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【医療用麻薬だけじゃない】スインプロイクは弱オピオイドの頑固な便秘にも良く効きます!【医】#43

こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

緩和ケアは患者さん・ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。

今日のテーマは「スインプロイク錠®の効果的な使い方」です。

動画はこちらになります。

便秘で悩んでいる患者さんは大変多いです。しかも、トラマールやトラムセットなどの薬を使うと、患者さんは更に強い便秘に悩まされることになります。

このようなひどい便秘には、酸化マグネシウムだけではほとんど効果はなく、それ以外の下剤・緩下剤などを併用する必要があり、調節も必要になります。特に高齢の患者さんには管理が難しく、ご家族や看護師は頭を悩ませています。

実は、このような便秘にはスインプロイク®がとても効果的です。今日は、そのような場合、なぜスインプロイク®が効くのか、その使い方についてもお話します。

この記事は、トラマール・トラムセットをよく処方する方、医療用麻薬を処方している方、がん患者さんをよく診る方、便秘薬について詳しく知りたい方にぜひ観ていただきたい記事です。

これを知っておけば、必ずあなたの患者さんの役に立ちますので、ぜひ最後までご覧ください。今日もよろしくお願いします。


スインプロイクは弱オピオイドの便秘にも効く

スインプロイク®は、医療用麻薬の副作用で起こる便秘を改善する薬であると思っている人は多いと思います。しかし実は、スインプロイクは医療用麻薬の便秘だけに効果があるのではありません。

トラマール®などの弱オピオイドの便秘にも効果があるのです。なぜなら、スインプロイク®は、オピオイドが起こす便秘を防ぐ薬だからです。

そもそもオピオイドとは、オピオイド受容体に結合し、薬理作用を起こす薬物の総称です。オピオイド受容体は、身体の様々な部位に存在しますが、とりわけ、脳・脊髄のオピオイド受容体にオピオイドが作用すると、鎮痛効果を現します。しかし腸管にもオピオイド受容体は存在し、腸管のオピオイド受容体にオピオイドが結合すると、腸管の運動を強力に阻害し便秘になるのです。

スインプロイク®は、腸管にあるオピオイド受容体に拮抗し、オピオイドの結合をブロックすることで、便秘になることを防ぎます。しかしスインプロイク®は、ブレインブラッドバリア(BBB)を通過せず、脳・脊髄のオピオイド受容体には作用しませんので、鎮痛効果は変わりません。とても優れた薬だと思います。

オピオイドには、強オピオイドと弱オピオイドがあります。

強オピオイドには、モルヒネ、ヒドロモルフォン®、オキシコドン®、フェンタニル®などがあり、日本では医療用麻薬に分類されています。

弱オピオイドは、トラマール®、トラムセット®、リン酸コデイン®、ペンタジン®などがありますが、日本ではこれらは医療用麻薬には指定されていません。

弱オピオイドもオピオイドですので、弱オピオイドも強オピオイドと同じく便秘の副作用があり、そしてその便秘にはスインプロイク®が効果を示すのです。スインプロイク®は医療用麻薬の便秘だけではなく、トラマールなどの弱オピオイドの便秘にも効果があるということを知ってください。

トラマール®は医療用麻薬ではありませんので、がん性疼痛ではない、慢性疼痛に広く使われています。特に高齢者の痛みにトラマール®を使うケースは増えてきています。

がん患者さんだけでなく、高齢者の多くはもともと便秘に悩んでいて、トラマール®を使うとさらに便秘を加速させます。

便秘は軽く見られがちですが、実はとてもつらいものです。もっと患者さんの便秘の訴えに敏感になってほしいと思います。

トラマール®などの弱オピオイドを使用している患者さんが訴える便秘も、スインプロイク®を積極的に使用することで、患者さんの便秘を軽くすることができます。ぜひこれらのことを知っておいてください。


