牌山のランダム性と打ち筋

麻雀の「ランダム性」と「流れ」』で書いたとおり、物体としての牌は近くの牌と引き合ってダマになる性質があります(これは単なる物理現象)。

例えばMリーグルールだと赤5が3枚あるので、打ち筋は多くの場合タンヤオに寄っていきますから、中張牌がダマになりやすくなります。これが牌山なり手牌なりに強く反映されることもあれば、牌の混ざり具合(撹拌率)によりダマが解除されて分散することもあります。
一方、Mリーグで使用されている自動卓のアモスレックス3は、上下そろいの自動配牌など様々な仕掛けにより撹拌率が非常に高くなっています。

この「打ち筋はタンヤオに偏る」のに「自動卓は撹拌率が高い」という状況は、ゲームを難しくさせます。
高い撹拌率のおかげで、いくら打ち手がタンヤオをやっても中張牌のダマは解除されやすいので、タンヤオを成就させにくい山ができる可能性が(従来機種より)高いからです。
(なので高い撹拌率の卓では、相対的にレアな手役の出現確率が上がります。打ち手が狙えばの話ですが)

赤5が3枚あるルールですから、ルールはタンヤオを作らせようとしてきます。しかし山はそれを実現させにくくしてきます。
これでどうなるかというと、ずーっと手牌と山がちぐはぐで何もできないまま半荘が終わってしまった、という事態が起きやすくなります。格別不運というわけでもない、下手を打ったというわけでもない、なんとも判別のつかない、半ヅキのような状態です。これはひとえに打ち筋と山の不一致。

何とかならないかと、あえてタンヤオ以外を狙ってみたり、鳴かせてみたり、絞ってみたり、捨て局を作ってみたり、などいろいろ試してみましたが、基本的には山と手牌の合致度が高くなるのを我慢して待つのが一番の得策‥‥というのが私の実感です。
上記のような「奇策」の類いは、うまくいくこともありますが逆襲に遭うこともありますし、針の穴を通すような和了りができても赤を使えず安く終わって逆転まではいかず‥‥ということもままあります。
それ以前に、我慢してるあいだに半荘が終わることもよくあるのですが。

Mリーグでなくとも、似たちぐはぐ具合は天鳳や雀魂のようなネット麻雀にもあります。
ラスになるとマイナスポイントが大きいために守備に寄るルールで、そのうえプログラム的に作られた高い撹拌率(ただし自動卓とは別物のランダム性)、それでいて赤5があってタンヤオ偏重で、ドラが多く裏ドラもあるので攻撃したくもなる。いろんな設定が互いにバッティングしているわけですね。

山も打ち筋もルールも互いにちぐはぐですから、大枠の正解ルートは無きに等しく、ゲームは多分に運勝負になり、良い腕を持っていても半荘回数を多数重ねないと上に行くのは非常に難しいでしょう。(現代は守備の技術だけはみんな高くなってますしね)
運営会社としては長くプレイしてくれてありがたいのかもしれませんが、嫌になってやめてしまうプレイヤーのほうが多い気がしてしまいます。

私が新ルールを考案した当初は、赤と撹拌率のちぐはぐさをあまり深く考慮していなかったのですが、よくよく考えてみるとかなりの弊害ですね。
なんせ赤5は全ての局でタンヤオを要求するわけです。赤がなくてさえタンヤオは志向されやすいのに、さらに強く志向され、それでいて日々向上する撹拌技術はそれを否定しにかかる。
これは構造的・慢性的な問題であって、基本的に麻雀の腕でどうにかできるようなことではありません。ある意味運勝負になるのだから平等と表現すると聞こえがいいですが、ただ単にゲームをつまらなくしているだけと表現したほうが正しいでしょうね。

その意味では、巷の雀荘が赤にプラスしていろんなボーナス牌を導入して射倖心を煽るのは理に適っています。高まる撹拌率によってつまらなくなろうとするゲームの客を、結果的にですがつなぎ止めているわけですから。(ギャンブル感が強くなりすぎて離れる客も増えるでしょうが‥‥)

まあタンヤオ偏重のルールに、それに沿った山が作られるばかりでは、ただ毎局タンヤオを狙うだけのゲームになってしまうので、それはそれでつまらないのですけども。

撹拌率の向上は自動卓の宿命であり止めようがないので、せめてルールのほうは、卓と慢性的にはバッティングしないのが望ましい。そういう局はできるだけ少なくしたい。
私の提案する新ルールは、赤5がなくドラ2種は毎局変わるのでタンヤオ偏重ではないですし、裏ドラがないので役を作る価値も鳴く価値もあるようになっています。高い撹拌率においては、前述のようにレア手役が相対的に出やすくなることもあり、卓の進化と大まかな方向性は合致していると思います。



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