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49. 何しろ心安らぎたいときにみる映画3選

年間100本映画を観ることを自らに課して10年目のわたくしが、映画初心者のために「なりたい気持ちで映画セレクト」する企画、THREE FOR YOU。49回目のお題は、HSP友達で、世の中のいろんなおかしさを引き受けすぎてすぐに疲れてしまうというTさんから、緊急事態な今だからこそ、どうかご自愛ムービーとして紹介したいお題をいただきました。

なんだかとても、疲れています。肉体的な疲れももちろんなんですが、精神的なものが大きいというか。色々なことが気になってしまって、勝手に眠れなくなったり。なのでせめて、この家から出ずらいご時世を、おうちで安らかに過ごすための、何しろ心安らぐ映画を教えて欲しいです。

安らぎ大事。そして映画は、スペクタクルでドンパチでスッキリなものもいいけど、2時間を贅沢に、心静かに落ち着かせることだってできると思うのです。「波乱もドキドキも少なめ」「心がなんだかスッキリと浄化される」ような、そんな映画を僕なりにTさんのことを考えて、3本選んでみました。

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ローマの休日 

1953年公開
監督:ウィリアム・ワイラー
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ローマの休日

ヨーロッパ某国の王女が訪問中のローマで、ふとしたアクシデントから一日だけの”休日”を新聞記者と共に過ごすお話し。ラストはちょっぴり切ないんですが、それまでもうほんとに微笑ましさ全開の、ほっこりし続けられるラブコメディで、不朽の名作はその名に恥じないなあと。シンプルで骨太なストーリーを、歴史に残る名優が演じているわけで、文句のつけようがないですよね。CGも巨額セットも無い当時だからこそ、ローマというロケーションと、ヘプバーンとグレゴリー・ペックの美男美女っぷりが、素材そのままで飛んできて、すごい。アン王女可愛い。それだけで、安らぎませんかね。この映画から感じる「心の安らぎ」は、”どんなに地位や周囲からの期待があっても、心にいつも無邪気さを”ということでしょうか。どうしてもしんどくて、何もかも脱ぎ去りたい時は、「今日は”ローマの休日”モードで行こう!」と決め込んで、SNSやらメールやら全部閉じて、ずっとやりたかったことをまさに今やればいいのだ!と、アン王女を見ると思えてくるはず。


ロスト・イン・トランスレーション

2003年公開
監督:ソフィア・コッポラ
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ロストイン

日本企業のCMに出演するための来日したミドルクライシス気味な俳優が、夫の付き添いでこれまた来日している放置若妻と、不思議な友情を温めるお話。これは、心安らぐのか賛否分かれると思うのですが、きっとTさんならわかってくれるはずだと思って、攻めたレコメンドをしてます。基本的に、寂しい映画なんです。異国の地で、人とのつながりや温かみが掴みづらいTOKYOを、浮世離れした天空のパークハイアットから見下ろすあの浮遊感。「今、この同じ空気を吸っている人の中に、私のことを知っている人はいないんだ」という虚無感。そんな中で、そこで初めて出会い、自分が「何者であるか」という前提をお互い無しにして向き合える間柄に救われる二人。この映画から感じる「心の安らぎ」は、”誰も自分のことを知らないという安らぎもときに大切に”ということ。僕も、海外にひとり旅に行って、誰も自分のことを知らない雑踏で一人、底なしに「安らぐ」ことがあった。マラケシュの市場でオレンジジュースを飲んだ時、クスコの夜を一人でさまよって散歩した時、NYのマンハッタンをトライベッカからセントラル・パークの北端までひたすら歩ききったとき。全てのしがらみやらペルソナやらを脱ぎ捨てられて、なんだかとてつもなく「自分を生きている」感じがしたんです。HSPの人は、人との関わりの中でいろんなことに気づきすぎて、自分への期待値や眼差しを過敏に受け止めすぎて、それで疲れちゃうのです。だからときに、完全な孤独が安らぎになることを、この映画で思い出して欲しいなあと思っての1本です。

パターソン

2017年公開
監督 : ジム・ジャームッシュ
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パターソン1


小さな街で妻と二人、慎ましやかに日々を過ごすバス運転手の、ある一週間のお話。犬をバーの前で待たせすぎるといつか復讐されますよっていう物語。っていうのは冗談で、ジャームッシュさんの最終形態ともいうべき、この何も起こらない中でこそ感じられる、日常の細かな心の揺れ動きを、詩という題材も絡めて丁寧に描いた感じ。僕は好きです。何しろ、主人公夫婦が、幸せそうなんですよ、もうそれだけで基本は何もいうことないじゃないですか。バスが故障したり、バーで喧嘩沙汰が怒ったり、色々ストレスフルなこともあるけれど、だからこそ際立つ、夫婦が仲良しということの得難さ。奥さんが、可愛らしくて微笑ましくて。この映画から感じる「心の安らぎ」は、”何か起こしたり、何者かにならなくても、生活を丁寧に折り重ねていくだけで十分、人は幸せを感じられる”ということ。「充分贅沢だし幸せじゃねーかこの主人公!」と思う人もいるかもしれませんが、どうか比べるのではなくて、自分なりの1週間を、焦らずにまずは丁寧にやりきってみると色々な発見があると思う。僕は最近、急須でお茶を淹れて、出切った茶葉を食べるということを実験的にはじめてみて、茶葉って美味いなあとか、翌日の便通が劇的ビフォーアフターだなあとか、それだけで気づきの喜びを感じたりします。うんこでも人は驚けるし喜べるとまずは思い込みつつ、みてもらえるといい一本。

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こんな3本。自分がただそこに存在しているだけで、それ以上何か必要なことなんてないから、そこで思ったことを思ったように、言ったりやったりしてみればいい。それが共通して表現されていることかもしれないなあと、3本並べてみて感じます。その振る舞いに対して、やいのやいの言ってくる他人は、一旦プロテクトしていいと思うのです。何しろ安らぎには、自分の個人の安寧と、それを決して否定せずに共に分け持つことのできる信頼できる人がもしいるならその人と、静かに佇んで時間をただ過ごす。それだけで、色々救われることは少なくないと思うのです。Tさんだけじゃなくて、こんな世の中だから、実質的にコロナ禍で不利益を被るような立場じゃなくても、なんとも言えずそこはかとなくメンタルが疲れている人は少なくないと思うので、ぜひあったかい部屋でご自愛タイムとして、お気に入りの飲み物と一緒に映画、よかったらみてくださいませ。

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