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Journal:Satsuki(皐月)3.

5/22
「音楽機械論 ELECTRONIC DIONYSOS」 (吉本隆明&坂本龍一 著/ちくま学芸文庫/2009)を読了。タイトルから受ける印象で、理系脳が断絶していると半ば確信しているため、読み切れる自信が無かったが、思っていた以上に分かりやすくとても純粋な発想からのお2人の会話が面白く2日程度で読み切ってしまった。

「1984年、思想界、音楽界の巨人が音楽・文化について語りあった」というキャッチコピー。吉本氏は詩人であり評論家であるが、音楽に詳しくないそうだ。そんな思想界の巨人と、インタビュー当時は1984年ということだから、YMO散開後、戦メリ出演を果たした後の教授=音楽界の巨人の語らい。高度な思考を持つ人達の異文化交流は、互いにとても探求に純粋で真摯。頭の良い人達のリスペクトし合う関係性、傾聴、対話、会話の間のような瞬間にとても心を打たれた。

中でも、教授が事前にリストアップしておいた音源を、吉本氏が事前に聴いてきて、その感想を述べつつ教授と意見交換する章は、にやけるほどに面白い。そして、音楽に疎いという吉本氏の、私からは発想もしえない角度の音楽の聴き方、解釈、純粋な疑問に目から鱗がバラバラと。一瞬にして視野がぐわぁぁんと広がった。凝り固まった視野に改めて気付かされる。楽しい。

教授リストアップの音楽の中には勿論 Kraftwerk が挙げられている。
急激に懐かしくなり、BGMに「Trans-Europe Express」「Tour de France」あたりを聴く。何がキッカケだったのか忘れたが、20歳頃はMixture RockやHard Rock(主にUS)を好んで聴いていた傍ら、なぜだか Kraftwerk をかなりリピートで聴いていた。あとUKの New OrderとかSiouxsie And The Bansheesあたりのニューウェーブ近辺を聴いていた。改めて振れ幅極端…。
久々に聴く Kraftwerk は更に大人になって聴くと一味も二味も違った角度でスマートでクールだった。学生時代の何とも言えないガラスみたいな時期に聴いていた音楽を、違った視点で聴き直せるくらいの年齢になったのだな。音楽とはやはり終わらない旅だ。


5/23
「ムーミン谷の彗星」 (トーベ・ヤンソン著/講談社文庫)を読了。時間が出来たらムーミンシリーズをちゃんと読み直してみたいと思っていて、文庫版が出ている事でとりあえず1冊購入。挿絵が可愛くて良い。スナフキンがもうここで登場するのか。ニョロニョロ好きだったけど、改めて読んでみると描写的には結構怖くて不思議な生き物。
ムーミン谷に彗星が向かってきていると大騒ぎになる話。空は暗く彗星はどんどん赤く大きく近づいてくる。終始不穏な空気が漂う中、彗星の様子を見に行くため、ムーミントロール、スニフ、スナフキン、スノークのお嬢さん達の冒険がはじまる。キャラクターがそれぞれ個性があって人間関係の縮図のよう。スナフキンの名言の数々。大人であればあるほど、繰り返し読みたくなるかもしれない。このまま気が向いた時にシリーズを順番に読んでいこう。



5/28
シルク・ド・ソレイユ「ALEGRIA」を観にお台場まで。偶然にも12年前の同日に過去移動公演の「KOOZA」を見に行っていたようだ。初めてシルクのステージを観た時の感動は今でも鮮明。映画「The Greatest Showman」を観た時も、シルクを思い出した。コロナ禍の困難を越え、数年振りの来日公演は感慨深いものがあった。

お台場のビッグトップが見えてくると、一気にサーカスらしい雰囲気にテンションが上がる。今回ステージを真横から見る形で、右側前から3列目の席での鑑賞。思った以上にステージから近く、演者の表情や衣装がしっかりと見え、息遣いや風、着地音などもしっかり聞こえる距離。これは正面の見やすい席から見るよりずっと臨場感と緊張感があって一挙手一投足に、こちらも息をのんだり興奮したり忙しい。

一つ一つ入念に練り上げられた手作りのハイグレードパフォーマンス。一気に「ALEGRIA」の世界観へ魅き込んでくれる衣装デザイン・カラー、照明、演出、そして生演奏のステージ音楽。互いをリスペクトし、信頼関係が出来ていないと出来ない超人技。言わずもがな、日夜磨く技に加え、その超人技をこなすために必要な肉体づくり。席が近かったので素晴らしい肉体美に釘付け。全てをひっくるめて総合芸術に値する。セリフ内での日本語サービスも盛沢山で、愛の詰まったショーだった。芸術とは、感動とは。まさにこれ。久しぶりにアートのエネルギーを浴びて生き返った。

観劇後、お台場を散策して帰る際、ビッグトップの外側を歩いていたら、陽気な歌声と楽器の音。シルクのスタッフたちが、プレハブ小屋に沢山集まって、ソンブレロ被ったり、楽器を演奏しながら、宴をしていた。みんな笑顔で乾杯していて、とてもアットホームな雰囲気に笑顔を貰った。その昔、よく飲んでいたバーにシルクのメンバーが飲みに来ていて、一緒に盛り上がったりしていた時期があったのだけれど、みんな陽気でサッパリしていて、何より暖かかった。楽しい記憶を思い出しながら、そんな経験が出来た偶然に感謝する。また、来年も来日公演してくれたら嬉しいなぁ。
ちなみに、シルクは各公演ごとにサントラが出ていて、どれもあっという間に世界観へ没入出来る音楽なのでおすすめです。

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