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健さん(15)女子高生たちと健の接点②

あいらの次はここあ。
「私は、あいらの後の話、築地のあたりからさ、ストーカーっていうのかな」
「小太りのメガネの大学生みたいなのに、後をつけられて」
「超やばいって、小走りに歩くんだけど、そいつもしつこくて」

ひとみは、話が長くなりそうなので、割って入る。
「要するに、そこにも健さんってこと?」

ここはは頷く。
「はい、そこの佃大橋に健さんがいたんで、健さんまで逃げて」
「そしたら健さん、目を細めてストーカーを見て」

ひとみ
「健さん、何かしたの?言ったとか」

ここあ
「いや、手の指をボキボキ鳴らして、怖い顔して、ストーカーに向かって数歩」
「そしたら、ストーカーが真っ青、走って逃げた」

ひとみは、続きが聞きたい。
「その後健さんからは?」

ここあが真っ赤な顔に変わる。
「健さんね、可愛い女の子は一人歩きしないほうがいいよって」
「学校まで送ってくれて、それ以外には何も言われなかったけど」
「もうね、それから胸がキュンキュンして」

すると女子高生たちは、一斉にうらやましそうな声。
「いいなあーーー言われてみたい」
「ここあ、役得―――」
「メチャ、頼りになるよねーーー」

ずっと聞くばかりの良夫が口をはさむ。
「それで全員で健さんにアタックしたら、逃げられたと?」

女子高生たちの反応は早い。
「そうなんですーーー!」
「恥ずかしいとかさー」
「仕事がありますんでとかーーー」
「顔も見てくれないしーーー」

ひとみは、ホッとするような、呆れるような。
「まあ、それが健さんって人」
「実にシャイで堅物なの」

すると、まゆかが、ひとみの顔をじっと見る。
「ねえ、ひとみ先輩、健さんとはどこまで?」
「手をつなぐとか、それ以上とか?」

そのまゆかと一緒に、他の女子高生も見つめてくるので、ひとみは焦る。
「あのさ、あなたたちね、そういうことは」

しかし、父良夫は、そんなひとみの反応が面白いらしい。
プッと笑いながら、
「まあ、お嬢様たちの気になるようなことには、なっていないかな」
「だから、安心して、健さんにアタックしてみたら?難しいけどさ」
など、とんでもないことまで言ってしまう。

さて、良夫のコメントが効いたらしい。
女子高生集団は、実にあっさりと「お邪魔しましたー」と姿を消した。

ただ、ひとみは、また落ち着かない。
「健さんも悪気はないけどさ」
「圭子さんに始まって、美智代さんは大丈夫と思うけど」
「女子高生ねえ・・・うーん・・・」

そんなひとみに、父良夫はまた余計なことを言う。
「ひとみも、おっとりしていると、ますます望みがなくなるよ」
「あの子たち、まあ可愛らしい、はつらつとして」
「噂が広まって、やがては健さんファンクラブかなあ」
「ひとみは6年経っても、いまだに、スマホで電話もできないしなあ」

そしてひとみは、一言も切り返せない。

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