杏珠_イラスト

年を経る美 text by あんじー no.1

 突然だが、私はしわくちゃの祖母の手が大好きだ。あのふかふかと柔らかく、少しひんやりとした優しい手。小さい頃からずっと祖母の世話になっていたからだろうか、どうしようもない愛しさとともに、その手に美しさを感じてきた。だから、私はここで老いの美しさあるいは経年の美、そしてこの先積み重ねていく時間について皆さんと考えたい。


「ばあちゃんの手が大好き。」と私が言えば、祖母は必ずこう言う。
「あんたの手の方がしわもないし、張りのあるいい手してるじゃないの。」
確かにそれはその通りで、私の手に比べると祖母の手はたくさんしわがあるし、節くれ立っていてところどころ指先は曲がっている。だけれども不思議とその手はとても魅力的だ。
 

 祖母は嫁入りした時から家業だった農業を手伝っていて、それだけでなく祖父の仕事だった自動車整備業も手伝った。バタバタと仕事をしている合間にヤンチャな息子ふたりも育て上げた。ついでに孫の私を育て上げたのも祖母である。そして、60代半ばに差し掛かる祖母は今もなお毎日精力的に活動している。そんな祖母の生活を支えてきたのがあの手である。つまりあの手は生涯の全てを知っているのだ。

 小さい頃に刺さって抜けなくなったえんぴつの芯の黒っぽい傷あと。
日々の仕事の中であっちこっちを向くようになった指先。
手のひらや甲のいたるところに深く刻まれたしわ。

 それら祖母の経験してきたものを手は雄弁に語る。そこには祖母の歴史が宿っている。だからこそ私は祖母の手が好きで、美しいと感じるのだろう。

(no.2に続く… ※no.3まであります)

☆あんじー☆ 見出しイラストの大学一回生。京都府在住。今ホットなのは韓国風巻き寿司と『数学する身体』という本。彼女とたこ焼きパーティーをする際は、「たこぱ☆」ではなく「たこ焼きを用いた親睦会」と呼ぶことが義務化。





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