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健さん(29)ひとみの料理を健が食べ始める

「わかりました」
健は、意外なほどに、あっさりと、ひとみの頼みを引き受けた。
ひとみは、もう迷わない。
健の手をぎゅっと握り、家に招き入れる。

「手狭ですが、そこに」
まだ目を丸くする健を、食卓につかせる。

そこで、ようやく健が口を開く。
「あの、急なお話で・・・」
「ところで、良夫先生は?」

ひとみは、首を横に振り、金目鯛の煮付けを冷蔵庫から出し、再び温める。
「お父様は、関係ありません」
「私が、健さんに食べさせたいだけです」

健の前に、まず、アサリの味噌汁、白菜のお漬物、温かいご飯、お茶を置き、最後に勝負料理の金目鯛の煮付けを置く。

健は、あまりの意外な進行に、また目を丸くする。
しかし、迷わない。
「わかりました、いただきます」と、手を合わせ、食べ始める。

健は、まずお茶を飲み、その目を光らせる。
「上手に・・・これは美味しい・・・懐かしい味がします」
アサリの味噌汁で、目を閉じた。
「こんなに美味しいお味噌汁・・・何年も飲んでいません」
「お嬢様、本当に・・・どういうことで・・・」

ひとみは、ただ健が味わって食べるのを見ている、何も言わない。

健の箸が、ようやく金目鯛の煮付けに伸びた。
ひとみは、この段階で、ようやく不安。
「大丈夫かな・・・私の勝負・・・」
懸命に胸をおさえている。

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