記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

十角館の殺人その最後の謎

絢辻行人・十角館の殺人。名作ですよね。
HULU版ドラマが大プッシュされていて観たのですが、こちらも大層良かったです。
それで、本格ミステリとしてはどうでもいい話なのかもしれませんが、個人的に想像を巡らせてきた謎が一つあるんすよね。
以下ネタバレを含みます。







それは、原作では、犯人の動機となったAの死について、犯人が考えていたようにミス研メンバーに断罪されるべき責任があったのか(たとえば無理やり酒を飲ませたとか非日常に酔いしれて救助を呼ばなかったとか)、それともそんなものない不幸な事故(むしろミス研メンバーは助けようとしたとか)ですべては犯人の逆恨みだったのかという点です。
実は、原作でもドラマ版でも、Aの死の客観的な経緯は明記されてなくて、犯人の主観としてしか語られていないんですよね。
ドラマ版は原作を膨らませていて、ミス研メンバーがAに酒を勧めたり、Aが倒れたときに全員が一瞬笑みを浮かべたりするシーンがあるんですが、このシーンもまた、客観的な経緯として描写されたシーンではなくて、あくまで犯人の主観としてこう思っているというだけのシーンです。
はたして、ミス研メンバーには犯人が考えていたような責任が本当にあったのでしょうか。
原作及びドラマ版では確定的な描写がない以上、断言することはできないですが、ひとつ面白いのは、漫画版の描写です。
漫画版では、Aの死因はミス研でクルージングに行った際の事故に変更されているのですが、それだけではなく、Aの死の真相は不幸な事故であったと明らかにされ、犯人もまたそのことを知ります。
この点の解釈もまた自由で、この描写を原作では確定させなかったAの死の真相が不幸な事故であることを明らかにしたと読むこともできる気がします。一方で、漫画版は、わざわざ死因をクルージングでの溺死に変更していることからすれば、漫画版はあくまでパラレルワールドであると読むこともできる気がします。
結局、原作での真相についての決め手はないので、各人が好きに解釈すればよいわけですが、私が好きな解釈は次の通りです。

ミス研メンバーが事実上Aを殺したというのは犯人の思い込みであって、Aの死の真相は不幸な事故であった。
漫画版では、犯人は最終的にその真相を知り悔恨する展開が挿入されたが、原作ではそうした展開はない。したがって、当事者を既に全員殺してしまった犯人は、原作では永遠にこの真相にたどり着けず、ミス研メンバーへの誤認に基づく憎しみに囚われ続けるのである。

ひねくれすぎですかね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?