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5. 自分とは他者である、っていう3本

前、OB訪問でキャラキャラうるさかった大学生にTFYした記事を読んだMさんが「ポジティブな自意識ムービーはないか?」とコメントされていたので、確かに自意識って持ちようによっては全然悪いものではないし、むしろ人間だれしも、自分らしく生きていくためには多かれ少なかれ絶対に必要なものなわけで、ちょっと今回は自意識のポジティブな側面を考えさせられる3本を見繕ってみました。個人的にも、いままで見てきた全映画の中で大好きな屈指の3本になったので、要するに自分は自意識について描写された映画が刺さりやすいタチなんだと思います。やっぱりこじれ太郎。
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リトル・ミス・サンシャイン

2006年公開
監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
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娘がミスコンの最終審査に図らずも進出したことから始まる、家族のドタバタキャラバン劇。なんか、良かった。うん。ラスト、家族みんなでステージに乱入するところが、そこはかとなく美しくて、泣きそうになったw 家族って、難しいし、選べないし、わずらわしいし。旅に出る前の家族は、お互いのそれぞれの自意識に対して「くだらない」「尊重に値しない」ものだとお互いを冷めた蔑みの眼でどこか見下しあっていて、オリーブちゃんのミスコンにも呆れ気味。道中、いざこざし続けながらニューメキシコからカリフォルニアを目指す中でその蔑み合いが露呈していき、どんどんギスギスしていくんだけど、同時にそのくだらない自意識に対しての狭量さが、滑稽に面白くなっていくのは、ひとえに小さなオリーブの純粋に前に進む力が一つに絡めとっていくからこそ。子供って最強ですね笑 そしてそれはなぜかと考えると、オリーブちゃんに「自意識なんてない」からだと思う。もうこれは、子役のアビゲイル・ブレスリンちゃんに尽きるでしょう。この映画から学べる「よい自意識」とは、”ホントに夢中な人に自意識なんてない”かと。それが理想だなと思いました。

脳内ポイズンベリー

2015年公開
監督:佐藤祐市
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二人の男性との恋心に揺れる三十路女子の脳内会議と決断のお話。
恋に奥手なアラサー女子が脳の中がぐちゃぐちゃになりながら悩み進んでいくんだけど、自分自身、典型的な脳内に会議室持ってる系人間なので、もう共感しかなかったのですが、役者が揃ってて、歯ごたえのある映画でした。人って矛盾するし、なんでもかんでも合理的に一貫した行動をとるわけではないし、その逡巡っぷりがなんともコミカルに、しかしながら「わかるわー」っていう共感満点な描写で、きっと原作もいいんだろうけど、映画が、芝居がとてもいかった。佐藤監督というと、同じ密室劇の「キサラギ」がかなーり好きで、今回も会話劇というか、濃厚な演技の応酬が見られることを期待していって、期待通りの出来で満足でございます。 結局美味しいところは西島秀俊がズバっと持って行きますが、彼の演じた「理性」の名前が吉田だったのが、笑えますたw この映画から学べる「よい自意識」とは、”くよくよ悩んで迷ってもいいから、自分が自分で嫌いになる結論はやめよう”かと。いい結果と、いい選択は別ってことだなあ。

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

1997年公開
監督:ガス・ヴァン・サント
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天才的頭脳を持ちながら虐待のトラウマから心を閉ざす青年の、成長と自立のお話。これは何回見ても、いいよね。主人公に、すごい共感するんだよね。自分をさらすのが怖くて、嫌われたくないから関わらなくて、失敗したくないからやらなくて、今の生活にしがみついて。「そんなに頭がいいのに、こんなに簡単なことにも君は答えられない! 君のやりたいことは、なんだ?」 耳がいたいです。素直にならないと、やさしくなれないし、強くなれない。プライドと自信喪失が裏腹で同居するのは誰しもあることだと思うんだけど、そのコントラストの激しさが苦しくて、向き合う人を傷つけながらも、それでもそこに答えを出していく様にいつも号泣。ベン・アフレック演じるチャッキーがウィルを突き放すシーンが、ヤバイ。親友って、きっとそういうことですよね。この映画から学べる「よい自意識」とは、”あなたが思っているよりもあなたはクズでもダメでもなくて、素晴らしい存在、と言ってくれる人がいる限り人はいていいんだよ”かと。


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まとめて思ったのは、いい自意識と悪い自意識との差は、「他者との関わりがそこにあるか」だなあと。逆説的ではあるけれど、本当に自分を肯定してくれる自意識って、他者との関わりの中ではぐくまれ自信を帯びていくわけで、悪い自意識は翻って、意固地でだれが何と言おうと関係なくかたくなに危なっかしく自分を妄信していく方向に強いんだなと。「永い言い訳」にもありましたが、人生は他者である、とはまさにこのことで、今回の3本は、その他者が写し鏡のようになりながら「家族」「恋人」「師と友」とそれぞれ異なる他者と、翻って自分のあり方について、苦しいし恥ずかしいし、でもその中で見えてくるものがあるなと思った3本でした。Mさんのお問合せに答えた今回のTHREE FOR YOUですが、この3本は誰に対しても絶オススメなんでぜひぜひ!

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