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緩和ケアを依頼したのに断られた場合 #10

こんにちは、緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

今日のテーマは「緩和ケアと治療医の関係性の問題」です。

今日の質問は、以前相談いただいたがん治療医の先生からの続きのご質問です。

これからがん治療をする予定のがん患者さんを緩和ケアチームに紹介したら、緩和ケアチームに、一度診察しただけで介入終了と言われてしまいました。緩和ケアは診断した直後からでも受診できると聞いていたので紹介したのですが…。今は特に辛そうにはおられないのですが、患者さんは進行がんで今後状況が厳しくなることが予想されるので、今から診ておいてほしいと思って依頼したのですが…。

ご質問ありがとうございます。

緩和ケアチームに依頼をしてくださったのに、たったの一回で介入終了と言われてしまったのですね。

実はこのような例は少なからずあるんです。

しかし、このことが理由で緩和ケアを残念なものだと判断して、もし、今後の依頼はやめておこうと思ってしまわれたら私は少し残念だなと思います。

この情報だけでは、なぜこのように言われたかの判断は難しいですが、少し視点を変えて、この問題の原因はコミュニケーションかもしれないと考えてみませんか?

まず考えられることは、患者さんが緩和ケアチームに、今はケアは必要はないと言われた可能性があります。もしそのように言われた場合、緩和ケア医も患者さんに対するケアが今は必要ないと思った場合、介入終了の判断もあり得ます。

また、緩和ケアチームが依頼を断ったのではなく、困ったことがあれば再度介入と思っている可能性はないでしょうか?緩和ケア医は、今からの治療ではなく、もう少し長い目で診ている可能性もあります。

どちらにせよ、なぜ介入終了なのかを緩和ケア医と治療医の先生との間での共通認識がなされていないため、このような問題が起こっている可能性が高いです。

このようなコミュニケーション以外の問題を挙げるならば、緩和ケアチームのマンパワーの問題が挙げられます。もしかすると、それが原因でそこの緩和ケアチームは入院のみ介入するという方針かもしれません。

当然、緩和ケアチームによって患者さんの受け入れ方の方針は異なります。

実は、まだまだ国レベルで外来診察の診療報酬体制が不十分という現実があります。なので、そこの緩和ケアチームでは外来を積極的に実施していない可能性もあります。

まだまだ緩和ケアの外来診療の広まりが不十分であることは私自身も残念に思っています。私も緩和ケア医の端くれとして、これから多くの緩和ケアチームで、外来診療を増やせるように尽力したいと思っています。

また、これも残念なことですが、緩和ケアチームの熟練度にも違いがあります。

緩和ケアチームができてから 20 年以上のチームもあれば、1 年も経っていないところもあります。各チーム間での質の違いは全国的にも課題となっており、レベルに違いがあることも事実です。

どこの科もそうですが、緩和ケアを担う医師の数が十分でなく、育成が問題となっています。緩和医療学会が中心となって、認定医、専門医の教育に当たってはいますが、十分とは言えない現状です。

緩和ケアチーム研修会を定期的に開いたり、国レベル、 都道府県レベルでの緩和ケアチームの質の向上、均一化を目指しておりますのでどうか長い目で見てやって下さい。

いずれにせよ、緩和ケアチームと治療医の先生の間で共通の認識がなされていないことは十分に考えられますので、ご面倒ですが、一度緩和ケアチームにお話してみて下さい。

緩和ケアチームは第2主治医として患者さんや治療医の先生と関わります。

ですので、今後とも緩和ケアと良好な関係性を保っていただければ幸いです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。
このnoteでは緩和ケアを皆様の身近なものにして、より良い人生を生きて欲しいと思い、患者さん、ご家族、医療者向けに発信をしています。

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また次回お会いしましょう。

さようなら。


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