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揺れながら

納豆についてるからしを使うようになった。

また1歩大人に近づいた音がする。

でもこんなほんのちょっとのことで、
大人を感じる私はきっとまだ子どもだ。

そうやって少しずつ大人になっていくのかな。

「慣れ」は寂しい

出張から始まった2月。

大きな仕事が一段落した後だったから、
気持ちが軽かった。

部署柄、出張が多く、
体感ではかなり行った1年目の出張回数を、
2年目であっという間に越えた。

回数を重ねる度、
荷造りも荷解きも手早くできるようになる。

1年目の最初の頃は荷物が足りているか、
心配になって何回も荷物を確認してたし、
出張先で泊まったホテルでなかなか寝付けなくて、2日目に睡魔に苦しむことがよくあった。

人は、慣れる生き物だ。

1年目の時は出張を、
日常の中に紛れた非日常だと思えていたけど、
段々と「また出張ですか」と妙に落ち着いてくる

「慣れ」は感情の浮き沈みを抑えてくれる。
ワクワクしたり、緊張したり、
無駄に色んなことを考えることがなくなる。

でも、いや、だからこそなのかな、
「慣れ」って寂しい。

どんなに行動に慣れていっても、気持ちだけは
いつでも初めての時みたいに揺れていたい。

一人旅?

最近出張に行く時、
「いかにその場所を楽しむか」
がテーマになった。

基本的には1人か2人で出張に行くことが多い。

先輩とご飯を食べて解散した後で、
夜に時間の余裕がある時は、
どこかいいとこがないか探して、
行ってみるようにしている。

名古屋で夜にバーに行った。

1人でバーに行くと、
擬似一人旅体験ができる気がする。

「お姉さんどこから来たんですか?」
「普段よくバー行かれるんですか?」

店員さんとだけでなく、
「お仕事何されてるんですか?」
「ずっと東京ですか?」
と、居合わせた他のお客さんとも会話が弾む。

隣に座った方が「大分」って何回か言っていて、
気になって「大分出身なんですか?」と聞くと、
共通点はそれだけじゃなくて、
まさかの出身高校まで同じだった。

偶然の出会いが、
何もない夜を最高の夜にしてくれた。

いつも思う。

誰かと行っていたら、
きっと見ず知らずの人とは、
話さなかったんだろうなって。

1人というだけで、
輪が広がるから辞められない。

最後に一人旅をしたのは4年前の宮古島なのに、
なぜかバーに行くだけで同じ感覚を得られている

宮古島でもひとりでバーに行って、
地元の方と3軒回り、日の出を見てからホテルに戻って、フロントからのチェックアウト時間を知らせる電話で目が覚めて、予約していた帰りの飛行機に乗れなかったこともあった。

お金をかけなくても遠くに連れていってくれる、擬似一人旅、おすすめです。

水のメモ

飲食店のお手洗いにある手を拭く紙、
手を洗った後、勢いで2枚取ってしまう。

2枚の紙で手を拭いた後で気づく。
1枚でも十分だったくらいに、
水で濡れてない面積が広いことに。

雨の音が心地いい。

音楽を聴きながら家に帰る。

ちょっと物足りない耳を、
雨のスパイスが癒した。

いつもは生活音が聴こえないくらいにボリュームを上げるのに、雨音も聞いていたくてボリュームは抑え目にした。

風が強くない日の雨は、
私を癒してくれる。

風が強い日の雨は、
私の心をぐちゃぐちゃにする。

まるで仕事みたいだ。

どんなに面倒なことがあっても、
人間関係とか、
周りが整っていれば大して苦ではない。

面倒なことに、他の面倒なことが加わると、
もう耐えられなくなる。

でも雪は特別だ。

先輩に「最近なんか楽しいことあった?」と聞かれ、ちょっと考えた後で「雪降ったの楽しかったです」と答えた。

地元は雪が滅多に降らないから、
雪は今でも私を子どもにしてくれる。

大雪警報で予定していた出張がなくなった。

夜、窓から外を見ると、
想像以上の雪景色に、ついついワクワクした。

飲み物を買い忘れてたから、
近くのコンビニにだけ行こうと思って、
外に出てみる。

いつも歩いている道なのに、
一瞬ここがどこだか分からなくなった。

幻想的で見惚れて、
そろそろ帰らなきゃ、
でもまだ見てたいって、
気持ちが揺れて、
結局遠回りをして家に帰った。

マイブーム

平日は基本的に毎日自炊だけど、
今月はいつもより多めにキッチンに立った。

眠れない日にSNSを徘徊していると、
バレンタインレシピがたくさん出てきた。

心に余裕があったから、
何か作ってみようと思って、
結局今月は5回もお菓子作りをした。

自分らしくなくてちょっと恥ずかしいけど、
材料を買って、ボウルに入れて、形を整えて、
オーブンに入れて、焼き上がるのを待つ。

その時間は日常の嫌なことを全部忘れられた。

出来上がった後に部屋を包み込む、
くどいくらいの甘い匂いも癖になる。

お菓子作り以外にも、
色んなことをした2月だった。

もはや時代遅れのスイカゲームをしたり、
苦手意識が消えなかった洋画を見てみたり、
苦手だったドライフルーツが大好きになったり、
夏に買って満足してた本を読んだり、
見忘れていたドラマを一気見したり、、

