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ローカルライターのふたば暮らし 6月15日の日記

横浜から福島県浜通りに移住して9年半、
双葉町に引っ越して、2ヶ月。
双葉町に暮らしながら、双葉郡をはじめとする浜通りのあちこちに出かけるローカルライターの私の、なんということのない日常を綴ります。

2023年6月15日(木)

少し遡って、直近の取材の日の日記です。

この日は、隣町の浪江町の鈴木酒造店での取材。忙しい時間を避けたのだと思うけど、取材時間が15時からだったので午前中はゆったりと。

とは言え、取材当日は取材対象者のことで頭をいっぱいにするため、過去記事や書籍を読んだり、質問を考えたりの時間に充てる。
特に、過去に沢山取材されている人や団体にはなるべく同じことを聞かないように、可能な限り過去記事を読んでおくのは基本。

特に、本まで出されていたり、そもそも私自身も過去に一回取材しているので尚更。

そして今日は、取材現場の鈴木酒造店がある道の駅なみえで、鈴木酒造店の日本酒を試飲しようと決めていたので、電車で向かうことに。

常磐線は1時間に一本しか電車が無いので、1番時間が近い電車でも1時間以上前に着いてしまうのですが、それはそれ、現地で取材準備をしていればいいのだからと双葉駅13:11発の普通列車へ乗り込む。

そしたらまさかの、向かいに座っていた人が知り合い(笑)。東京と浜通りの2拠点勤務をされている方でした。彼はいつも常磐線で行き来しているため、常磐線の乗客が少ないことが身に染みているようで、「山根さん、もっと常磐線使ってくださいよー」とJR職員でも言わないような懇願を(笑)。

ちょうど今の時期に見られる「田んぼと常磐線」の景色

どこの駅も、駅からの交通アクセスが良くないため、結局駅に着いた後に車が必要になるから普段は車移動なのですが、唯一浪江駅だけは、「なみえスマモビ」というスマホで呼び出せるオンデマンド交通があるため、それも使ってみたくて電車移動にしてみたのもあったのでした。

事前に登録を済ませておいたので、駅に到着してすぐにスマホで配車をお願いしようと思ったら、駅に停まってました(笑)
トコトコと車に向かい、乗ってもいいですかー?と開けてもらい、道の駅なみえまでの料金200円を現金で払って(PayPayも使える)出発進行。

道の駅なみえまではぴゅんと3分。1.4キロなので行きはまだ飲んでないし、歩けない距離ではないのですが15分近くかかるのと、この時期は絶対に汗をかくのでスマモビ有り難いですね(横浜に住んでた時は15分くらい普通に歩いてたのにね)

2020年8月にオープンした道の駅なみえ

道の駅なみえでお菓子とドリンクを買って、フリースペースで更に取材の下準備。
道の駅なみえには、鈴木酒造店の酒蔵と、その商品を卸している、鈴木酒造店の日本酒がほぼ全て買える「Sake Kuraゆい」というお店があって、そこのSNSをチェックしておきたかったのです。

ですがこれが結構大変で、なぜかというとSake Kuraゆい単体のSNSは無くて、道の駅なみえのSNSの中に、日替わりでSake Kuraゆいの投稿が現れるのです。

※この日はたまたま最新の投稿がSake Kuraゆいでした

なのでSNS全体を遡っていたら、1時間前に来てたのにあっという間に時間が経って、カメラマンに催促される始末。おかしいなぁ、こんなはずでは。

鈴木酒造店とSake Kuraゆいは、道の駅なみえの左側「なみえの技・なりわい館」にあります

ごあいさつも早々に、取材へ。
鈴木酒造店は、震災前は日本で一番海に近い酒造と言われていたほどで、だからこそ津波に全て飲まれてしまったのです。
震災後1年経たないうちに、山形県長井市で酒造りを再開し、浪江町の避難指示が一部解除され、震災から10年経った2021年3月にようやく、同じ場所ではないながらも浪江町に酒造を再建し、浪江町での酒造りを再開したのです。

ただ、その復活ストーリーは、福島県民のみならず、震災や東北の酒に関心がある人なら誰でも知っている+何度も繰り返し聞かれていることだと思ったので(私自身も前回の取材で聞いてしまった)、そうでない話をと、主に浪江に戻って来てから最近までの話を中心に1時間ほどお話しをうかがいました。

