見出し画像

心理学者として、「ヤマトンチュ」として、沖縄米軍基地問題に向き合う

学部生の頃、初めて「構造的差別」としての沖縄の米軍基地問題について学んだとき、それまで問題の歴史的背景や植民地として支配された影響が今も続いていることについて、自分自身ほとんど知らなかったことに大きなショックを受けました。こうしたことはなぜ周知されないのか――。これを機に、自身が受けてきた教育やメディアの在り方を振り返るとともに、権力者にとって不都合な事実が知らされないことの意味について考えるようになりました。

一方、大学院では心理学を専攻し、現在アメリカの大学院の博士課程後期に所属して社会心理学の研究をしています。社会心理学は、社会の中の“個人”について考える学問であり、私自身、個人のとある事柄に対する経験や考え方を理解するにあたり、その個人が置かれている社会構造を理解することが重要であると考えています。こうしたことから、男性の育児観や移民・難民のウェルビーング、など様々な社会的課題について「社会心理学」的観点から研究してきました。

いわゆる「マイノリティー」とされる人々が経験すること(差別、抑圧、マイクロアグレッションなど)はメディアだけではく、心理学の主要な学説でもかき消されることが多く、心理学におけるこうした構造的問題への取り組みは、まだまだ発展途上であると言えます。そうした中、「マイノリティー」集団の中で“分断”や“対立”が起きる社会・心理的背景について研究をしたいと考えるようになり、真っ先に考えたのが沖縄の米軍基地問題でした。

そして、このテーマで博士論文書こうと決めたのですが、それに至るまでは様々な葛藤がありました。米軍基地問題における沖縄の人々の間での“分断”は、「ヤマトンチュ」の都合の良いように取り上げられることもしばしばあり(例.「沖縄の人すべてが基地に反対していない」など)、下手をすると私の研究自体がそうした「基地賛成派」の正当化の言説に使われる可能性もある、と考え、躊躇しました。また、「ヤマトンチュ」である私がこうしたテーマで研究をすることから、私自身がそうした沖縄の人々の“多様性“を利用していると捉えられ得るとも思い、一層悩みました。

今も研究を進める中で、「私でいいのか」と自問自答をするときがあります。それに対するはっきりとした答えはありませんが、自身の「ポジショナリティー」に向き合い続け、沖縄の人々の米軍基地問題を巡る意見や態度の相違と構造的背景をつなげることが、この研究における私のやるべきことである、ということを自分自身に言い続けています。

リサーチクエスチョンの性質や研究期間が若干限られていることもあり、沖縄県在住・出身の方を対象としたアンケート調査をもとにした研究を進めることとなりましたが、アンケート作成にあたり、数名の「うちなんちゅ」(沖縄在住)の方々よりフィードバックをいただきました。ご協力いただいた方々には感謝しかありません。また、すでにアンケートに回答してくださった方々もおり、こちらも感謝・感謝です。

一方で、アンケート調査にご協力いただける方、まだまだ募集しております。「沖縄県在住・出身」で「18歳以上」の方は誰でもご回答できます。ご回答いただいた方にはギフトカードをお送りさせていただいております。ご関心のある方は、以下よりアンケートページにお進みください(添付の「チラシ」もご参照ください)。

これからも、心理学者として、「ヤマトンチュ」として、謙虚に、そして真摯に沖縄米軍基地問題に向き合っていきたいと考えます。いつか研究結果を沖縄の人々に向けて報告できますように…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?