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ホテルスタッフから見たGoTo政策

こんにちは。サンペイですよ〜。本日はタイムリーな話題についてお話ししようと思います。

札幌は連日大勢の新型コロナウイルス感染者数が発表されています。先日、街に出る予定があり、夕方帰る前にすすきのにあるプリン屋に寄りました。いつもなら呑みに出かけるたくさんの人と客引きで賑わうすすきの交差点が、まるで4月に緊急事態宣言が出た時に戻ったかのように閑散としていました。

お気に入りの居酒屋のSNSも、営業時間の短縮や賞味期限の迫るメニューの値引き、デリバリー営業の開始など、苦しい状況の中試行錯誤しているようです。

しかし、このような状況は、先日までホテルで働いていた身として容易に想像できる事でした。今回は、ホテルマンから見た日本のコロナ対策についての見解をお話しします。


複雑なまま始まったGoToトラベル

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まず挙げられるのが東京都を除外したまま開始された事です。GoToトラベル開始当初、東京都では他道府県と比べても多くの感染者数が発表されていました。判断としては、正しかったと思います。

しかし、問題なのは、チェックイン時の身分証による住所確認です。たとえ東京都にお住まいでも、外部・自社に限らず予約サイトの造りの都合上、GoTo割引を利用したプランでの予約が可能です。

そのようなご予約をされて来館されると、割引が適用されない金額で当日にお部屋を取り直さなければなりませんでした。中には、「この金額で予約できたからこのホテルにしたんだ。」とお怒りになるお客様もいらっしゃいました。

そりゃあ、決まりをよく見ないでご予約されたとはいえ、実際に予約できてしまって何も疑問を持たず、当日になってホテル行ったら身分証確認されて、東京の人だから割引ないので差額頂戴します〜なんて言われたらムッときますよね。

実際、身分証の確認漏れで、GoToを使ってご宿泊されたお客様も相当数いたのではないかと思います。

次に、個人事後還付申請制度があった事です。個人事後還付申請制度とは、GoToトラベルが始まった7月22日から、8月31日までの間に、GoToの割引を介さずに直接宿泊施設に予約し、室料を全額支払った場合、GoTo割引相当額の還付金を受け取れるという制度です(※すでに申請期間は終了しています!)。

GoToトラベルを適用した予約プランが発売される前に対象施設を予約したお客様への公平性を保つための制度かと思われますが、多くのお客様はこの制度をよく分かってないがとりあえず得をしたい状況。宿泊施設には多くの問合せがありました。

申請には宿泊施設から発行される領収証と宿泊証明書が必要だったのですが、宿泊証明書をもらい忘れるお客様も多く、宿泊施設側の負担で郵送するコスト・手間が発生しました。

ホテルのフロントや予約担当者は、知識の詰め込みと新しい業務で負担が増える中、それが給与などに反映される事もなくただ忙しくなった印象です。


地域共通クーポンの付与開始と客層の変化

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10月からは、東京都がGoToトラベル対象地域に追加され、地域共通クーポンの付与が始まりました。地域共通クーポン制度とは、観光地における消費を喚起するため、旅行代金の15%分の金額を、地域・使用可能期間を限定して付与する制度です。

これが・・・実は現場にとってとても厄介なのでした。

まず事務局から送られてきたのは、地域共通クーポン用紙と「北海道・青森」地区のスタンプ、そして日付印でした。(日付印は分かるけど、地区は印字できなかったのかしら・・・)

そして2週間後ぐらいにもう1セット同じスタンプたちが届きました。理由は謎ですが予備でしょうか。結局退職するまで一回も使っていませんでした。

私が務めていたホテルでは、夜勤中に翌日のチェックイン分の紙クーポン用紙に押印作業をするのですが、現金と同じ価値があるだけに厳重な確認が必要で神経を使い、稼働が上がれば枚数も増えて休憩が取れない日もありました。

当日予約のお客様の地域共通クーポンは、スタッフが随時予約を確認して準備します。予約してすぐ来館されてしまうと、確認と用意(押印&発行記録)に時間を要し、長時間お客様を待たせてしまいます。時間がかかる作業だと理解しているお客様ばかりではないので、辛い思いをしたスタッフの方も多いかと思います。

その点電子クーポンは宿泊施設側の負担が少なく、有難いのですが、自力でクーポンを取得できないお客様が少なからずいらっしゃいました。特にお年を召したお客様にとっては、クーポンを使用するたびにGoTo公式サイトに予約番号やら何やら打ち込んでクーポンを表示させるのは至難の技。契約した旅行会社に問い合わせても長い間繋がらなかったり、休日だったりすると、当然ながらフロントにお問合わせされます。

