【3冊目】「ドイツ人はなぜ、年290万でも生活が「豊か」なのか」から考える、豊かに生きるということの本質
お金って稼いでも稼いでも消えていくもんだなーと思います。
いや、それってお前がムダ遣いしすぎているんじゃないの?浪費しているんじゃないの?という向きもあるかとは思いますが、自分なりに稼いでみた上でふりかえってみると、稼げば稼ぐほど生活水準が無意識的に上がっちゃって、入る金額と同時に出る金額も結局多くなっちゃうんだよなぁ・・・ということが実感値としてあったわけです。
何かに手を出すときに、ほんのちょっとした気持ちで「少しは良いモノにしようかな」と思ってしたことの繰り返しが複利のように膨れ上がっていって、気がついたら財布の底が抜けていた、みたいな感じです。
で、いったん膨れ上がった生活水準ってなかなか落とすことができなくて、それは家族も巻き込んでしまっていればなおさらで、あくせくともっと稼げるようにと頑張るしかないわけです。
これってもう、無間地獄だなと。
だからどこかで見切りをつけて、ほんの少し働いて稼いだ報酬で十分満足できる程度に生活水準を思いっきり下げて、余暇を余暇としてありのまま過ごすことで幸せを得られる人生だったらどれだけ良いことか、それが本当の幸せってことなんじゃないかな、などと考えることがあり、今現在でも結構真面目にこの方向性を検討していたりします。
で、その考えるきっかけを与えてくれた本の一冊が、今回ご紹介する「ドイツ人はなぜ、年290万でも生活が「豊か」なのか」なのです。
著者の熊谷徹さんは1990年からフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に住まわれているらしく、この書籍が出版されたのは2019年ということから、29年ほど現地に住まわれた経験やその間の観察から書かれているとのこと。結構凄いことが書かれているのでつい「本当かな?」と思ってしまうのですが、その点は信頼がおけるのではないかなと思います。ドイツのスペシャリストらしく、類書を何冊も出されています。
というわけで早速中身の話を。
◎ドイツの新しい通貨は自由時間
この「生活さえできれば、あとは自由な時間がありさえすればいい」という考え方は冒頭でお伝えしていた考え方そのままの在り方で、これ自体にはとても共感する一方で、そもそもこの考え方を成り立たせているドイツのシステムも凄いことになっています。
◎期待値を下げれば全てが低コストになる
サービスを最小限にする
↓
サービスコストをカットする
↓
商品が安く提供できる
↓
日常生活が低コストになる
このファーストピンである「サービスを最小限にする」というのは日本人的感覚だとどうしても難しいものだと思うのですが、これをそもそも社会全体でサービスの期待値を下げることで実現しているということが、本当に凄いなー、と感じるのです。
逆に言えば、日常的にサービスを改善し続けるという、日本では当たり前に善いとされていることが長期的に自分たちの首を絞めているのだとしたならば、これほど元も子もないことはないなと思うわけです。
思いっきり高付加価値にして単価を上げて売上を伸ばしたとしても、日本って基本的に給料へ反映されるスピードが遅いですから、価格が上がって給料据え置きという悲しい現実しかないですよね・・・
一方でそんな低コスト社会だと最低限生きていく給与の維持も難しそうですが、
と、書籍にあるのはコロナ前の数字なので現在は分かりませんが、経済自体はしっかり成長しているとのことなので問題はないのでしょう。凄い。
◎経済成長しない時代を豊かに生きる
ただ、どうあれ経済が持続的に成長し続けるという予測はあらゆる場所で否定され続けているように感じます。
別の書籍になりますが、ここで思い出すのが山口周さんの書かれた「ビジネスの未来」です。私たちが生きている現在の経済は「物質的欲求を満たす」というビジネスの歴史的使命が終了した、経済的には成長の終わったいわば高原状態にあって、ここに私たちが向き合わなければならない本質的な課題があると記されています。
そうなると「豊かさとは何か?」という問いは、いよいよ本質的な重みをもって強く問われ始めているのではないかと感じるわけで・・・
熊谷徹さんの書籍で挙げられているドイツ人の暮らしぶりは、まさにその豊かさに対する洞察を広げる上でタイムリーに役に立つ本なのではないかと思って取り上げてみたのでした。
ではでは。
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