よいSaaSをつくるための力について考える
こんにちは!マネーフォワード クラウド給与という、給与計算をするためのプロダクトを作っているデザイナーのmaisです。
クラウド給与の開発を3年ほど、そのほか業務用ゲーム機器の開発(ゲームセンターにおいてあるアーケードゲーム)や医療系アプリケーションのデザイン等を担当してきました。
toB と toC の違い
今までtoBやtoCのプロダクトを作ってきた経験をふり返ると、toB SaaSは以下のような特徴があります。
利用者と導入意思決定者が異なることがある
業務で使われるため個人向けプロダクトよりも利用に対する積極/強制/継続性が強いことが多い
それゆえユーザー/開発者で「良い(効率的な)プロダクト」を作ることへの利益や目的が合致しやすく、お客様と同じ方を向き協力して開発できることがプロダクトを作る中での面白さだと感じます。
またデザインにあたってその業務領域の専門知識が必要だったり、ステークホルダーが多かったり、より効率的な業務フローの理想像を追い求めながらも現状業務を完遂する必要があったり、考慮すべき変数が多いのもやりがいがあって面白いポイントです。
toB SaaSをつくるのに必要な力とは
さて、そんなtoB SaaSづくりでは具体的にどんな力が必要なのでしょうか?スキル・経験の掛け合わせを考えてみました。
SaaSデザイナー同士で話したりすると特に「どうやって対象領域(ドメイン)知識をキャッチアップしてる?」という話題がよく出てきます。どんなプロダクト開発にも専門知識は存在し、それらを知らないとデザインはできません。というわけで、toB SaaSプロダクトのデザイン力向上に必要な力をどうやって学び高めていくか、今日はドメイン知識向上のために私が実践してオススメだったことを中心にご紹介してみようと思います。
ドメイン知識を深めるためにできること
1. メディアや本などから学ぶ
例えば給与計算を例にすると以下のような方法が考えられます。
Youtube動画(社労士さんの解説)
本
労務業務を行う人のつぶやき、おすすめプロダクト紹介など
資格の勉強(FPや社労士などその業務領域に関する資格)
ネット検索でも様々な情報がヒットしますが、社労士さんの「給与計算の基礎」のようなYoutube動画は最初の入門としてオススメです。法律が関係してくる業務は国家資格があることが多いので、士業の方など信頼できそうな複数の発信を参考にすると良いでしょう。
少し概要を掴んだら本で学ぶのがおすすめです。労務手続きは大小さまざまな会社で行われるため実務担当者むけの本が充実しています。私は同じ会社の労務担当の方に「労務の新入社員が読む本」を紹介してもらいました。(専門家がお勧めしてくれると心強いですね!)
また個人的にはFP2,3級の資格勉強もおすすめです。税金に関する科目が含まれるので、源泉徴収票の見方などもわかるようになります。FPはお金にまつわる基礎知識を広く浅く学べるため、働いたり家計管理をするすべての人におすすめです。
2. 実際のプロダクトを触って学ぶ
プロダクトがローンチ済みであれば、実際に触ってみるのが早いです。サポートサイトも有用です。自社で導入支援を実施していれば、お客様に案内している資料から学ぶことも有用です。
はじめて触る場合は新鮮な気持ちでの疑問などが役にたつこともあるので、ヒューリスティック評価をしながら実施するのがおすすめです。
先行する他社サービスを参考にしたいこともありますが、業務用プロダクトは利用や再現が難しい場合も多いです。サポートサイトや解説動画などがあればそれらを参考にしたり、利用経験者に話を聞くのも良いでしょう。
3. 詳しい人に聞く
領域によっては出版物がなかったり、業務フローなどインタビューや観察等でしか得られない知識もあります。社内や同僚に詳しい人がいればその人を頼りに色々教えてもらうのが早いです。
ただしその人たちも日々業務を行なっているため、リスペクトと配慮が必要です。知識が0からの場合は、初学者向けの勉強法や参考書を聞くのがおすすめです。まずは質問できるくらいまで基礎知識を身につけましょう。
詳しい人がいない場合
もし周囲に知り合いがいなければ、思い切って対象の方がいそうなコミュニティやイベントに参加してみたり、友人のつてを頼ったり、スポットコンサルやスキルシェアのサービスなどを通してマッチングすることもできます。
人と接するにあたっては信頼関係を築くことが最も大切です。「よくしたい」と思う熱意と感謝の気持ち、最大限のリスペクトを持って体当たりすれば、どこかに応えてくれる方がいると私は信じています。
4. 業務内容だけでなく背景への理解も深める
業務をとりまく環境や携わる人の性格・こだわりなど、様々な角度から業務環境への理解を深められると良いかと思います。人の活動にはたいてい理由があるため、背景を理解しないと見当違いの提案になってしまう可能性が増します。ここでは複数のポジションの方から話を聞くのがおすすめです。
当事者(実際の実務担当者)
事業責任者(実際に実務は行わないものの導入を決定する部長や社長など)
お客様に接する人(営業やサクセス、CS担当者など)
デザイナーはなにを目指す?
最終的には自分がドメインエキスパートになれたらそれが一番です。何をきかれても「私(ユーザー)はこうしたいんだ、なぜならこういう理由から」と自信をもって答えられ、聞いた人も納得できる状態が理想です。 とはいえその領域を一生かけて探求し続ける人がいるくらいですから、そう簡単に達成することはできません。
私はデザイナーが目指すべきは俳優のようなポジションなのではと考えています。対象者を理解するために実際に体験してみしたり、関係者から話をきいたりして、知識と経験が結びついた状態を作り出すことが役作りですが、デザイナーもそれに似た活動といえるかもしれません。
× α
今回はよいSaaSをつくるための力について、主にドメイン知識をどう向上させるか中心にまとめてみました。ですが実は冒頭で掲示した能力発揮の掛け算は、もう一つ項目が隠れているのではと思います
α(生産性や夢を描く力)です。
いや多いな!って感じですが、最後のαはちょっぴり個人差も大きいと思っています。生産性は職種に限らず小さなものから大きなことまで日々努めていくとして「夢を描く力」「ビジョン構想力」は主観的な力であり、人間のクリエイティビティの源です。
私は日々の殆どを地道なタスクに費やしていますが、その一歩一歩が誰かの幸せにつながると信じています。夢というと大げさですが、私にとってそれは「誰かが幸せな時間をすごせる」「やりたいことに集中できる」ような空間だったりします、ちょっと抽象的ですね。
ただそれに貢献していると実感できる時、私はわりと幸せです。それがプロダクトとなって誰かをまた幸せにできたら素敵だと思っています。
そんなスパイラルに思いを馳せながら2023年のアドベントカレンダー記事を書いてみました。それではみなさん、よいお年を!
明日はサカガミショウゴさんです。お楽しみに!
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