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BTSのスタジアムツアー初日を見にロサンゼルスまで行ってきた話とそれにまつわる覚え書き


2019.05.30
Memorandum on “20190504 BTS Love Yourself ‘Speak Yourself’ Tour at Rose Bowl Stadium in LA”

ゴールデンウィーク後半、2泊4日の超弾丸で、LAに行くことにした。

アメリカでBTSを目撃したいという気持ちは、彼らを追うようになった最初の頃から抱いていた。

思えば私が彼らに熱狂的にはまっていったきっかけは、アジア人である彼らが韓国語の歌で欧米の文化圏に受容されていく渦中にいることがひとつの大きな要素だったし、今でも彼らを追う大きなドリブンになっている。

なぜ彼らにそこまで熱狂するのか。今回、自分の中で整理するためにこの文章を書いている。

30数年間生きてきて、これまで私が文化的に惹かれてきたのは欧米圏のポップカルチャーから広がる文化の景色だった。

大きく人種という観点で見れば、私は彼らと同じカテゴリーに分類されると思うが、ヒップホップに憧れて音楽を志した彼らと私自身の文化への関心は、繋がるものがあると感じている。

憧れと挫折、自分とは何者なのか、どうすれば自信を持って自分自身を受け入れることができるのか。そういうことを彼らの音楽を通して学びたいと思っているところがある。

私はたくさんいろんな音楽を聴いてきたわけではないけれど、ヒップホップは言葉をとても大切にする音楽だと思う。

BTSが発する言葉は、最初期の頃から一貫している。韓国ではアンダーグラウンドのヒップホップシーンが盛んだということを知ったが、彼ら(というか特にナムジュンとユンギ)はアンダーグラウンドシーンではなく、K-POPアイドルとしてメインストリームの文化圏で成功することを志した。その過程の中で起きた彼らの葛藤は、彼らの多くの歌の中で吐露されている。

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最近、BTSは21世紀版ビートルズ、と称されることがある。私は中学生の頃、「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」でビートルズに熱狂する若い女性たちを見ながら、私もこの時代の若者だったら同じように熱狂していただろうなぁ、と思っていた。確かにあの時の雰囲気と、今の彼らを取り巻く雰囲気には似たものを感じる。

またBTSのメンバーは全員韓国の地方都市出身だが、イギリスの片田舎出身の少年たちが黒人の音楽に憧れて音楽を志し、成功していったビートルズの背景と、確かに少し似ているところがあるように思う。ただし、決定的な違いがあるとすれば、ポップカルチャーの覇権を握る者は、誤解を恐れず言えば、常に白人に代表されるマジョリティーだったし、今も現在進行形でそうであるという事実だ。

BTSがメインストリームでここまで大きい存在になったのは、マイノリティーである彼らが、自分がどうありたいのか、世界とどう接していきたいのかを自分の言葉で一貫して真摯に語ってきたことがとても大きいし、ファン達は彼らの姿を見て、音楽を聴いて、元気づけられているのだと思う。そしてその事実を彼ら自身も十分に理解している。

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今回のLA公演。初めてのスタジアムツアーの初日の公演だった。会場はLA中心部から少し離れたパサデナという街にあるローズボウル・スタジアム。後から知ったのだが、1993年のあの伝説的なマイケル・ジャクソンのスーパーボウル・ハーフタイムショーもこの場所で行われている。1922年に建てられたスタジアムなだけあり、建物には良い意味で歴史を感じた。スタジアムの周りには広大な芝生が広がっており、さらにその外は森に囲まれている。当日は快晴で、ライブが始まる前から高揚感で包まれていた。

もちろん、会場の周りにはBTSを見に来たファンで溢れかえっていた。多くの人がBT21のカチューシャを付けたり、彼らにちなんだファッションに身を包んでいるので、さながらアミューズメントパークに来たような感覚を受けた。来ている人の人種・年齢層・性別の多様さは、これまで私が見に行った公演(東京と香港)と比べると、特に際立っていたと思う。

今回のツアーは、直近のLOVE YOURSELF(LYS)ツアーのアンコール公演という位置付け。新曲は最初、中盤と最後に披露されつつ、基本的には、LYSツアーの構成を踏襲していた。しかし、ただ前回のツアーをそのまま踏襲するのではなく、スタジアムという開放的な空間にふさわしい演出が随所に加えられていて、観客を存分に楽しませようという制作側の思いが終始伝わってくる公演だった。ツアー初日だったということもあり、初めて目にする演出が続き、驚きと感動が次々と目の前で繰り広げられて、息もつかない展開だった。本当にあっという間に終わってしまったように感じた。

ライブ中の記憶は、もはや詳細に記述することができないのだが、それぞれのソロの演出がとても凝っていて素敵だったこと、Anpanmanの演出がとても可愛かったこと、アンコールを待っている間に会場内で自然と観客のウェーブが発生したこと、アンコールでナムジュンとジョングクが携帯電話のライトを付けて掲げてくださいと言って会場中が光に照らされた時の美しい景色、その景色を見て、ジョングクが「あなたたちは僕たちの夜を照らす光です(You are the light to our night)」と言ったこと、テテが初日なので緊張していた(そんな風には全然見えなかった)と言っていたこと、ジンが最後のコメント中に感極まっていたようだったこと、ユンギがいつも通りの親密に語りかけるような落ち着いた口調で話していたこと、ホソクが目を潤ませながら少し拙さが残る英語で一生懸命に感謝の気持ちを話していたこと、ジミンが最後まで何度も何度も別れを惜しむようにThank youと叫んでいたこと、最後の花火が綺麗だったこと・・・が走馬燈のように思い出される。

結局、私はさらに彼らのことが大好きになって、日本に帰ってきた。こうして日常を過ごしている中でも、彼らから多くのことを受け取っている。おかげで“You are the light to our night”という言葉をそっくりそのまま彼らにお返ししたいくらい、毎日が本当に楽しくて仕方がないのだ。そして同時に自分自身を顧みて、やもするとすぐ退屈になる日常を少しでも思い出深いものにしたい、今のこの瞬間を大切にしたい、と思うようになった。多かれ少なかれ、彼らのファンは同じような影響を受けているのではないかと感じている。

そして今もどこかで彼らのファンが増え続けていることを感じる。つい先日、彼らの公式ツイッターのフォロワーが2000万人を突破した。彼らがツイッターで何かを発するや否や、一瞬で「いいね!」が何十万件にも膨れ上がるのを見るのは、ファンダムの大きさを感じられてわくわくする瞬間だ。彼らの快進撃はまだまだ続くのではないか、と期待せずにはいられない。そんな中でも彼らは今まで通り、自分たちが納得のいく形で、真摯な姿勢を維持したまま前進していくのだろう。その姿をこの先もできる限り見続けていきたいと願っている。


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