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審神者と憑代 by愛の伝道師2世 (6話)

心霊現象に興味を持った私は自身の家系について母に尋ねた。祖母が言うには代々の仏教家系で私の曽祖母は般若心境を呼んでいたらしく祖母も般若心境が好きだと言って居た。

そんな祖母と結婚した祖父は、父と同じ神道だったそうだ。私の男子家系は父方も母方も神道だったようだが、祖父は祖母の意向を尊重し仏教で墓を作って居る。この事実を考えると、やはり女の尻に敷かれる定めの家系なのだろうか?と感じた。かく言う私も、本当の意味で男ぽい人を好きになる傾向が強いと自覚して居た。

堂々として強そうで、いつも周囲を引っ張って居るけど心はガラスのように繊細な、まるで男のような女性を見てると思わず力になりたくなる節があった。

自分の事を弱々しく控えめに見せておいて、実はどこまでも肝の据わった女性らしい強さが自分には有ったからだ。そう考えれば、強くもか弱い男ぽい女性に惹かれるのは必然なのかもしれない。





我が一族には長女が代々受け継ぐ化粧鏡が有り、その鏡を覆う布に家紋が有った事を思い出した。その家紋について母に尋ねた。名前は三つ割り棕櫚と言うらしい。その家紋に付いて調べると、棕櫚は古来より心霊の憑代として宗教的意味合いが強く天狗が持ってる棕櫚団扇をモチーフにした家紋だった。

死後に天狗の姿で現れた父は神道の家系。一方で母の家系の家紋は憑依を意味する降霊術を示したかのような家紋。しかも母方の父親、私の祖父は神道だった。まるで代々憑代となる憑依体質を持つ女性家系と、それを祓える神道の男系家系が結婚してるように感じて、この偶然の一致には特別な意味があるように感じた。

母に私の推測を指摘すると母は驚き、因縁のようなものが有るのかもしれないと納得して居たが「自分には霊能力なんか無いし、そんなものを高めようとは思わない」と、まるで認めたく無いように答えた。

しかし、私の母親はかなり感が鋭く、一種の予知夢のようなものをよく見て、その危険を知らせる電話を掛けてくる事があった。過去に私の妹がピアスを開けようとして居た時に、予知夢を見た母が妹にピアスを空けるなと電話をして、妹が飛び上がる程驚いた事件は、我が家の語り種になって居た。


この一族を巡る偶然の一致を考えると、私が審神者として能力を高める為に、憑依体質の根暗で他人や物事に影響されやすい女性を好きになる傾向がある事すら、神により決められていたかのように感じた。

もしも、この仮説が正しいなら私が愛した彼女は憑代として重大な役割を持って居る人物で、その彼女を守るため。或いは憑代力が高い者と、審神者力が高い者同士で切磋琢磨して共に成長する為に、私の前に遣わされた気がしてならなかった。

彼女が私へ念を飛ばす時に、何者かを憑依させて居るなら、彼女に何の記憶も残って無い事も腑に落ちた。


盲目に彼女を愛して、その思いを貫こうと言えるような間柄じゃ無い。運命の相手だと押し付けようとは思わないけど、人には好きなりやすいタイプのようなモノが産まれた時から決まって居て、その人と巡り会った時に能力が開花して行く。

実際に私も彼女を手に入れたいが為に、霊能力を養い、大災害を祓う使命を果たすべく行動を起こして居る。

彼女を好きになる事で運命が動き出した事を考えると、全てが強大な見えない力で何もかもが導かれたようにしか思えなかった。

この出来事を境に、私は本格的に審神者を目指し、魑魅魍魎と戦う術を学んで行ったのだった。

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