#008 自分の性格を書き換える方法--理系各員に捧ぐ
本シリーズは、①勉強頑張ったら選択肢が増える、②理系かつ高成績の方が選択肢は多い、③選択肢が多いと良い会社に入れて幸せになれるというよくあるお話の②まで必死で頑張ったものの、③は半分嘘である。ということに気付いて四苦八苦した私が、理系が気付かぬうちに罠にハマらないために、考えて損のないだろうトピックを書いていくものである。
今回は価値観のメタ化と書き換え、というテーマで書いていきたいと思う。価値観は書き換えることができる。実際私は、めっぽうストレスに弱く、昔は部活の試合前の期間になると、病院で見る限り胃腸は健康なのに、腹痛で倒れるほどだった。現在の私は性格判定試験で、ストレス耐性A+で全くストレスに強いと判定されるまでになった。これは、価値観を書き換えた結果だ。
価値観をメタ認知
人間の記憶について面白い性質がある。フラッシュバルブ記憶と呼ばれる記憶がある。強い感情の揺れがあった時の鮮明な記憶のことだ。写真のフラッシュを焚いた瞬間のように鮮明だということで、この名前がついているらしい。
例えば、3.11が起こったとき、自分がどこで何をしていたかということを覚えている人は多いのではないだろうか。家族とリビングのテレビで様子を見て、唖然としていた。などその当時の場面をイメージすることができると思う。
しかし、このフラッシュバルブ記憶は実際のできごとと違っていることが多いようだ。先ほどの、家族とリビングで、という記憶を現在持っている人に、3.11直後にどこでなにをしていたかを聞いていたとする。すると当時の本当に正しいできごとは、「職場で同僚と、ワンセグテレビで現地の様子を見ていた。」だった、といったような違いが多々ある。
フラッシュバルブ記憶は、鮮明な記憶で、絶対に自分の体験したものという確信がある記憶も、過去の事実と違う場合があるという事実を教えてくれる。
人間は記憶を再構築する。記憶はビデオや写真のように、その瞬間をそのまま記録しておくものではなく、自分という人間専用に再構築された映画のようなものなのだ。
ここまでの説明でようやく、価値観のメタ認知という本題に入ることができる。人間の記憶が映画のようなものなら、人間の記憶=人生は物語だと説明ができる。物語は論理の積み重ねである。したがって、自分の価値観は、この論理の積み重ねに齟齬がないように作られる。
例えば、人生ついてないと思って生きているAさん。今日もついていない彼女は、乗るはずだった電車が満員で乗り損ねた。次の電車は5分後の普通電車。次は乗れるのか、ちゃんと今日を過ごせるのか、不安で仕方ない。
Aさんはとても不安症らしい。ここで不安で悲観的という価値観を、一歩引いて考えてみよう。そもそも何故悲観的なのか?ずっと人生ついてないと思って生きているからだ。人生は物語で、物語は論理の積み重ねだ。Aさんは、ついてない人生を生きている。突然自分にハッピーが起こると、自分の人生を説明できないから気持ち悪い。だから、ハッピーになる理由が説明できない限り、大体のことを不幸に認知してしまう。
Aさんは確かにどこかの時点でついてなかったかもしれない。でもさっきの例もついてないと思うのは、自分の価値観のせいかもしれない。ではどうやって価値観の書き換えをすればいいのだろう。
価値観の書き換え
価値観は、人間の記憶が論理解釈で構成されることを利用すれば、書き換えることができる。
Aさんは、どこかの時点でついていない出来事が続き、私の人生ついてないという価値観を得た。そこからは、その価値観から論理的矛盾のないように、世界を認知し、自分に起こることは大抵ついてないことのように考えている。
ここで、はじめのついてない出来事に立ち返ってみよう。その出来事は本当についてなかったのか?何故ついてないなと感じてしまったのか?
なんでもラッキーと言って済ませてしまう人がいる。他の人から見ておよそついてないようなことでも、当人は本当にラッキーだと思ってるようにしか見えない。なんでそんな風に考えられるの?羨ましい。
こんな人は身の回りにいないだろうか。
Aさんと対比したとき、このラッキーマンの存在は重要な示唆を与えてくれる。それは、Aさんのはじめのついてない出来事は、Aさんがついてないなと感じただけなのではないか?という考え方だ。
調べてみると、セロトニントランスポーター遺伝子というのがあるらしい。セロトニンは感情、気分、精神のコントロールに関わる神経伝達物質だ。そのセロトニンの分泌量などに関わる情報をもつのが、セロトニントランスポーター遺伝子で、SS型/SL型/LL型という3種類の型があるようだ。この型の分布は民族によって偏りがあり、L型が入る民族はアフリカ系が1番多く、アジア系は最も少ないらしい。日本人に1番多いのはSS型で、なんと約7割の日本人がSS型を持つようだ。この傾向から見えるかもしれないが、Sはセロトニンを少なく作る型で不安を感じ易く、Lは多く作るので陽気になりやすい型だという。
この知識を元に考えると、AさんはSS型という遺伝子のせいで、ついてないと感じたのだろうと論理的に結論できる。ラッキーマンはLL型なのだろう。
世の中の人は、この遺伝子の影響で不安症な人と陽気な人に分かれ易くなっている。不安症なAさんからすると、考えられないくらい前向きに考えて生きる人が存在する。きっとその人たちは幸せで、ついてないなと感じることもないだろう。じゃあ私はどうする?
ここで、論理を転換できる。不安に感じるのも前向きに感じるのも、どっちでも選べるのだ。Aさんが不安に感じることを、不安に感じない人がこの世にはいる。自分で選べるのなら、前向きな方が得なことが多そうである。
このプロセスが、価値観の書き換えだ。
後日談
Aさんは、今日も乗るつもりだった電車が満員で乗り損ねた。次の電車は5分後の普通電車だ。でも普通電車はさっきの特急に比べて空いてるだろう。座れるかもしれない。それに、5分かそこら遅れたくらいで、もともと30分以上余裕を見て家を出る習慣がある私には、あんまり関係のないことだ。不安症の頃の私の癖、グッジョブ。
まとめ
書いていたらいつの間にかAさんのドキュメンタリー風になっていた。まとめると、価値観は書き換えることができる。まず自分の価値観になぜ?を突きつけて、価値観のメタ認知を試みよう。記憶は物語で、突然変なことが起こらないように再編成される。あなたの価値観は、その違和感のない記憶に沿うように作られる。価値観の正体を捉えたら、日常生活に合理的な価値観に書き換えられないか論理を自分で再構築してみよう。Aさんは、遺伝子の話を調べて「ついてない」と「ついてる」は自分が選ぶだけのものだと気付いた。そこから全ては変化する。
(補足)セロトニントランスポーター遺伝子の話は、現状正しいと言われているようですが、私自身第一ソースを当たったわけではありませんので、ご注意ください。あくまで、自分を説得する論理の種があれば良いのだという話です。
また次回も、よろしくお願いします。
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