見出し画像

新曲「It's only lonely crazy days」楽曲レビュー(その1) 〜らしさ満載の最高のロック〜

前書き

2023年3月8日、今日はエレファントカシマシの4年9ヶ月ぶりの新曲、シングル「yes. I. do」の発売日である。表題曲の「yes. I. do」は先行配信で公開されていたが、B面の「It's only lonely crazy days」は今日解禁された。

解禁されたので、すぐに聴いた。最高だった。本当に最高だった。
興奮覚めやらぬうちに、感想を書き留めておきたいと思う。

※ どうでもいいが、普段ですます調で note を書いているのに、あまりにテンションが上がったばかりに、である調になってしまった。どうも自分は気分が高揚すると文体が固くなる傾向にあるらしい。たぶん地が出るのだと思う。しかし、エレカシ35thのお祭騒ぎで忙しい今、いつも通りの雰囲気に推敲する暇も惜しいので、このまま勢いに乗せて投稿する。

最高純度の宮本浩次

聞いて真っ先に思ったこと。宮本浩次の純度が高い!

もっとシンプルに言えば、ものすごく、宮本浩次らしい。
もっと言えば、ものすごく、宮本浩次の良さが全開になっている。
これは私としては最高の賛辞のつもりだ。

今更だが、私はあえていえば「エレファントカシマシ」のファンでも「宮本浩次(ソロ活動名義)」のファンでもなく、「宮本浩次(一人のミュージシャン)」のファンである。
もちろんエレカシもソロも全力応援しているが、それはやはり、どちらも宮本浩次という一人のミュージシャンが関わっているから、というのが最大の理由なのだと思う。

宮本先生がソロ活動をやったことによって、私はファンとして「エレファントカシマシ」と「宮本浩次(ソロの名義としてではなく個人)」を分離して考えられるようになった。それはおそらく先生本人にとってもそうだったのではないかと思う。

もう、「エレファントカシマシすなわち俺」ではない。

確かにエレファントカシマシの大部分は宮本浩次なのだが(作詞作曲をボーカル兼フロントマンが担当するバンドは大抵そうだと思う)、一度そこを離れたことによって、エレファントカシマシの中で宮本浩次が担っていた部分と、そうでない部分が明確になったように思う。

そして「It's only lonely crazy days」は、もちろん「エレファントカシマシ」の楽曲だが、何よりも「宮本浩次(個人)」の純度が高い。しかも、私が特に好きな部分の純度が高く、なんなら量も多い。最高だ。

メロディに感じる「らしさ」

まずはメロディから見ていきたい。この曲はものすごく、宮本先生らしいメロディ構成になっている。
歌があまりに凄すぎてあまり注目されることがないが、個人的には宮本先生はメロディメイカーとしても相当な天才だと思う。

その素晴らしさや特徴はまたどこかでじっくり語ってみたいが、とにかく、この曲のメロディはすごく「らしい」のだ。
具体的には、この曲は低音で始まり(時に考えてもしょうがねえ)、じわじわと上り下りしつつ(It's alright, right, right, right, 一切合切 It's alright)、曲の一番盛り上がる箇所(It's only lonely crazy days)では高止まりする。そして2番の頭で、また最低音に戻る。

この音程の推移は、宮本先生の作るメロディの特徴の一つで、大変に魅力的な点でもある。
例えば、同じような構成の曲をあげれば、「東京からまんまで宇宙」「P.S. I love you」「今を歌え」「風と共に」などがある。

低音で始まり、上り下りしつつ、最終地点では高止まりする。この構成は「ネガで始まり、突き抜けてポジへ到達する」ロックそのものであるとも言えるし、「弱さに抗いつつ引き摺り回して自由へ向かう」宮本先生の生き様がまんま出ているとも言えるのではないだろうか。

