監督自身が語る波乱の人生「ロマン・ポランスキー初めての告白」

マスコミと権力者の恐ろしさをまざまざと感じることとなった。ほぼ全編ポランスキー監督へのインタビューから成るドキュメンタリー映画である。

「戦場のピアニスト」を観て、ロマン・ポランスキーという人に興味をもったわたし。ふと目に留まったDVDを借りてきた。芸能人やセレブの噂話には疎いわたしでも、なんとなく見聞きしていた彼のスキャンダル。実際のところどうだったのだろうか。

長年に渡りポランスキー監督の仕事上のパートナーであり親友のアンドリュー・ブラウンズバーグが2010年頃に行ったインタビューが中心となり、当時の画像、映像を織り込みながら構成されている。親しい人だからこそ、「そんなこと聞くか?」という立ち入った質問にもはぐらかすことなく素直に答えていく。感情的にならず、小柄な愛くるしい容姿(失礼)で語る様子は好感がもてる。

好々爺とも言える容姿からはその過酷な人生は想像できないが・・・。ユダヤ系ポーランド人だったため、ゲットーで悲惨な生活をし、妊娠中の母は収容所で殺され、自らは危ういところで逃亡、家族は離散。様々な苦労を経て、映画監督となるものの、アメリカでは妊娠中の愛妻シャロン・テートを惨殺された。同じくアメリカで未成年に対する性的暴行で逮捕、起訴され服役。(これはいくら反省しても許されないけどね)ここら辺からマスコミの執拗な取材攻勢にさらされる。マスコミは怖い。有名人のスキャンダルをこれでもかと書き立てて、大衆心理を煽る。需要がなければ供給もないわけで、それはマスコミだけの罪でもないかもしれないが、浅ましいことだ。ポランスキー監督を変態の極悪人として報道するだけでなく、被害者の個人情報も暴いてずたずたに傷つけるのだから・・。
また、判事がその権力を乱用しているとしか思えない出来事が!

これらはポランスキー側の言い分だから100%客観的とは言えないが、アメリカの判事やマスコミがやったことを考えれば、これくらい語っても当然の権利だろうと思うのだ。

この映像は、アメリカの要求に応じてスイスで逮捕拘留され、自宅軟禁だった頃の撮影だそうだ。その後スイスはアメリカの要求を退け、ポランスキー監督は釈放される。(かっこいいぞスイス!)

その後監督はどうしているのだろうか?アメリカはまだ各国への引き渡し要求を取り下げていないのだろうか?
現在83歳か・・・。三度目の妻との間には子どもに恵まれ、今は平和で幸せな時間を過ごせていると語った監督の笑顔が心に残っている。

ポランスキー監督の作品で、タイトルだけは知っているものが多い。最近観た「戦場のピアニスト」が多分ピカイチだろうが(監督自身も一番のお気に入りらしい)、他のも観てみようかと思う。
気になるのは「水の中のナイフ」と「毛皮のヴィーナス」だ。
初期と最後の映画。