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人生は「電車でGO!!」だ
私はゲームが大好きです。自分のアカウントにクロノトリガーのファンアートばかり上げるほどに。
しかし、アクション操作が死ぬほど苦手なので、できるのはRPGかアドベンチャー、サウンドノベルくらいです。
どれだけアクションゲームが下手かというと、ファミコンの「スーパーマリオ」の最初のステージに最初に出てきたキノコみたいなやつに何度も殺されて、断念したレベルです。(←子供から「クリボー」だと訂正が入りました)
あれをヒョイヒョイクリアできることが信じられない。あんな足場の悪い、落ちたら溶岩に真っ逆さまみたいな状況で、冷静さを保てるなんて。すぐテンパる私には無理です。「うわーもうどうにでもなれ!!」と、溶岩に突っ込んで自爆したくなるほどのプレッシャーに勝てないんです。
他のジャンルといえば、SFCの「マリオカート」はまだ少し遊べました。
たしか「ヨッシー」を使ってました。すぐ障害物にぶつかるので、立て直しが早いヨッシーが良かったんです。
(さっきから昔のゲームの話ばかりしていてすみません。最近のゲームはほとんど知らないんですよ)
まぁでも、決して上手ではありませんでした。小学生の従弟たちと遊んだ時、ボロ負けした記憶があります。
モノにぶつからず走るのが精一杯で、罠とか使う余裕なんてないんですよ。(緑の甲羅みたいなやつ、あれ上手く使えたためしがない)
だから必然の敗北でした。従弟たちもさぞ物足りなかったことでしょう、申し訳ない。
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ですから、自分がのめり込んだRPGなどの話もしたいんですが(特にクロノトリガー!!)、これをやるともう止まらなくなるので、今回は自重します。アホかというくらい深読みしては、とめどもなく語り過ぎて、いいかげん家族にはイヤがられてますので…(三日くらいクロノのこと喋ってもいい合宿とかあったら、どなたか教えてください)
今回語りたいのは、「電車でGO!!」というゲームの話です。
このゲームは、運転シミュレーションというジャンルで、文字通り電車を運転するゲームです。かなり本格的な運転操作を楽しめるという事を聞いていました。
マリオカートすら満足にできない私には、普段だったらまず買わないジャンルのゲームです。
そんな私がこのゲームを購入するに至ったきっかけは、ある日父親が「昔、電車の運転手になりたかったんだ」と急に言い出したからです。
長年一緒に暮らしてきた父に、そんな夢があったなんて少しも知らなかったので、私は驚きました。
そんな父なら、「運転手になった気分を味わえる」と話題のこのゲームは楽しめるんじゃないかな?と思いました。操作することで、実際の路線を走ってるように、風景も変わるという話です。父にとっては、夢のようなゲームなのでは、と思いました。
父親はゲームを普段まったくしない人間なので、まず私が試運転、とばかりに、ゲームを始めてみました。
操作はそんなに難しかった記憶はありません。ナビゲーターのお姉さんが親切に指示してくれるので、とりあえず走らせることはできました。
しかし、成績はヒドイ有様でした。「スピードが速すぎた」のです。
私は衝撃を受けました。このゲームは、「タイムが早ければ良い」というものではないのです。
「何を当たり前の事言ってるんだ」と、このゲームを知っている方に呆れられそうですが、私はこの時まで、「乗り物を走らせるゲームは、タイムが速ければ速いほど良い」という、固定概念に囚われていたのです。
そりゃそうです、走らせてるのはレーシングカーではなく電車。
スピードを出し過ぎては危険ですし、決まった時刻に駅に到着しなければいけないのです。「早く着くぶんにはいいだろ」というものではありません。早く着きすぎることで迷惑する乗客も居る事でしょう。
道理で、ナビゲーターのお姉さんが「スピード出し過ぎです」「駅に到着するのが早すぎます」のような、苦言を呈していたはずです。私はそれらの声を「結構うまく走ってるのにうるさいな」と無視していたのです。
その後、「定刻に駅に着くように電車を走らせる」事を目的に、ゲームを遊びなおしてみると、思いのほか難しい事が分かりました。先ほど「さほど難しくもないな」と感じたのは、ただやみくもにゴールに向かって突っ走っていただけだったからです。
この、「早ければ早いほど良いわけじゃない」というゲームの存在は、私に深い印象を残しました。
決まった時刻に、特定の場所に着く。それを目標とするこのゲームに、大げさではなく、人生を感じたのです。
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どうにも自分には、凝り性の性格があり、一つの仕事に心血を注ぎすぎるところがあるのです。漫画家時代には、それが災いし、何回も締め切り破りを行うという不始末をしでかしました。
このゲームで遊んでいた時、私はすでに漫画を離れ、会社員をしていました。
主にデザインの仕事をしていたのですが、私はそこで、「凝れば凝るほど良い、というわけではない」という事を思い知りました。
クライアントが、あっさりしたデザインを望んでる時もありますし、とにかく早い納入を望んでいる時もある。
その要望に反して、「自分が凝りたいからそうしたい」なんていうのは、ただの自己満足に過ぎません。
目的に応じて、その時々の「ちょうどいい」力加減を注ぐ必要があるのです。
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私と同年代の方は、学校などでやたら「順位」をつけられ、「できればできるほど良い」「なんでもできたほうがいい」のような、教育を受けませんでしたか?
その弊害かもしれませんが、私にはなんでも、「がんばり過ぎる」ところがあります。それで良い仕事ができることもありましたが、身体を壊したこともあり、トータルで見たら「やめた方がいい」と言わざるを得ません。
過ぎたるはなお及ばざるがごとしという諺もある通りに、物事にはなんでも「適量」というものがあるように思います。
それを測ることは、もしかしたら、がむしゃらに前進する事より、難しいかもしれない。
そして同時に、漫画を描いていた時に、締め切りを過ぎてまで、自分の作品に思う存分心血を注がせてもらえたのは、当時のジャンプ編集部に、本当に寛大な扱いをしていただいていたのだと、今噛みしめています。
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ちなみにこの「電車でGO!!」ですが、父は一度も遊んでくれませんでした。
ゲーム機には触るのも怖いそうです。面白いゲームなのに、もったいない。
そしてこの経験のおかげか、私に良い変化があったことを付け加えておきます。
昨年出版していただいた本に、30年ぶりに新作を描きましたが、一週ごとに設けて頂いた締切に、私は一度も遅れずに済んだのです。(当たり前の事ですが…!当時のジャンプ編集部の皆さま、本当に本当にすみません!!!!)
社会人として働いた経験と「電車でGO!!」に、感謝したいと思います。
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