古(いにしえ)の遺跡と部活のルーティン

走る人となってから走ってみようと思っていたルートがある。
中学の公式マラソンコース。
田圃の中にポツンとある黒いこんもりとした山。学校からこの山を回って田圃用の農道を通って学校へ戻るとちょうど3キロ。
体育系の部活は例外なくこのコース。放課後ともなれば色んなユニホームの生徒たちがぐるぐる回っていた。
体操部だった私たちも毎日ではないが月イチくらいで走っていた。
当然みんなダラダラしてた。
山の裏側に回ると学校からは死角なのであからさまに歩き出す（笑）真面目なのは野球部とかサッカー部とか。
この小さな山は丸くこんもりして明らかに浮いていた。ここ周辺は国分寺もあったような古い地域だからあまり風景は昔から変わっていない。
「この山さ～絶対古墳だよね〜」
「それっぽいよね～」
同意してくれる同級生達だったけど正直そんなこと真剣に考えてるのは私ぐらいだった。
何度見ても古墳に見える。
前方後円墳より前だな、円墳とか…
なんてことを考えながら走りたくない気持ちを紛らわせていた。
後年開発が進み高速が通り山の半分は崩され病院が建設されることとなった。
出るぞ出るぞ、と思っていたらやっぱり事前調査で遺跡が発掘された。
当然建設はストップした。
掘ったら何かが出るのは日常茶飯事なお国柄（笑）
「昔は青いバケツみたいなもんが出たらブルドーザーでならしちまえってやったもんだ」などという真偽不明な知人の建設業者のおじさんの話が浮かぶ。この時私はちょっと憤慨した。
「マジか青いバケツってどう考えても銅鐸やん…」
銅鐸がまとめて出てきた加茂岩倉史蹟の例もある。やめてくれ〜
まア、マッチョな時代の大言壮語でしょう。と思いたい。普通のバケツであってくれ。
遺跡が出てしまえば調査するしかない。
結構すったもんだの挙句遺すことに決まった。地元の有志が尽力したこともあって潰されることなく少しずらしたところに病院を建てることになり、立派な遺跡公園も建てられた。
謎の多い遺跡らしい。祭祀目的では？とか硯も出土。つい最近は最古の文字か？という報道。
案外重要な謎の多い遺跡だった。
古墳ではなかったが形やポツンとそこだけ異質なのは当たっていたわけだ。
ここを久しぶりに走ってみたい。
そう考えていた。
昔はサボってばかりだったけど今なら走れるかな。

マムシ（笑）↑

ところが案外距離もなくすぐ走れてしまった。
開発で昔よりショートカットされてしまって拍子抜けした。
それで気がついた。
頭の中ではあの道が失われていたのは充分過ぎる程分かっていたのに実際走ってみるまで何となく昔と同じ道を想像していたのだ。
走りたかったのは中学生のときダラダラ歩いた、まだ舗装もされていない砂利道。
山と草しかない太古の昔と変わらない景色の道。
そう気がついてしまうとコースに興味がなくなってしまった。
ちょっとした喪失感のまま、公園の史蹟跡に登ってみることにした。祭祀跡や高床式住居跡、環濠。結構な遺跡。
出てくるべき遺跡は何としてでも発見されるようになっているのかも知れない。
頂上に登って周囲を見回す。太古にはかなり高い場所で見晴らしもよく祭祀には神々しい場所だっただろう。
ひょっとしたらこの史跡は誰も知らないままだった日本最古の文字は人知れず埋もれたままだった、かも。

上書きされることで失われたものと掘り出されることで詳らかになるものが同居したこの場所。
いにしえと数十年の時間を交互に思い浮かべながら史蹟を後にした。

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