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【壮絶な最期?】通常とは違う亡くなり方をする「白血病」のお話をします(在宅,ホスピス)【家】#177

こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

緩和ケアは患者さん、ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。

今日のテーマは「白血病の最期」です。

動画はこちらになります。

がん患者さんが最期に辿る流れについて、いくつか記事を出してきました。

これは基本的には、ほとんどの終末期のがん患者さんに当てはまる流れであり、兆候です。

しかし、同じ流れで亡くならないがんもあります。それは白血病を代表とした、血液の悪性疾患です。

肺がんや乳がんなどの固形がんと異なり、白血病は終末期に特徴があります。それは、急変が起こりやすいということです。

急変が起こると、ご家族は驚き、どう対応していいかわからず、後悔する看取りになるケースもあります。しかし、白血病の最期の特徴をしっかり知っておくことで、大切な人の最期を傍で看取ることは可能です。

今日は、他のがんとは違う白血病の最期についてお話します。

この記事は、白血病について詳しく知りたい方、白血病の患者さんを家族に持つ方、白血病の家族を在宅で看取りたいと考えている方にもぜひ見ていただきたい記事です。ぜひ最後までご覧ください。

今日もよろしくお願いします。


白血病の最期はどうなるか

白血病は、以前は病院でぎりぎりまで積極的な治療をしており、最期まで抗がん剤の治療をするケースが多くありました。したがって白血病の最期は、ホスピスにさえも行かず、病院で亡くなることが多かったのです。

しかも、最期は抗がん剤の副作用で亡くなったのか、白血病で亡くなったのかわからず、どちらにしても、とても苦しんで亡くなるケースが多かったように思います。

ところが、最近では比較的早期からACPが行われ、患者さん・ご家族の意思決定により、最期は抗がん剤治療を止め、ホスピスを選択したり、在宅で最期まで過ごすことを希望する人も増えてきました。そうすることで、白血病であったとしても、ほかの固形がんと同じように最期の時期を苦痛なく過ごし、穏やかに看取ることができるケースも増えてきました。

白血病も基本的には固形がんと同じように、終末期には様々なつらい症状が起こります。よく起こる症状としては、疼痛、呼吸困難、発熱、倦怠感、せん妄などです。これらの症状は、他のがんと同じように症状緩和が可能です。したがってしっかりと症状緩和ができると、終末期も穏やかに過せます。

しかし冒頭でも申しましたが、白血病が固形がんと違う点は、急変が起こりやすいということです。

急変の内容としては、突然の大出血、日和見感染症による高熱、けいれん・意識消失、などです。白血病の場合、これらが急に起こり命を落とすことも多いのです。

白血病の終末期に急変が起こると、多くの場合、病院やホスピスなどの施設で、医師がその場にいたとしても、救命することはほぼ不可能です。鎮静などを行い、症状を和らげながら見守ることしかできません。これは、在宅でご家族しかいない場合に急変が起こったとしても、同じことなのです。

したがって、ご家族は白血病の患者さんを看取る際、急変の内容と対処法を知っておくことがとても大切になります。

ご家族にとって最も重要なことは、覚悟をするということです。

急変が起こった時のことを考えるのは怖いかもしれません。しかし、覚悟をすることで、たとえ急変が起こって亡くなったとしても、後悔しない看取りになります。

白血病の患者さんをそばで看取りたいと思っているあなたには、急変の内容と対処法を知り、その上で急変の覚悟をしてほしいと思っています。


白血病が悪くなるプロセス

白血病が悪くなる時のプロセスを知ることは、少し難しいと感じる方も、怖く感じる方もいるかもしれません。しかし、このプロセスを知ることで、白血病の終末期に起こることを理解しやすくなります。

できるだけわかりやすく説明しますのでついてきてくださいね。

白血球は背骨の中にある骨髄で作られます。白血病は、その白血球を作るプロセスで異常が起こり、白血球のがん細胞である白血病細胞が作られるようになる病気です。

治療の効果が得られている間は、白血病細胞をコントロールすることはできますが、治療の効果が無くなると、際限なく白血病細胞が作られるようになってしまいます。そうなると、白血病細胞が血管の中にあふれるようになります。同時に赤血球、血小板といった細胞も作れなくなり、細胞の数も急激に減ってきます。

するとどうなるでしょうか。

赤血球が減ると、急速に貧血になり、倦怠感や呼吸困難といった症状が起こります。

白血球が減ると、免疫力が低下し、健康な状態では感染しないような弱い病原体に感染します。その結果、肺炎をはじめとする、感染症が起こるようになります。これを日和見感染症といいます。

また、血小板は血を固まらせる働きがある細胞ですので、これが低下すると出血が起こりやすくなり、身体のいたるところに、皮下出血が起こります。これに加え大出血も起こりやすくなるのです。

さらに白血病が悪くなると、白血病細胞は血液の流れとともに、色々な臓器にも広がってきます。骨に広がると、痛みが起こります。脳に広がると、意識障害やけいれん発作などが生じます。肝臓や腎臓で増えると、肝不全や腎不全になるのです。

このように、白血病が悪くなると、身体のいたるところで症状が出てくることになります。その時になって、驚いたり慌てたりしないためにも、まずはこのプロセスを理解してください。


