Pアイランド顛末記#9

★NIPPON

 パンクショップNIPPON。
 店頭にはすすけた日の丸が飾られ、店内はサイケな極彩色で埋め尽くされている。

「おい、ねえちゃん、もっとグッとくるやつねえかな。グッっとくるやつ。」

 しきりに試着していた田中那衛顔のじいさんが金太郎1号を呼びつけた。
 金太郎1号はコミックから眼をはなし、じいさんをみあげた。彼女の眼のなかに残っているバットマンの残像とじいさんの姿がかさなりあってコミックを見ているのか現実を見ているのか区別がつかなくなる。

 ゆらゆらしてるわ。

「ねえちゃんきこえてんのかよ。」

 じいさんの声が、1号の頭の遠く奥のほうでかすかにひびく。彼女のなかにいつもの恐怖がひろがっていく。

 眼ノ前ニ、シラナイヒトガイル。 

 彼女は絶叫した。


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