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死にたいといっている家族に対してあなたができることは何か #21

こんにちは、緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

今日のテーマは「死にたい気持ち【ご家族向け】」です。

始めに40歳代の女性からのご相談を紹介いたします。

76歳の父のことで相談があります。
3か月前に進行膵臓がんと診断され、抗がん剤治療を続けてきましたが、2週間前に主治医の先生から「抗がん剤の効果がみられず、がんが進行している」と言われ、違う抗がん剤に変えました。
今度の抗がん剤は、前の抗がん剤に比べ辛そうです。父は、体がしんどくて動く気力もなくなり、ほとんど寝たきりとなってしまいました。
そのころから、母に対して「死にたい」「殺してくれ」と毎日言っているようで、母もほとほと困っています。以前のしっかりした父とは変わったように感じます。
私は離れて暮らしているので、両親のところへも頻繁に行ってあげられません。
どうすればよいのでしょうか。教えてください。

ご相談ありがとうございます。

あなたのお父さんが抗がん剤の副作用でつらくなり、お母さんに「死にたい」「殺してくれ」と繰り返し言うので、お母さんがとても疲れている。あなたもお二人を援助したいが、離れているのでなかなかむずかしい、というご相談ですね。

このご相談に対しての始めにあなたへのアドバイスをお話しします。

まずは、お父さんに対して「お母さんを困らせている」「わがままだ」とは思わないでください。

お父さんが死にたいと口に出して言うぐらいつらい気持ちになっているんだと理解してあげてください。

そして、お父さんがなんで死にたいと思っているか尋ねてください。死にたいくらいつらい、という気持ちを受け取ってください。「自殺」をしてはいけないといった説得ではなく、そのつらさを共感してください。あなたやお母さんは、そのつらさをやわらげてあげたい、ことを伝えてください

あなたからのご相談の内容でしたら、緩和ケアチームのような専門家に相談が必要と思います。是非とも緩和ケアチームに相談してください。

あなたへの注意点が1つあります。

死にたくなる気持ちが強くなれば、実際に自殺を考えたり、実行する可能性が出てくることがあります。しかし、これは本当にお父さんがしたいと思うからではなく、この病気がさせることなのです。

もしそんな状況になれば、必ず家族に話すように約束してもらい、そのあと治療者にお知らせください。うつが治れば、死にたいという気持ちはなくなります

最後にあなたからお父さんにしてもらいたい対応をまとめます。

1. 何故死にたいか、を尋ねる。
2. 死にたいくらいのつらさを受け取る。
3. つらさを共感する。
4. つらさを和らげたいことを伝える。
5. 死にたいという気持ちになったら、家族に相談するよう約束する。
6. 専門家に相談することを提案する。

死にたいと思っている方には、そのつらさを受け取り、共感し、和らげてあげたいことを伝えてください。それはあなたにできることです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。
このnoteでは緩和ケアを皆様の身近なものにして、より良い人生を生きて欲しいと思い、患者さん、ご家族、医療者向けに発信をしています。

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また次回お会いしましょう。

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