ」と話した。
うまく逃げようと思ったのだが、その後もいろんな人たちが私を囲み、ついには私のいる町のほとんどの人が、私のあとをつけてくるようになった。

この異様な現象に、私は逃げることしか出来なかった。
数千人、数万人から逃げることになった。それにその間も歌わないと「何で歌ってくれないのか!」と怒られ、石やものを投げつけられるので、歌いながら逃げた。
喉も渇くし最悪である。車に乗って歌いながら逃げた。それでもみんな絶賛しながら追いかけてくる。
そしてどんどん人数が増えて行った。私は逃げながらも、「これはどう考えてもおかしい」と感じていた。何かの異常が発生しているとしか思えない。だから誰かに助けを求めようとしたのだが、既にこの異様な現象は町中に広がっていた。

車を飛ばしていると、とある人に声をかけられた。ちょっと背の高い男性だった。私はその人を見たことがないが、しかしどこか知っているような面影がある。
彼は私に「歌ってくれ」とは言わなかった。異常がない人間を見つけて喜ぶ私に、彼は「お前の歌は人の精神を汚染して破壊している」と告げる。そしてそうなった人間は二度と元に戻らないと言われた。

そこで、私は彼に誘導されるまま船に乗せられ、近くの大きな川の真ん中まで来ることになった。「ここで異常を起こしている人間がみんな溺死するまで歌え」とメガホンを渡される。私は「人を殺したくない」と告げるのだが、このままだとどんどん犠牲者がでると言われる。
私の歌を聞いて影響を受けた人間がいなくならないと、どんどん感染者が増えていくらしかった。

船と言っても、客船サイズである。この男がどこでそんなものを貸し付けて来たか知らないが、けっこう立派だった。
近所の川にこんな大きな船が出せるかと言いたかったが、夢なのでそこは大丈夫なのだろう。

私は仕方なく歌った。船の上に乗って、大声で歌った。私の歌に釣られてみんな川の中へ飛び込んでいく。まさにハルメンの笛吹だった。
私は上から溺死していく人々を眺めていた。声が枯れるころには、川に無数の溺死死体が出来上がっていた。もう何時間歌っただろうか。
肩で息をする私に、「本当はお前も殺しておいた方がいいが、それは止めておく」と男は言った。その代わり一緒に来てもらうと。
こいつが何者かわからなかったが、一応従うことにした。

その後何故か刑務所の中に居た。
多分騒ぎを起こした罪だろうか。しかし刑務所と言っても様子がおかしい。

私は確かに囚人が着るようなオレンジ色の服を着ているのだが、それだと海外の刑務所である。その後、何故か英語で話しかけられ、「なんで捕まっているのかわからない」とできる限り英語で喋った。
捜査局っぽい人が入ってきて、「日本で起きた惨事を知っている」と私が集団溺死事件に関与していると言った。
「それなら、俺より彼が詳しい」と男の存在を言うが、そんなやつはいないと、否定される。
話を聞くと、私は囚人というより、一時的に保護されると言った形になるらしく、許可が下りたら私で人体実験的なことを行う予定らしい。

まあそれも仕方ないなと思った。「よくわからないけど、私も自分が何をしたか知りたい」と言うと、「協力的なのは良いことだ」と言われた。当たり前だ。こんなところさっさと出たい。日本の刑務所じゃないのは何故かと聞くと、「彼らの手に負えない」と言われた。

どうやら日本には、この異常な現象に詳しい専門家はいないらしく、他国に解析を任せたらしい。「君は英語も話せるし、通訳はいらないだろう?」と言われたが、そんなに堪能ではないので困った。「そんなに流暢じゃないから、厳しい」と言うと、「お前の協力次第で家に帰れるようになるぞ」と言われる。とにかく調査が終わるまで、返す気はないらしい。

夢の中で英会話を求められ、頭をフル回転させて英語を話さなくてはならないとは。大変すぎる。どう考えても睡眠中に見ていいものじゃない。

その後刑務所の中に入れられ、他の囚人に何か言われるも、言い返す気力もなかった。逃げようかなと思ったが、夢なので何とかなるかもしれない。
気付いたら違う場面にいたりするだろう。夢とはそういうものだ。

その後、独房の中からさっき川にいた例の男の姿が見えたので、急いで看守を呼んで話をきいてもらおうとしたが、信じてくれなかった。何とかここを出ようと考えていると、看守の服を奪ったのか、看守コスプレをした男がやってきて「ここからお前を出してやる」と言われた。

お前も証言してくれたらいいのに・・と私が言うと、「俺は人間じゃないから、忙しい」と言われた。何を言っているのかわからない。
これだから中二病は。どうせ人外だけど人型のそれなりに身なりの整った男性と、どうにかなりたい何て日頃から考えているから、こんな夢を見るのだ。

その後そいつは、私の手を引いて簡単に刑務所を脱出した。
普通の映画だったらここで逃走劇が繰り広げられるところだが、夢なので何故かスムーズに出られた。

何で出してくれるのかと訊くと、来てほしいところがあるらしい。
行けばなんか偉い人が集まってそうな、政府の要人とかがいそうなパーティー会場だった。
「ドレスコードが必要だな」とか言われてスーツを着せられた。なぜか男性用の高そうなスーツである。
「取りあえず会場に潜り込んで食事をしろ」と言われた。何でかわからなかったが。

