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愛する我が子に歌う子守唄【レオンさん企画】

💡今回の記事は、レオンさん企画「愛の四大要素について」に参加するために書いたミニ小説です💡

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「今回の曲のテーマは、親から子への愛だ」

スティーブは、自分で書き上げた歌詞をタブレットに表示させ、アンに見せた。

「歌の主人公は、夜の街で働きながら、赤ん坊を一人で育てる若い女性。誰からの助けも得られない中、我が子が素晴らしい人生を送れるように必死で守ろうとしている」

そして一息つき、アンの顔を覗き込んだ。

「君はまだ母親の経験はないが、この曲は歌えるかな?」

アン・マリーは、イギリスで生まれ育った25歳。昨年メジャーデビューしたばかりの駆け出しの歌手だ。今回、イギリス国内で人気上昇中のバンドClean Banditと組んで、曲を発表することとなった。

「そうね。もらった愛ならイメージできるけど、与える愛というのはイメージしづらいかも」

アンは正直に答えた。四半世紀しか生きていない若造の手における曲なのか、正直なところ少し不安だった。

「そもそも、愛には与える以外の要素もある。曲の理解を深めるため、エーリッヒ・フロムが語った愛について、ここで少し見てみることとしよう」

スティーブはおもむろにタブレットを操作して、フロムの著作を表示させた。

「どんな形の愛にも、次の要素が含まれる。すなわち、配慮責任尊重、そして理解だ。

愛する者を積極的に気遣う配慮、
相手の求めに応じる用意がある責任、 
その人らしい成長を願う尊重、
そして相手の立場で知ろうとする理解。

これらの要素を併せ持つ愛こそ、成熟した大人がなす愛だと、フロムは説いている。一方的に与えるだけではないんだ。少しはイメージできるだろうか?」

「ええ、なんだか漠然としていたけど、分かってきたみたい。ありがとう」

アンはスティーブから預かったタブレットをバッグにしまい、椅子から立ち上がった。

「早速練習してくるわ」

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アンの伸びやかな歌声は、力強い歌詞や切ないサウンドとあいまって、大衆の心を掴んだ。アンをボーカルに迎えた曲「Rockabye」は、リリース当初から爆発的なヒットを記録。全英チャートで9週間1位という絶大な人気を見せた。

サビ前でアンが語りかけるように歌う以下のパートは、全てのシングルマザーを勇気づける歌詞として注目を集めることとなる。

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Nobody matters like you
(私にとってあなたより大切な人はいないの)

Your life ain't gonna be nothing like my life
(あなたの人生は決して私みたいにはならないわ)

You're gonna grow and have a good life
(あなたはちゃんと育って良い人生を生きるのよ)

I'm gonna do what I've got to do
(そのために必要なことは全部してあげる)

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レオンさん企画として、小説っぽく書いてみました。実在する曲「Rockabye (Clean Bandit feat. Sean Paul & Anne-Marie)からインスピレーションを受けたものです。2024年5月時点で29億回再生という、超ド級のヒット曲です。私も大学生の頃に聴いて、一気にハマりました。

歌詞の分だけ字数が1000字からはみ出してしまい、すみません…

愛とは何かについて私自身の考えを述べた記事ではありませんが、実際の芸術や音楽の世界でどんなふうに愛が描かれているか見てみたいと思い、こういう題材に挑戦しました。全ては書けませんでしたが、この曲の歌詞全体を通して見ると、フロムの四大要素を自然と含む形になっていたように思います。

【参考】歌詞の和訳はこちらのサイトが参考になるかと思います。

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