見出し画像

せっかちな妻が笑って、僕は泣きそうになるほど満たされた(少しは待てよ)

※固有名詞なので「レジデンス」は仮名です
※「レジデンス○○」の「○○」は実名です

◆1

僕は少し前に、『レジデンス〇〇』という、変わった名前のアパートを目撃しました。
ゆかりちゃんとの散歩中に思い出して、僕は語り始めました。

「すごく変わった名前のアパートがあったんだよ~」

「へ~、どんな名前なの~?」

「3棟あってね~、1つは『レジデンス ギン』」

「・・・へぇ~」


ゆかりちゃんの反応がイマイチです。


◆2

「あと、2棟はねぇ~」
「ええっと、あれ、なんだっけ?」

ど忘れしてしまいました。

「・・・」

ゆかりちゃんは、完全にシラケています。

「そのアパートまで歩いて行く?」

「近いの?」


「全然方向が違うから、ここからだと1時間近くかかっちゃう」

「行かな~い」


◆3

「そうだ! ストリートビューで見ればイイんだ!」
「オレって、天才じゃね?」
「ナイスアイディアやん!」

「・・・」


「ええっとね、この辺で~、あっ、とっ…」
「歩きながらじゃ、操作できないなぁ~」

僕は立ち止まって、スマホの操作に専念しました。

「・・・」

ゆかりちゃんは、シラケたまんまです。


◆4

「あった!」
「バッチリ見える!」
「ゆか・・・」
「あれ?」

ゆかりちゃんがいません。

数十メートル先の突き当たりを、どっちかに曲がったようです。
その交差点で、普通は待つだろうと思いました。


◆5

「まったく、せっかちなんだから~」

とボヤきながら、僕は小走りしました。

突き当りの交差点で、左を見ました。
ゆかりちゃんは、そこからさらに100メートル以上先でした。
しかも、まだ歩く。立ち止まらない。

「少しは待ってくれんの?」

僕はまた、小走りしました。


◆6

やっとゆかりちゃんに追いつきました。
運動不足ゆえに、息がゼ~ゼ~、ハ~ハ~です。

ゆかりちゃんは、

(ったく~、トロくさいなぁ~)

という目をしています。


◆7

ゆかりちゃんに、スマホのストリートビューを見せました。
アパート名がバッチリ見えます。

1棟目が、『レジデンス ギン』です。

「・・・」

ゆかりちゃんは、無言でスマホを見ています。

2棟目が、『レジデンス ヤエ』

「・・・」


◆8

3棟目が、『レジデンス ウシ』


「ウシ~~~⁈」

ここで、ゆかりちゃんが反応してくれました!
ゆかりちゃんが驚いたのです!


「なんで『ウシ』やの~~~!」

ゆかりちゃんが笑ってくれました。




おしまい

※この記事は、エッセイ『妻に捧げる3650話』の第587話です
※マガジン【ゆかりちゃんの『天然』のポートフォリオ】↓ に加えます




コメントしていただけると、めっちゃ嬉しいです!😆 サポートしていただけると、凄く励みになります!😆