そのようなお客様に対応すると、解決まで一定の時間を要するため、自らの業務は滞ってしまいます。それがフロントの仕事だと言えばそれまでですが、せめて旅行会社ごとに紙か電子か決めるのではなく、お客様自身で地域共通クーポンの発券媒体を選べたらよかったなあと思います。

かくして、GoTo割引35%+地域共通クーポン15%で、本来の宿泊代金の半額が補助されることになったGoToトラベル事業。自己負担額は4万円のお宿が実質2万円、2万円のお宿が実質1万円になります。

当然ですが、普段はとても手が出せないような富裕層をターゲットにした宿泊施設にも、頑張れば泊まれてしまう訳ですね。私も例に漏れず、今年はいつもの日帰りから奮発して、GoToでリゾートホテルに宿泊してスキーをしようかなと考えています。

旅行を楽しむのは、もちろんお客様の自由です。ただ、いつもよりちょっといいホテルに泊まる時は、いつもよりちょっといい自分で。心も振る舞いも気をつけたいなと思うのは私だけでしょうか?

マスクを付けないでやってきて、着用をお願いすると激昂したり

呑み過ぎて、自分のお部屋もわからなくなってしまったり

夜中に、仲間と大騒ぎしたり・・・

心なしか、GoToトラベルが始まってから、上記のようなお客様に対応することが増えました。退職済みなので堂々と言えますが、お客様は神様ではなく人間で、スタッフも人間です。良い接客をされたいなら、自分自身も良いお客様でありたいものです。


一部ホテルのコロナ対策の実態

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これは書くか迷いました。しかし、やはりこの投稿には必要な部分だと思うので記します。

GoToトラベル対象宿泊施設であるからには当然、感染症対策の徹底が求められます。お客様同士のソーシャルディスタンス確保、スタッフの検温と定期的な消毒・マスク着用、館内の消毒、チェックイン時にお客様の検温・消毒など・・・

宿泊業経験者なら想像できるかと思いますが、限られた人員で、チェックインのピーク帯に上記の対策を全てこなすのは大きな負担です。絶えずお客様が御到着され、ロビーに集まり、フロントに並びます。グループで御来館したお客様の消毒漏れはないか気にしつつ、チェックイン作業をします。中には、消毒をお願いすると「別の場所でしてきたんだから良いだろう」とお断りされるお客様もいらっしゃいました。

一度、しっかり感染症対策が行われているかを視察しに、私が勤務していたホテルにGoTo事務局の委託業者の方がお見えになられました。ただ、覆面調査ではなく事前に来館の通知があった&チェックインのない時間帯にお越しになったため、宿泊施設側は普段以上に丁寧な感染症対策を用意できました。業者の方をお客様に見立てて、チェックイン時の流れを再現させられましたが、これは実際のチェックインを視察しないとあまり意味がないと感じました。

私が勤務していたホテルでは、発熱があるが人手不足により出勤・出勤時の検温の形骸化(適当に体温を用紙に記入)・多忙によりスタッフや館内の定期消毒が行えない・チェックイン時の確認項目が多過ぎてお客様の検温と消毒を失念する、等の緩みは確かにありました。

また、先日東京からGoToを利用して来道した知り合いは、大手のビジネスホテルに宿泊していましたが、チェックインの際は消毒を求められなかったそうです。

このように、対策に緩みのある宿泊施設は、一つや二つではないと思います。私はこうした「緩み」が、今回の道内の感染拡大を助長した可能性も大いにあると思います。

ちゃんと感染症対策をしている施設・飲食店に対して失礼ですので、「緩み」に心当たりのある施設の従業員の方は、今からでもしっかり感染症対策を徹底しましょう。


さいごに

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この記事はあくまでも私自身の経験に基づいた見解です。

熱く語ってしまいましたが、皆さんに伝えたいのは、感染症対策をしっかりしている宿泊施設や飲食店を選んで利用して欲しい、ということです。

上記に挙げたような「緩み」のある施設は、十中八九目先の売り上げを重視していて、お客様の事も、従業員の事も大切にしていません

国が打ち出した政策はどんなに欠点があってもそう簡単に変更・廃止されません。私たちができるのは、ルールに誠実に、お客様と従業員を守るための努力をしている施設にお金を落とし、私たち自身も感染を広げないように心がけることです。

新型コロナウイルスとの戦いが始まって、間も無く一年が経とうとしています。先行きの見えない世の中ですが、各GoTo制度を正しく利用して、経済を回して行きましょう。

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