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神との対峙 アンリマユ誕生秘話3

眼を覚ますと、宇宙の中で浮遊している自分に気づいた。目の前には、強大な眼があった。それこそ蚊ほどの大きさの私と比べると計り知れないほどの巨体で、観音像のような姿をしていた。

その肌は生きたダイオウイカを思わせるシルバー色で輝き、水銀のような金属質を帯びていた。私が想像していた神聖な存在よりも、むしろエイリアンのような印象を受けた。


人間は脳から発せられる電気エネルギーが信号として神経を伝達して指や脚などの全身を動かす。

そのような観点から考えれば、思念や妄念のような一種の思想のようなものが死後に電気エネルギーとして残り、大気が無い宇宙に放電する事なく一箇所に溜まった巨大なエネルギーの集合体のようなモノが神と表される存在なのでは無いかと考えた事がった。

私は霊体や前世と言った非科学的な事はあまり信じておらず、科学的観点からもしも霊や魂と呼ばれるものが存在すると条件付けて、課程して考え出した仮説だ。


しかし、目の前に居る巨大な生物は、エネルギーの集合体と言うよりは生物に近い印象を受けた。

タコやイカのような軟体動物の進化系のような印象だ。


私は目を閉じて寝たふりをするように宙に浮いたまま、この目の前の生物に認識されないように微動だにせず宙に浮く無機物のゴミのように硬直した。

圧倒的な力の差を感じ、逃げようとすると即座にやられると感じた私は、目を閉じて寝たふりをしながら、宙に浮かぶ無機物のように動かずにいた。これが美輪明宏の御本尊、彼らの本陣なのかと思いながら、恐怖で震えていた。

見逃される事を願いながら、身体からきょくりょく熱や念が発生しないように無我になる事に努めた。





どうにか現世に戻って来れた私は自宅の布団の中で眼を覚ました。自分が西遊記の孫悟空のように、全ては神の手の平の上で遊ばれてるだけのように感じた。

私は「舐めやがって!今に見てろ!」と強い闘志を燃やし、如何に仏教が腐って居るか粗を探す研究を始めた。

そうして、論理的に仏教を蔑め信者達を妄念から解放して救ってやろうと思ったのだ。


徳を積まなければ地獄に落ちると説いて、恐ろしい絵や彫刻で人々の心を恐怖で支配して、国家や自分達の宗教団体に都合良くマインドコントロールしてる実態を全部洗い出した。

しかし、それらは大元の神格化されてるキリスト本人や釈迦本人が言ってる記述は何処にも無かった。

偉そうに「手を合わせろ」「頭を下げて祈れ」と強要してるのは、後の宗教団体の信者が言ってるだけで、本人達が求めた訳でも望んでた訳でも無い事が分かった。


それらの事から、神と祀られてる本人達は大した人格者だと尊敬に近い感情が芽生えた。

宗教法人の会社として利益が出るように運営してるそれぞれの企業に、神様を利用して金稼ぐな!と文句付け破壊して廻るのも因縁付け、喧嘩吹っ掛けてるのが丸出しで違うと感じた。


その結果、私の中の革命的な衝動をぶつけるべき対象が消失してしまった。何かに反抗したいという衝動はあるものの、悪人として捕まり処刑されたくはないし、出来る事なら人々から賞賛され、愛されたいとも思っていた。

「どこかに悪い奴はいないのかなぁ?」と思いながら、破壊する対象を探しても見つからず、奇怪な夢の事などすっかり忘れて毎日を悶々と過ごしていた。





私の雰囲気に引き寄せられるのか、グレタ連中やヤクザとの小さな衝突は数えきれないほどだった。しかし、私を屈服させるために命を懸けて挑んでくる者は、1人もいなかった。

私は、決して頭を下げず、死ぬまで降伏しない。何人がかりで襲い掛かろうと、どれほど大きな組織であろうと、生きている限り戦うと誓っていた。


私の持つ熱い意志よりも強く、自らの強さを証明するため、あるいはどうしても私を配下に置きたいという理由で、命を賭けて私に挑んでくる者はいなかった。

ガソリンのように自分の命を燃やしたいと渇望しつつも、それが出来る場所が無かった。

強い破壊衝動だけが、ギラギラと胸の奥に燻って居た。

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