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家に還る日。心にともる灯。

少年は、青森の海岸で終戦を迎えた。

隊列があちこちで崩れ、嗚咽をもらす仲間の声で本当に負けた事を知る。

家に、やっと帰れる…

うれしさで、ぽっと胸の灯がともる。けれど、そんな感情は表には出さない。いや、出せない。

もう土に穴を掘り、爆弾を抱え、敵を迎え撃つ…そんな作戦の訓練は必要ない。

教官に棒で殴られることもない。

少年が汽車に乗り、地元に戻れたのは9月1日のことだった。


少女は父におぶられ、親戚宅から自宅へ戻る途中だった。

2ヶ月前、空襲で自宅が焼け、少女は爆弾の破片で重傷を負った。

父の背中越しに、街の灯がぽつん、ぽつん…ともるのが見える。

ああ、本当に戦争が終わったんだ…

少女の胸に安堵が広がる。

もう空襲に怯え、真っ暗な夜を過ごすこともない。

でも、爆弾の破片は少女の体に生涯刺さり続ける。心におった傷は癒えやしない。

父の背中は暖かく、ゆらり、ゆりかごみたいに揺れた。


少年と少女が出会うのはもう少し先のこと。


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