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よるあるく(梟の帰還)

夜歩くようになってから気がついたことがある。
梟が帰ってきている。
我が家の裏山は持ち主が「わたしの目の黒いうちは」と言う発言の1年後には売られていた。
木を電動機で切っていく音が聞こえて来た時は遂にと思ったものだ。「ああ山なくなるんだ」息子が1番ガッカリしていた。生まれた時からある山、喪失感は彼らの方があるのかもしれない。
人様の持ち山。いくら願ったとて売る売らないは当方の預かり知らぬところだ。

裏山は梟が巣を作っていた。
代々住んでいるのだろう。
都会の人には信じられないだろうが深夜梟が鳴くのだ。番でいることが多い。呼応するように鳴き合うのだ。

深夜月明かりにふと目を覚ますと梟が鳴いている。
受験で音楽を鳴らしながら勉強をして、息抜きに音を止めて窓を開けると白い息がひんやりとした空気に流れる。
梟が鳴いている。
何故だかほっとしたものだ。

梟たちや蝙蝠、動物たちは居場所をかえるのか。

山の頂きに〜ヒルズという名の老人ホームが建ち、すっかり道もよくなり見通しもよくなった。
朝日がさしてキッチン窓には遮光カーテンが必要になり風が直接吹き付け防風林とはよく言ったもので恩恵はなくなってから気がつくものだ。
そして月日が過ぎ息子は巣立ち、娘は家を旅立ち私の日課はウォーキングからランニングになった。

山の頂きにある我が家は近所を回って一周すると元の道に戻る。一周約280メートル。
キリがいいので10周走る。
信号もないので走ることだけでいい。
没頭したい時は黙々と走り、月明かりの綺麗な夜は走っているうちに傾く月を同じ場所から撮って楽しんでいた。
ある月の明るいよる。
梟が鳴いている…
坂を登りきって見上げた先ホームの避雷針に影が。
「戻ってきたんだ」
戻ってきた訳ではないだろうがそう思ったのだ。
懐かしくなって足を止めてしぱらく鳴いているのを静かに聞いていた。
ふと気づいた。もう1羽いる。
隣りの家の屋根だ。
呼応するように鳴き合う。
ランデブー。
しばらく鳴いていたが仲良く連れだって飛び立った。
一部始終見終えてすっかり身体は冷えてしまったけれどなんだか嬉しくこころはじんわりとあたたかい。
再びゆっくりと走り出した。

それからたまに梟は避雷針に止まって鳴いている。
おかえり。
私は影を確認して走る。

裏山は誰かの終の住処となり、子どもたちは巣立ち帰ってくることは少なくなったけれどそれでいい。

今度は春先にやってくる狸のはなしでもしようか。



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#夜 #月


ちょっと寂しいみんなに😢