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『ヘンリー五世』でシェイクスピア初体験した話

 彩の国さいたま芸術劇場にて『ヘンリー五世』を観た(2/23マチネ)。私にとって初めての劇場、そして初めてのシェイクスピアだった。

※『チャイメリカ』は頑張って真面目に考察したけれど、今回は感想を書き並べています。

 正直なところ、シェイクスピアというとストーリーはお堅い感じで登場人物の名前が難しくて、大げさで長い台詞回しのアレでしょう?というイメージで、最近少しずつ演劇を観るようになった私はあまり面白く観劇できる自信がなかった。それでもこのさい芸のシェイクスピアシリーズはその存在を知ってからいつかは観てみたいと思っていたし、吉田鋼太郎演出、松坂桃李主演ということで、完全なミーハー心でチケットを取ったのだ。

 結果として大正解だった。はっきり言って登場人物の名前は覚えきれないし、ストーリーは細部までは理解できていないと思う。台詞もやっぱり長いし難しい。歴史にも疎いので(世界史は苦手科目)、この時代に周りの国で何が起こっていたとか、そういう示唆や比喩みたいなものもわかっていない。それでもこの舞台を観ながらとてもワクワクしたのだ。思わずクスッと笑ってしまうような、あるいは心臓をぐっと掴まれるような台詞や場面の数々、美しい照明や衣装、役者たちの演技の熱量、劇場丸ごとの一体感。こんな感覚を味わったのは初めてのことで、私は終始ワクワクしていた。おそらく、演出の力である。文化も歴史も距離も遠く離れた日本人だからこそ、わかりやすく伝わるように作られているのが感じられた。(観劇初心者なのでシェイクスピア無理!とならなくて本当によかったと思う。)

 松坂桃李は気品溢れるもどこか人間臭い若きイングランド王を気持ちよく演じていた。吉田鋼太郎は舞台上にいる時間は短いにも関わらず、劇場全体の空気を掌握していた(姫君、で目を合わせられた人、死ななかっただろうか)。フルエリンはネギだし(……ネギ?!)、フランス王は威厳がびっしばしと伝わってきた。イングランドとフランスの戦争物語、というだけでは終わらず、3時間の舞台の中できちんと登場人物一人ひとりの物語が描かれており、役者たちがその一人ひとりを生きている。例えばヘンリーが「王も一人の人間なのだ」と吐露する場面。観ているこちらが苦しくなるようだった。歴史上の人物でも空想の世界の人物でも、彼らの生きる時間を追体験できるのが演劇の醍醐味だろう。

 何だかまとまらないし、シェイクスピアを語るには勉強が足りないのでこの辺で。「シェイクスピア、怖くないよ」というのが今回の収穫。それから、迫力ある立ち回りでのかっこいい松坂桃李も、結婚してくれと懇願するも拒絶されてじたばたするかわいい松坂桃李も、しっかり満喫できたことを言い添えておこう。

 私は今回2階席の最後列から劇場全体を俯瞰するように観ていた。客席まで使う演出とは聞いていたが、本当に役者たちがすごいスピードで通路を疾走するのに驚いた。上から覗きこむのも面白かったが、次回はぜひ1階席で自分が芝居の一部になる気分を味わいたいと思う。

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