あの頃、池上本門寺は「ほんもんじ」だった。
わたしが中学生の頃までは、年に一度、家族旅行で東京に来ていました。
大田区で生まれ育った母にとっては、帰省です。
父の運転する車で長野を出て、東京に着くのはいつも暗くなってからでした。
車を降りると、涼しい風の中に金木犀の匂いがする。
金木犀の匂いは、わたしにとっては「東京の匂い」でした。
コンパクトな平屋の横には、かつて祖父が営んでいた工場がくっついている。
玄関を開けると、目の前の棚に並ぶ、さまざまな大きさのトロフィーが目に飛び込んで来ます。
祖父母はずっと社交ダンス