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猫と

 2022.10月
  今日は夜までお一人様時間。
でもうちには猫がいるから実際には猫とふたりっきりだ。
普段は幼子2人と戦う日々だけと今日は夫に託して。
「さて、と!」
私は台所へ行く。珈琲をいれるために。
最近は、豆を買ってひいていれている。やる前は、めんどうだろうな~と思ってずっと避けてきたけど、いざやると自分でもびっくりするくらいハマった。色んな豆を試したい。
「できた、と」
私は珈琲をお気に入りの猫のマグカップに入れて、猫が待つ居間へ。
紹介が遅れましたが、愛猫の名前は『ティオ』で愛称はティー。
私が定位置に座ると「にゃ~」と鳴き、トコトコと来た。喉元と頭を撫でてやると、とろ~んとした顔になる。この顔がたまらなく好き。でも、ずっとやっていると前脚で私の手をちょんちょんとする。これが、もうやめろの合図。
私はそれに従いやめるとトコトコと隣の部屋へ行った。
  ティーは、朝ケージから出たら必ず部屋中をパトロールする。最初は必ず隣の部屋の出窓に行く。ピョンとジャンプして出窓に上がると外をジーと見ていたり、日向ぼっこしていたり、毛繕いをしていたりで、ティーのお気に入りの場所になる。たけど、冬の時期はもう1ヶ所お気に入りな場所がある。
それは『こたつ』だ。
小さい時はそうでもなかったのたけど、病気をした頃から、自分からこたつに入るようになった。
病院は嫌いで連れて行こうとするとすごいドスのきいた鳴き声で訴える。
 病気はティーが4歳の時に見つかった。
手術をして取り除く事が出来たが、
一度出来るとまた出来やすいと聞いたのでそれからは、体のチェックは欠かさないようにしている。
 隣の部屋から帰ってきたティーは一目散にこたつに入った。今日は私だけしか居ないのでこたつの半分は自分のもの。みんながいる時は足がいっぱいあって狭そうにしているが、それでもこたつに入ってくるから、冬は人だけでなく猫にもかかせないもの第一位。
「ピー」と音が聞こえた。
洗濯が終わった。
私は珈琲を一口飲み、洗濯機の方に向かった。
「よいしょっと!」
4人分の洗濯を何回かに分けてやるのでもう一度汚れ物を入れてスタート。
洗濯・掃除・ご飯・掃除…
あっという間にお昼も過ぎて、時計は14時になっている。
子供たちがいない今、やりたい事は沢山ある。
本を読みたいし、編み物もしたい。とりためていたアニメやドラマもゆっくり見たい。
取り敢えず、ずっと途中だった編み物を少ししておこう。子供用に帽子やマフラーなどしか出来ないけど娘が生まれた頃からやり始めた。
息子は帽子を嫌がりあまりしないが、娘は「可愛い!」と言ってしてくれるので毎年一つは作るようにしている。息子ももう少し大きくなったらしてくれたらいいなと期待を込めて作る。
「はぁ~」とため息をつく。
熱中しすぎてもう外は少し暗くなってきていた。
こたつの中を覗くとティーが寝ている。時々出てはご飯をたべたりしてたが、基本的に今日はこたつの中にいた。
私はキリの良いところでやめて編み物をしまった。
 私はまた台所に向かって珈琲をいれた。
今度は買っておいたチョコと一緒に部屋に持ってきて一息。
あと数時間できっと帰ってくるだろう。
それまでは、ずっと読みたかった本を読んで待っていよう。

数時間後。
ドアがガチャッと開く音が聞こえた。
みんなの「ただいま~」の声が聞こえたら、私のいつもの日常が戻ってくる。
戦いだけど楽しい日々。
こたつの中のティーに私は言った。
「ティー、また騒がしくなるけど宜しくね~」
ティーは私をチラッと見ては顔を伏せた。
“わかってる”
ティーはそう言った気がした。

 2023.7月
 「いってらっしゃい、宜しく~」
夫に子供たちを託してのお一人様の時間だ。午前中は変わらず同じように洗濯と掃除をして買い物あれば近所のスーパーへ行く。帰宅したら、趣味だっりテレビのチェックしたり・・・変わらない。
やることは変わらないのに、ただひとつ違うのは今日は本当にひとりっきり。
なぜなら、飼い猫が去年の夏に病気で亡くなったから。
10年間、いつも一緒だった。
だから姿が見えないのが信じられない。
ご飯やおやつをパクパク食べてる姿。
暑い日は冷たいフローリングや扇風機の側でゴロンの姿。
寒い日はソファーやこたつの中でゴロンの姿。
ケージから出たいときは"にゃー"と鳴いて意思表示。
ひとりでバタバタ運動会。
時々吐いちゃって私も本人もちょっとばかりびっくりする。
名前を呼んだら機嫌がいいとトコトコと来てくれて、めんどくさいと尻尾をパタパタする。
あくびはちょっと怖い顔になり撫でると赤ちゃんのころと変わらないふにゃ顔。
抱っこは嫌いで喉元や顔を撫でられるのが好き。
そして、私がもっとも好きな時間がたまにふらっと来ては私の足にちょこんと座り込む時だ。
亡くなってから1年が過ぎた。
動く姿は動画にはあるがもう触れることが出来ない現実。
使っていたケージはそのまま。
ご飯の皿も水の容器もトイレも綺麗に洗ってそのまま。
ベッドもそのまま。
全てがそのまま。
ただ君がいないだけ。
今でも寂しい。だけどいない現実。
寂しさはずっと変わらない。
そして君を大好きなことも変わらない。

 夜。
「ただいま~」
3人がバタバタと帰ってきた。
お一人様時間は終了。
いっぱい遊んだらしく汗だく。
「すぐにシャワーするよ~」
私が言うと「あのね~」と、遊んだ興奮がまだ残っている子供たちを横に「うん、うん」と、頷きながら私は急いでタオルや服の準備をする。

慌ただしく騒がしい毎日だ。
ケンカしたり泣いたり笑ったり・・・
基本的に穏やかな生活とはいえないけれど天国にも届くくらいいつも騒がしくしているよ。知ってるよね?
"またやってんにゃ~"
なんて笑って見守ってくれてたら嬉しいな。
こっちでは叶えてやれなかった、猫友を作って仲良く遊んでて欲しいな。
してあげられなかったことはたくさんあった。
でも、一緒に暮らした幸せな時間を思い出しながら騒がしくも楽しい日々を送るよ。

ティーに届きますように。
ティーに捧げます。


#創作大賞2023











 





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