新規就農は「蜂の巣経営」だ
就農3年目の課題
“一人でやるには限度がある。人を雇うには金がない”
これが就農3年目にしてぶち当たった課題だ。1年目、2年目である程度の生産技術は確立され販売先もなんとなく増えてきていざ本格的に規模を拡大し始めようとしたタイミングである。
商売の多くは先行投資が基本だが特に野菜栽培、中でもネギは運転資金の回収ですら10か月近くはかかる。その中で規模拡大を実行するためにはかなりの無収入期間が発生してしまう。だが、規模を拡大する上でどうしても人は必要だ。しかし人を雇うだけのお金はどこからも捻出できない。
そんな状況が吹けば消えてしまうような小規模新規農家には付きまとう。
スズメバチの蜂の巣運営
ある秋の日、ぼーっとしている私の目の前に引くぐらい大きなスズメバチが横切った。
おそらく生まれ育った新女王バチが新天地を目指して旅だったのだろう。そしてその女王は冬を超え、来年の春から一匹で巣を作り、仲間を増やし、そして次の冬までには次の女王を生み出して生涯に幕を下ろす。そんなスズメバチの一生に思いをはせながら私はこの”スズメバチの蜂の巣運営”と”新規就農者の農場経営”を照らし合わせていた。
春から夏にかけて一人で巣を作り、人手が必要な産卵期に働きバチを増やし、新女王を育て上げたら寿命を迎え解散する。このシステムは新規就農の第2歩目としてとてもうまく機能するのではないかと感じている。
営農のほうは1年で寿命を迎えてしまっては困るがそれはさておき、栽培管理は一人で行い人手の必要な収穫シーズンから一気に人を雇い収穫が終われば解散をする。
この流れを組むことができれば収入に応じて雇用することが可能になる。
当たり前のことを言っていると感じる人も多いと思うが、そのとおりである。
至極当たり前のことなのだ。
人を雇うと考えると1年を通して人を雇わないと農閑期で人が逃げてしまうとばかり考えて無理に通年で雇用し続ける計画を立ててしまう。特に農業以外の普通を知っていればいるほど1年を通して雇わなければいけないと思う傾向にあると思う。
しかしよく考えれば昔から農業は臨時で人を投入する産業だったはずである。田植えと収穫には親戚一同呼び寄せて一気に終わらせる。この農業の当たり前をすっかり忘れていた。
自立のための「蜂の巣経営」
経営体の役割の一つとして”雇用の創出”というものがある。いずれはその役割を果たす必要はあるのだが、我々新規就農者はそもそも雇用の創出うんぬんの前に自身が経営体として自立しなければいけない。
そのためにも、通年雇用という常識にとらわれすぎず目指す形を見据え状況に応じて雇用の形も柔軟に考えていく必要があるなと感じたことを今回は反省の意味も含めてここに書き記しておく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?