そんな風に、
何か大きな出来事があったわけではないのに、
心が和らいで、穏やかな時間が多かった。

色んな趣味を持つと、色んな自分になれる。

自分はこういう人間だって、
一言でビシッと答えられるのもかっこいいけど、
特に定まってなくても、
気持ちが揺れた方に進む力を持つ人間も素敵だ。

なんだか少し、
自分が分かってきた1ヶ月だった。

無力だな

「自分にできることって何?」

その問いに苦しんだ。

1回目の3連休の中日、
看護の大学に通う妹から、
国試の結果があまり良くないと
落ち込んだ連絡が入った。

なんて声をかけたら良いのか分からなくて
躊躇ったけど、電話をかけてみる。

結果はどうであれ、
これまで4年間、
ずっと頑張ってきたことは事実だから、
頑張った自分を褒めてほしいな。

それが本音だけど、
どうしたら良いか分からなかった。

私は頑張った本人じゃないから。

でもにかく元気になってもらいたくて、
一緒になってネットの声を検索し続けた。

看護試験の教師の人がこんな投稿してるよ、
同じこと言ってる人いたよ、ほらこの人も。

どんなにおもしろおかしく言っても、
それに対して笑ってくれても、
聞こえるのはずっと、
どこか悲しそうな声だった。

朝も早くて、疲れてるはずなのに、
あの時こうしておけば良かったって後悔が止まらなくて、眠れそうにないって言ってたから、
妹が喋らなくなるまで電話を繋いだ。

気づいたら、朝5時になっていた。

妹が目を閉じてみると言った朝4時からの1時間は、ふと自分のことを考えてしまった。

私は、
人生をかけて何かを頑張ったことがないのかも。

だから正直、誰かが悔しい思いをしているとき、
それがどのくらい悔しいのか分からないし、
どんな言葉をかけてもらったら嬉しいのかも分からない。

ちゃんと戦ったことがない私からすれば、
戦うことを選んだ時点で、全員合格点だと思う。

やれるだけやってきたんだから、大丈夫。
なんでも正解にできるよ、
努力の天才だから。って、
あまりにも無責任な言葉をかけることしか、
今の私にはできなかった。

とにかく、
頑張ってる人は無条件に素敵だと思う。

私からしたら、ヒーローみたいな存在だ。

何かを頑張る全ての人が、
何かしらの形で、どうか報われて欲しい。

昔の場所

たまたま2回も、
前に働いていたカフェの前を通った。

夜10時前にはお店の中が見えて、
あの頃のままのレイアウトに懐かしさを覚えた。

その次は、
朝9時なのにシャッターが閉まっていた。

大学3年の秋、
コロナでモーニングが廃止になったことが、
今や当たり前の風景になってしまったみたいで、
ちょっと寂しかった。

同じ週に、
仕事で千葉の方のイオンモールに行った。

ちょっと早く着いたから外を歩いてみると、
風が吹いて、懐かしい匂いがした。

引越してまだ3ヶ月なのに、
こんなにも懐かしく感じるんだ。

2年前、何で千葉に引越したの?って、
何回聞かれたか数え切れない。

でもやっぱり、千葉に住んで良かったと、
離れた今でもずっと思っている。

きっと、風にも気持ちが宿るんだろうな。

かつて通った場所や住んだ場所は、
いつ来ても、私の心を揺らして、
昔を思い出させてくれて、
「今」をもっと好きにしてくれる。

季節の変わり目

凍える寒さで大雪が降ったり、
アウターがいらないくらいに暖かかったり、
今年の2月はいつもよりも、
冬と春が入り混じっていた気がする。

ある朝起きると、くしゃみが出て、
もう春が来てしまったか、と思った。

かと思えば、
音を立てながら冷たい風を吹かせて、
まだ冬でもあるよって顔をする。

そんな風に気まぐれで曖昧さを残して、
あっという間に過ぎてく2月は、
そっけなくて、でも心地良さもあって、
すごく好きだと思えた。

それに、2月は、
すごく大きなイベントがあるわけじゃないのに、
いつも素敵な思い出をくれる。

特別な何かを持っていなくても、
2月みたいにゆらゆら揺れながら、
誰かに何か与えられる人になりたいと思った。

花粉に、自分に負けないように、
3月も精一杯生きよう。



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