【サセックス大学】【開発学】留学1ヶ月目の学びの振り返り🇬🇧


1月中旬に日本からイギリスに渡英し早くも1か月が経ちました。
大学での学びの振り返りをしようと思います。

私が受講している授業は3つです。
少ないと思われるかもしれませんが、留学生は60単位までと単位の上限が決められており、1授業あたり15、30単位のものがほとんどなので多くの留学生が3-4授業を受けることになります。

ここから受講している授業ごとに軽い説明と振り返りをしていきたいと思います。サセックス大学のHPから授業の検索をすることができるので、気になる方がいればそちらを参照いただけたらと思います。

受講している授業ごとの振り返り

Development and the State

1時間のレクチャーと1時間のセミナーで構成されています。
レクチャーは講義形式の授業で教授から生徒に一方向的に話す形式、セミナーは受講生を10-20人ほどのグループに分けて行われる少人数でのディスカッション形式の授業です。

「開発における国家の役割」がこの授業のテーマであり、複数の概念を理論的に学んだ上でより実践的な事柄を検討していきます。私はもともとアンダーソンの想像の共同体を読み、国家という存在がどういうものなのか興味を感じていたので受講することにしました。3つの中で最も期待していた授業です。

1か月で学んだことは、開発をどう捉えるかによって国家に期待する役割も異なってくるということです。リベラリズムは市場の役割を最重要視し、国家にその市場の円滑な取引を維持し、私有財産権を保障するだけの存在として捉えています。しかし、マルクスは階級という観点から資本主義が搾取の形態であると批判し、国家による市場の統制や財産権を肯定しています。
新自由主義的な政策は結果的に富の格差を拡大したわけですが、当初はトリックルダウンが生じることで貧困は撲滅すると信じられていました。授業前に読む論文で「間違った善意ほど厄介なものはない」とあり、その言葉の重みを感じるとともに、イデオロギーの力はそれほどまでに強力だということを改めて実感しました。

問い

  • 国家と市場の関係はどのようにあるべきなのか?

  • 望ましい「開発」とは何か?これは全世界で共有可能なのか?

Environmental Perspectives on Development

この授業も1時間のレクチャーと1時間のセミナーで構成されています。

環境×開発というテーマで受講したいと思っていました。現代社会における資本主義の限界の最たる例が環境破壊だと考えていたからです。しかし、日本で学んでいたのは主に経済学で、資本主義や自由市場の成立がテーマだったので環境系はほとんど初めて触れる分野でした。授業前はついていけるか不安だったので、couseraで似ているコース(無料)を取り勉強してから行きました。結果的に内容が重なる部分もあり、慣れておくには良かったと感じています。

タイトル通り環境×開発についての授業で、開発において環境をどのように捉えてきたのかや開発が環境にもたらした影響について検討します。

最も面白かったのは人口増加についての授業で、新マルサス主義の批判についての論文を読んだことが一番印象に残っています。食糧危機という言葉が近年聞かれますが、産業革命以降世界の人口はこれまでにないほど急速に拡大しています。その人口拡大に耐えうる食糧を生産することができなければ貧困に直面することになるため、食糧供給の増加と安定は重要課題になります。しかし、それには環境への負荷がかかるのは避けられず、その負荷の多くはグローバルサウスと呼ばれる国々が担うことになります。そのような不平等・不正義に対して、人口拡大にのみ原因を求めることで人口統制を主張するのが新マルサス主義です。実際にはテクノロジーや農業の進展で土地あたり・農業従事者1人あたりの生産量が拡大などが食糧生産量の変数になりますが、それが考慮されていないため人口統制を正当化する根拠にはならないというのが論文の内容でした。非常に興味深く感じました。

そのほかにも、European perspectives of nature, conservation and colonialism、Colonial policies around agriculture and soil conservationなど環境をどのように捉えてきたのか、それに基づいてどのような植民地的開発が行われてきたのかということについて学びました。

問い

  • 自然の商品化はどのように進んだのか?

  • 植民地主義的な環境開発が現代にどのような影響を残しているのか?

  • 現代社会において市場と環境を切り離すことはできない、それでは今後人間は環境とどのような関係を築いていけばいいのか?

Political Ecology and Environmental Justice

この授業は唯一30単位換算で、週に3時間のワークショップが行われる授業です。

内容は、1個上のものと同じく環境×開発をテーマにしているのですが、以下のような点が特徴的で私は1番好きな授業です。

  • 理論的な理解に加え、現代の話題(グリーンニューディール、カーボンクレジットなど)についても扱う

  • ポッドキャストとブログの作成が課題

  • 最終学年向けの授業で意識が高い学生が集まっているので刺激を受ける

本来2つの授業(=4h)で30単位なのを1つの授業(=3h)で30単位とれるからお得じゃん^^と思っていましたが、想像以上にしんどかったです。
というのも、この授業は「環境問題をどのようなストーリーで表現するか」というところに重きを置いているため、理論を3回の授業にギュッと詰め込んでいるからです。初めの3週間はリーディングの重たさとセミナー準備のしんどさがかなり負担でした😢
今後はポッドキャストの作成課題が始まるので楽しみです!

一番興味深かったのはエコフェミニズムという概念です。
エコフェミニズムとは、人間が自然を支配する構造に男性が女性を支配する構造を重ねて理解する思想です。この概念自体の歴史は古いのですが、私にとっては非常に新鮮で興味深いアイデアでした。
環境問題に限らず、ある主体が別の主体を支配する時にはそれを正当化するような言説が生まれるという共通性を持っているのかなと感じました。

またさらに面白いのは、ただ理論を理解するだけでなく、「伝える」方法を自分たちで考える点です。学んだことは社会に生かさなければ意味がない!と思っている私にとってはとても刺激的です!🌟
どのようなストーリーで聴衆の心を掴むのか、どのような表現方法が効果的なのかという点についてグループでディスカッションしながら一つの作品を作り上げます。これぞ思い描いていた「留学」という感じでワクワクします

ただ、1つ残念だったのは、グループを組むときにアジア系で固まってしまったことです。初回授業で話しかけてくれた中国の女の子が一緒に組みたいと言ってくれたので同じテーマを選んだのですが、せっかくならいろんなバックグラウンドを持ったメンバーでそれぞれの観点を持ち寄って協働したいと思っていました。結果的にそうなっただけでアジア人だから、といって避けられていたわけではない(と信じている)のですが、その点は少し後悔。
ただ、いずれにせよ日本人は0の中でいかに自分のバリューを出していくかが求められると思うので頑張りたいなと思っています!

問い

  • 環境と政治的な事柄のつながりについて、いかに自然や土地の支配を正当化してきたか?

  • そこにはどのような思想的背景があったのか?エコフェミニズムとの繋がりは?

  • 環境問題に対してラジカルなアクションを起こすためにはどのようなストーリー・ナラティブが必要なのか?

まとめ

この1ヶ月間は大変だったけれど、本当に刺激的な毎日でした!
新たな視点を獲得し、多様なバックグラウンドを持つ人と意見を交換し、視野を広げることができたと感じています。
ただ、授業への貢献という観点からはまだまだな点が多く、英語コンプレックスも克服しきれてないので、後悔なく留学生活が終われるように残りの授業も引き続き頑張っていきたいなと思います!







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