豪華な食事の前で、何かのパイ?みたいなものを食べた。アップルパイみたいなそれは、パンのようにも見えて、あまり豪華とは思えないメニューだ。

私はそれを食べようとしたところ、何故か中から音がした。食べ物から音がするとは・・奇妙な現象だ。男が「何かわかったか」とワインを持ったまま私に聞いた。私は「変な音がする」と言うと、同じ音がするやつを探せと言われた。よく耳を澄ませていると、会場の中から同じ音がする。
直ぐに見つかったので、柱の裏だと告げると、男は「よし」と言ってワインを床にぶちまけた。

何故かそれが巨大な水溜まりになり、どんどん床を覆っていく。会場がパニックになると同時に逃げ道の扉が水圧で開かなくなった。こいつも何かの能力者だろうか。私が見つけた音のするやつは、柱の裏から出て来た。

男はパニックになる人を押しのけて、体を捻りながら発砲した。まるで映画だ。格好良すぎる。呆然とする私と客を置いて、銃撃戦が始まった。私がぼんやりしていると、男は私の肩を引き寄せて、「あいつを見失わないように、一緒に来い」と言った。正直銃撃戦に巻き込まれるのはごめんである。
逃げた男も必死で抵抗していく。こちらに撃ち始める。私は「もっと先だ」などと指示を出した。水が足元を覆って滑り出し、水の上を走る形になった。
もう凄かった。銃撃戦なんて経験したことがないのに、火薬のにおいまで漂ってくる。

どうやらこの男の能力は物体を増幅させて操ることらしい。
犯人は私が自分の居場所を特定していると気づいたのか、何らかの隙を見つけて、なぜか私を攫った。
手には銃がある。突きつけられた。夢だとわかっていても大変に怖い。
男は慌てずに銃を巨大化させ、撃たずに犯人の頭を巨大な銃で殴った。ノックアウトである。
ここは本当にすごかった。そんな能力の使い方もあるのか・・と驚いた。


彼は気絶しそうな私を助けると、「よくやったな。お前のことを殺さないでよかった」と言った。私は自分の歌の時点で何が起こっているかわからなかったが、何とか食事に毒を混入した犯人は倒せたらしい。
なるほど。でも犯人を捕まえるだけならわざわざ銃撃戦まで持って行かなくてもよかったのではないだろうか。そっと捕縛でよかっただろう。
しかし格好いいのも事実。
私は完全にこの格好いい男に夢中になっていた。「兄貴と呼ばせてください!」と目を輝かせて言うと、「別にいい」と言われた。何でこんな状況でテンションが上がっているのかとか、いろいろあるが。まあそういうやつらしい。
川の水を増幅させたのも兄貴らしかった。あんな大きな船が川に出せたのも、兄貴が水を増やしていたからだったそうだ。

兄貴は「実はこの世界は元の世界ではない。お前がいたところではない」と告げた。どうやら最初の家で歌を歌っていた時点で、違う世界に来ていたようだ。
「本当の居場所に戻った方がいい」と言われた。
その時に私の「音を操り、音を見る能力」というのは、はがれるらしい。

そして次の瞬間、兄貴のアジト的なところに瞬間移動した。そこは二段ベッドが二つある空間で、狭かった。壁は網目状のガラス板になっており、そのガラスの網目一つ一つに違う世界が映っていた。別の世界を覗けるらしい。そこが黒くなっていたら、異常が発生していると説明してくれた。

自分の世界を覗くように言われて、網目から見てみたのだが、どう見ても自分が生きていた時代とは違っていて、戻るに戻れないということに気付く。
自分が生きていた頃から何百年も経過しているのがわかった。

私は悩んだ末に「ここに残るから、仕事を一緒にさせてくれ」と頼んだ。すると、兄貴は「死ねないし、永遠にさっきみたいな危ない労働が待っているけどいいか?」と訊いて来た。
世界の秩序を守って、あらゆる危機を乗り越えるのは相当大変らしい。他にも兄貴みたいなやつは何人もいるということだった。私は「それでもいいから、兄貴の傍にいさせてくれ」と言った。

すると、兄貴はちょっと考えて「わかった。だったらこっちへおいで」と言って、私の首に噛みついた。自分の首に血が流れていくのがわかる。
もうこういう要所要所で自分が性的なことばかり考えているのが垣間見える。どうせイケメンに噛まれたいとか、そういう願望が出ているのだろう。
しかしみなさんは想像できるだろうか。
人に血が出るくらい首を噛まれているという状況を。
痛い。いくら相手がイケメンだろうが何だろうが、首を噛まれると痛い。
犬にかまれた時の何十倍も痛い。そりゃあもう殺意が湧くくらいに。
犬歯を突き立てられたので、そこだけ鋭いものを激しくぶつけられたみたいな痛みだった。小指をぶつけた時の痛みと切り傷の痛みの激しいのが一緒にくるみたいな。


うっと顔を歪めていると、兄貴は私の首に針を刺した。「人間には戻れないけど、いいな?」と再三言った。
私が頷くと、「じゃあ、目が覚めたら声をかけてくれ」と言った。私は意識を手放した。その後目が覚めると、体から血の気が無くなっていることに気付く。
兄貴は私に一通りの武器や服などを渡した。「初めは俺の言う通りに動いてもらう」とも言った。そして喉ケア用の薬を渡して、「音や声を操るだろうから、これを使え」と言われた。
音が武器なら楽器とかマイクとかなのだろうか。そんな想像が膨らんだ。

ここで目が覚めた。



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