浪江の蔵でつくった新しいシリーズ

詳細は記事に書きますが、そのお話は私の想像を遥か超えた、自社の酒を通して浪江町を発信することへの覚悟と責任感、酒造を継続することといわゆる処理水放出などへの危機感だと感じました。どこまでを表現するのか、お話を自分の中で咀嚼し、落とし込まないとなと思っています。

取材後は、待ちに待った日本酒の試飲。
Sake Kuraゆいでは、500円で5杯試飲ができるサービスがあるのですが、道の駅なみえに来るときは基本車なので、オープンから2年間、ずっと涙を飲んでいたのです。

プラス200円でミニおつまみが付きます

コインを入れて、飲みたいお酒の下にお猪口をセットしてボタンを押すと、勢いよくお猪口一杯分の日本酒が自動で注がれます。

ピッタリ一杯分

まずは夏酒。おぉ、さっぱりしてる。
おつまみと一緒に、お水や出汁を挟んだりしながらちびりちびり。定番酒「磐城 壽」に貴醸酒、うん、どれも美味しい!

私がこの日1番気に入ったのは、避難先の山形県長井市がすでにもうひとつの故郷となっているというお話しを聞いていたのもあり、貴醸酒の「故郷ふたつ」海・山、でした。
鈴木酒造店のストーリーを知っている人なら、名前だけで胸熱になってしまうのですが、酒で酒を醸す貴醸酒なので、上品で濃厚な甘味がグッと来ます。

故郷ふたつ、山(左)と海

飲んでいたら想定内でしたが、ここでも友人にばったり。近況報告しながら、次回は浪江に新しく出来たステーキハウスでランチしようねーとゆるい約束を。

とは言え、そんなにお酒が強い訳ではない私なので、すっかり真っ赤になってしまいながら、また帰りもなみえスマモビで浪江駅へ。運転手さん何も言わなかったけど、こいつずいぶん飲んでるなーと思っただろうなぁ。

次の打ち合わせは富岡だったので、浪江駅から常磐線に乗り、双葉の我が家を横目に見ながら富岡駅まで。富岡駅からは待ち合わせのCafe135までとことこ10分ほど歩きます。酔い覚ましにちょうどいいかな。

打ち合わせは、この夏7/31〜8/13までの2週間、常磐線沿線で開催される「常磐線舞台芸術祭2023」について。

芥川賞受賞作家、劇作家の柳美里さんと劇作家、演出家の平田オリザさんらが手がけるイベントなのですが、私は縁あって地域連携広報を担当しています。
今回は地元コーディネーターが市町村にいて、この夜は富岡町の地域コーディネーターである、富岡町3.11を語る会の皆さんと富岡町役場の職員との打ち合わせ。

常磐線舞台芸術祭は、会期期間中、常磐線沿線とゆかりのある場所で、同時多発的に演劇や音楽イベントが行われるのですが、富岡町では、

・『JR常磐線夜ノ森駅』
柳 美里×尾崎世界観(8/7(月)17:00〜夜の森公園周辺)

・『二つの駅舎、ボイス・オン・ボイス』
古川日出男×後藤正文(8/3(木)18:30〜富岡駅周辺)

という、相当の集客が予想される2演目が行われるため、事前の準備や調整を富岡チームで行おうというものでした。

なにしろ初めての試みのため、まだ海のものとも山のものとも分からない。知名度の高い方々がキャストだから集客の心配は無いにしても、そんな大勢の人が、避難指示が解除されているとはいえまだまだ交通、生活インフラが整い切れていない富岡町をはじめとする、いわゆる「原発被災地」に来るのだから、地元民としては何より安全に進めて終わりたいよねという気持ち。そのために動けることは動いておこうという打ち合わせでした。

Cafe135のパスタは、私にとって最良の茹で具合なの

富岡チームで情報共有出来て、ホッとしたところで大好きなCafe135のパスタを食べてお腹も満たされ、でも帰りの電車の時間間に合わないっ!と車で駅まで送ってもらってセーフ!!!

乗り過ごしさえしなければ大丈夫。そう言い聞かせて、常磐線内でFacebook投稿を作成。ちゃんと双葉駅で下車出来ました。
駅から家までは徒歩5分。飲んでるときは駅近最高。
ただやっぱり、もう一本遅くまで電車があればさらに良いのになぁと思いながら、帰路に着きました。

ご支援いただいた分は、感謝を込めて福島県浜通りへの取材費に充てさせていただきます。