便秘はつらいよ

高齢になると、食欲低下、水分の摂取不足、さらには身体の動きが少なくなることで、多くの方が便秘になります。

便秘が続くと、おなかが張って苦しくなり、腹痛が生じます。さらに嘔気・嘔吐の原因になったり、さらなる食欲低下の原因になったりします。当然、気分も落ち込み、毎日が楽しくなくなります。

70歳以上の高齢者の3人に1人が便秘で悩んでいるといわれています。また、終末期のがん患者さんの3人に2人が便秘になることもわかっています。便秘はがん患者さんのせん妄の原因になることすらあります。

それほど便秘は苦しく、がん患者さんのQOLを著しく下げます。しかし患者さんの多くは、たかが便秘だと思い医師に相談しません。ですので、がん患者さんや、高齢の患者さんが便秘で苦しんでいることを、医師のあなたにはぜひ知っていただきたいと思います。

そしてあなたの患者さんには、あなたの方から「最近、お通じはどうですか。」などと聞いて、便秘がある場合、しっかりと対応してあげてください。

便秘については、以前の記事でも詳しく説明していますので、参考にしてください。


私はスインプロイクをこうして使う

それでは、スインプロイク®の使い方についてお話します。

まず皆さんにお伝えしたいことは、強オピオイドや弱オピオイドに関わらず、オピオイドを服用している患者さんのほとんどが、強い便秘を起こしているということです。8割以上が強い便秘になると言われています。オピオイドを服用していて自然に便通があるという方は稀です。

オピオイドによる便秘は緩下剤や下剤などの薬が無ければコントロールできません。しかし私の経験上、そのような便秘には酸化マグネシウムだけでは不十分です。

センノシド®やアミティーザ®などの薬を併用し、なおかつその調節も難しいので、オピオイドによる便秘のコントロールには今まで難渋していました。ところが、スインプロイク®が登場してからは、状況が変わってきました。

私の臨床上の印象ですが、スインプロイク®を使うだけで、半数以上の患者さんの便秘が解消されています。スインプロイク®だけでは十分でない人でも、それに酸化マグネシウムを追加するだけで良くなった人も多いです。私はオピオイドを使用するときは、スインプロイク®は必ず処方するようにしています。

このように若いドクターにお話すると、スインプロイク®は「どのように」「どのタイミングで」処方すればよいのか、という質問をよく受けます。

まず「どのように」という質問の答えとしては、私は朝1錠処方します。その理由は、スインプロイク®は、飲んでから5~6時間くらいで効いてくることが多い薬剤で、寝る前に飲むと夜中にトイレに行きたくなってしまうからです。

そして、「どのタイミングで」という質問には、これからオピオイドの徐放性剤を処方するときには、必ずスインプロイク®も一緒に処方するということが答えです。

オピオイドを頓服で出す場合は、患者さんがどれくらいオピオイドを使うかがわからず、便秘になるかどうかわからないため、基本的にはスインプロイク®は処方しません。酸化マグネシウムなどの頓服を、即放剤のオピオイドと一緒に出すことが多いです。

最後にスインプロイク®を使う際の注意点をお話します。

主にスインプロイク®はCYP3A4で代謝されます。そのためイトラコナゾール、フルコナゾール等のCYP3A阻害剤や、リファンピシンなどの誘導剤と併用すると効果が半減します。そのような時にはスインプロイク®は処方せず、他の下剤や緩下剤を使います。

以上、オピオイドの便秘に対する特効薬といえる、スインプロイク®について話してまいりました。ぜひオピオイドを患者さんに処方するときには、便秘対策としてスインプロイク®も一緒に処方してあげてください。


あなたに伝えたいメッセージ

今日のあなたに伝えたいメッセージは

「スインプロイク錠®は医療用麻薬の便秘だけに使う薬ではなく、トラマール®などの弱オピオイドの便秘にも使えます。朝の1錠でつらい便秘から解放されます。このことをぜひ知り、患者さんを便秘から楽にしてあげましょう。」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。

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