まあ色々と分析することはできるだろうが、個人的には、この「らしい」メロディ構成が、要するにものすごく好みなのである。たまらなく好きだ。

Babyの表現に感じる「らしさ」

次に歌の表現を見てみたい。シンプルに、個人の好みの話をする。

私は、宮本先生の歌う「Baby」が好きだ。先生の曲に登場する「Baby」は絶妙で、特徴的なニュアンスを持っている。不特定多数に語りかけるようでもあり、特定個人に向いているようでもあり、ただの感嘆詞のようでもある。

この特徴はスライダーズのトリビュート「のら犬にさえなれない」で同じ単語を歌ったことで明確化された。他人の曲を歌うときにはその特徴が出なかったからである。気になる人は聞いてみてほしい。

そして、この「Baby」の部分に、下手に意味のある単語を歌うところよりも強い情感が乗るのが先生の歌の特徴でもある。ファンが歌詞のない「歴史前夜」を絶賛するように、歌詞がない方が芸術点が高いのはいつものことだが、歌詞ありの歌でもその芸術点の高さを楽しめるポイントの一つが、Baby なのだ。

これは時に少年のようなストレートな声の「ベイベー!」になり、切なげな「ベイビィ」にもなる。私はどちらも好きだが、この曲には低音の渋い「ベイビィ」も高音の「ベイベー!」も両方入っている。最高すぎる。

ちなみに、歌詞ありの歌でも芸術点の高さを楽しめるもう一つのポイントが「オーイェー」なのだが、この曲にもちゃんと(?)「オーイェー」がある。
しかも、若い頃はストレートだった「オーイェー!」が過去最高に渋い発音の「オゥ、イェ〜イ」になっている。年を取った、年相応の宮本浩次という感じで、絶妙に良い。

歌い方全体に感じる「らしさ」

私の好きな先生の歌い方のポイントは「Baby」「オーイェー」だけではない。
細かく挙げていくとキリがないが、色々と特徴的な歌い方をする歌手なのだ。そしてそれがものすごく私の好みに刺さるのである。

例えば、発声位置が上下にも前後にも細やかにかつ急激に移動する、なんとも言えない揺らし方(サビの、lonely crazy など)。

例えば、末尾の声を飲み込むような独特の発声(days、sunrise)。

いつも通りと言えばいつも通りなのだが、どうしたわけか、この「It's only lonely crazy days」はいつにも増して、この手の特徴的な良さが際立つ部分が大変に多いのだ。

一切合切 It's alright に感じる「らしさ」

すでに長文を書いてきているが、実はいちばん肝心の部分にはまだ触れていない。ロッキング・オンの山崎さんも言及されていたが、この曲はなんと言っても「一切合切 It's alright」の部分が最高なのだ。

個人的には、この1フレーズだけがサビだと言い切りたい。
それくらい、このフレーズは良い。そして、最高に先生「らしい」。
ここだけでも語れることが相当にあるので、ここは追って別記事にしたいと思う。

おわりに

新曲「It's only lonely crazy days」は本当に良い。

もちろん人間性や生き様も尊敬しているが、何よりミュージシャン宮本浩次のファンである私としては、そのミュージシャンとしての特徴的な良さがこれでもかと詰め込まれているこの「It's only lonely crazy days」は最高に嬉しい新曲である。

以前書いた「yes. I. do」の楽曲レビューでは「エレカシらしい/らしくない」という観点に立って感想を述べたが、もうそんなことはどうでもいい。ソロとかエレカシとかもはやどうでもいい。比較するのもばかばかしくなってしまった。先生が、先生らしい曲を作って、先生らしく歌っている。
それがもう最高じゃないか。楽曲を発表する名義がエレカシだろうがソロだろうが、どうでもよくなってしまった。

でも、アリーナツアーでこの曲が演奏されるのを生で聴いたとき、私はこの感想を全面撤回する自信がある。エレカシは最高だ!で上書きされるに決まっているのだ。早く、私に前言撤回をさせてほしい。

アリーナツアーの初日まであと3日。期待は高まるばかりである。

追記:続編

続編を公開しました。こちらもぜひ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?