白血病の終末期:急変の内容と対処法

次に、白血病の終末期における急変とはどのようなものなのか、そしてどのように対処したら良いのかについてお話します。

1. 出血・大出血

出血は先ほど述べたように、血小板が少なくなることが原因で、多くの患者さんに起こります。鼻血などは圧迫止血が可能なら行います。しかし、大出血ですと止血は困難です。

多くは内臓からの出血ですので、目に見える出血はありませんが、その際は血圧が低下し、意識も低下します。内臓からの出血の場合、多くは苦しみは表出されず、穏やかな最期を迎えられます。

もし苦しみがあったとしても、鎮静の手段を取れば、穏やかな最期を迎えられます。出血が身体の表面に出てきた場合、つまり吐血・下血の場合は、とても驚くと思いますが、慌てないで対処しましょう。

患者さんは多くの場合、意識がないことが多いので、見た目ほど苦痛を感じてはいません。

吐血の場合は、身体を横にして、紙おむつを当てて血を誤嚥しないような体位を取り、背中を優しくさすりながら見守ってください。下血の場合も、出血を吸収できるように、紙おむつを当て、見守ってあげてくさい。それで穏やかな最期を迎えられるでしょう。

2. 日和見感染

白血病の最期は、白血球の低下により免疫力が落ち、治療困難な感染症が起こります。その際、発熱や呼吸困難などの症状が起こりますが、これは消炎鎮痛薬や、モルヒネなどの医療用麻薬の使用により、症状緩和が可能です。担当医に症状緩和をしてもらいましょう。しっかりと症状緩和ができれば、穏やかな最期は可能です。

3. けいれん発作・意識消失

白血病細胞が脳や脊髄に浸潤した場合、けいれん発作や意識消失が起こることがあります。病院なら医療者が適切な処置をしてくれると思いますが、在宅でご家族だけの時は、驚いたり、戸惑ってしまうかもしれません。したがって在宅の場合、あらかじめ在宅医に対処法を聞いておきましょう。

座薬・点滴などで、けいれん発作を止めることができます。しかし、症状が止められない時は、そのまま亡くなってしまうこともあることも知っておいてください。その際は、傍に付き添って見守ってあげてください。

このようにけいれんをする時は意識がないことが多いので、苦しみはありませんが、鎮静を行って最期を迎えることもあります。

4. 多臓器不全

肝臓や腎臓に白血病細胞が浸潤することで臓器障害が起こり、死に至ります。これは白血病に限らず、多くのがんの終末期にも起きることですが、白血病の患者さんの多くはこの多臓器不全で亡くなります。

今までお話した、激しい急変という形ではありませんが多臓器不全は、ある時急に起こります。症状緩和をしてもらい、最期を共にしてください。

以上、白血病の終末期における具体的な症状とその対処法についてお話しました。白血病でも、このように急変への対処は可能ですので安心してください。


在宅で看取るには

「急変の多い白血病でも、家で最期を迎えることができますか?」という質問をよく受けますが、これは可能です。

症状緩和は在宅でもできますし、急変が起こった場合、病院やホスピスで、何か特別なことができるわけではないからです。ただし、しっかり症状緩和ができる在宅医や訪問看護師がいることが助けになります。

したがって、良い在宅医や訪問看護ステーションを早めに探すことが大事です。

なぜなら、本当に悪くなってから探したのでは、良い在宅医や訪問看護ステーションを見つける時間がなく、発熱・疼痛・呼吸困難・倦怠感という身体症状や、せん妄という精神症状などの症状緩和がしっかりとできない場合が出てくるからです。

別の記事(#176)で良い在宅医をどうやって探したらいいかを解説しましたので参考になさってください。


自宅で看取る場合、最も大事なことは、最期まで家で看取るというご家族の決意が必要です。なぜなら急変が起こった場合、慌てないで冷静な対処が必要だからです。

今までお話してきたことを知り、落ち着いて患者さんの傍で見守ってあげてください。

そして、最期まで家で看取りたいと思っているなら、もう一つ大事な点は、どんな時でもご家族から救急車は呼んではいけないということです。なぜなら、救急車を呼んでしまうと、救急隊員による蘇生処置がなされてしまい、救急病院に運ばれ、場合によってはICUに入れられることがあるからです。これでは、穏やかな最期を迎えたいという望みが、かなえられなくなってしまいます。

急変が起こりどうしていいかわからない場合、救急車を呼ぶのではなく、必ず在宅医や訪問看護師などの在宅チームに電話してください。

何度も言いますが、白血病では急変は起こり得ます。白血病の終末期には急変が起こることは想定内と思い、落ち着いて見守ることがとても大事です。

以上、白血病の最期についてお話してまいりました。白血病患者さんが最期を迎える時に、後悔のない看取りができるご家族が増えれば幸いです。


あなたに伝えたいメッセージ

今日のあなたに伝えたいメッセージは

「白血病の最期は他のがんと比べ、急変が起こることが多いです。ご家族に必要なことは、急変しても慌てないことです。覚悟を持ち、しっかりと準備をし、悔いのない看取りにしましょう。」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。

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