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トートタロット人生相談所⑫「3人の魔術師…模話氏編⑤~マリネさんとの出会い~」



日曜日の午前中に御形先生のトートタロット占いに行ってきた。土曜日に受けた霊感占いの結果と酷似していた。

いやほぼ同じことを見透かされたという思いで打ちのめされたと言っていい。ただ、二人とも人間的に尊敬すべき方々で、ぐうの音も出なかったのが実際のところだ。精神的に自分がまともな人間なら素直に努力して向上したいと思えるような立派なアドバイスと言えたが、実際のところ自分は傷ついた感じがぬぐえず、すべてを受け入れているとは言いかねた。

しかし、煙を吸い込んだようないつもの不快感の中に…いや心の領域のほんの小さな場所に、草原の光がさしているような、いままで感じたことのない何かが入ってきたような感じがしていた。

それが何かはよくわからなかった。気恥ずかしいが、マリアンヌさんにも御形先生にも珍しく敬意と恩義を素直に感じた部分が確かにあった。

こういう自分に不利だったり耳障りなアドバイスは素直に聞かないのがいつもの自分だったなといまは認められた。ここまで何もかもを失えばこういう決意ができるなら、もっと若いときに何もかもを失えばよかったとも思う。

御形先生にいただいたトートタロットをめくりながら、先生の分厚い解説のプリントを読んだ。そして、さっき本を大量に新宿で買い込んできた御形先生がおっしゃっていた本全部の中から(結構な金額になったが、生きるためのものだ。惜しむことはしたくなかった。)、ラー文書を適当に目に入るものを読んだ。とても面白い。午前中に占いセッションが終わったので昼前にはうちに着いた。買い置きのパンをオーブントースターもないのでフライパンで焼いた。それに、業務スーパーで買ったオリーブオイルをかけて焼いておいた魚肉ソーセージをのせて同じく業務スーパーマヨネーズとしょうゆを回しかけた。極力家具や道具は買わないことにしてある。引っ越ししやすいようにというより、死ぬ準備のためでもあった。

シェアハウスでできた習慣はとにかくゴミはためない。ゴミになるものは買わない、手元に置かないということだった。慣れると心地よかった。



決して上等ではないが厚切りトーストに魚肉ソーセージはかなりうまかった。もう一枚と思ったが、倹約のためやめた。順番は逆になったがモヤシとキャベツいために納豆を食べた。

トートタロットのプリントとは別にあるスピリチュアルリストの連絡先が書かれていた。インターネットでその人の情報を検索した。あまりひっかからなかった。Twitterとかもやってないのだ。連絡先もでてこない、しかし、2ちゃんねるにひっかがった記事があり読んでみると、かなり知る人ぞ知る正確なアドバイスをしてくれるよい評判の人のようだ。

電話番号があったので予約がとれるならと思い電話してみた。

「はい、茗荷谷鑑定研究所です」
「はじめまして、御形先生からご連絡先をお聞きしたものです」
「あら、確か模話さんだったかしら?」
「御形先生からお聞きになったんですか?ぼくの仮名ですが、本名でなくていいんでしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ。マリネも本名じゃないしね(笑)」
「そうですか(笑)、あのよかったら鑑定の予約できますでしょうか?」
「いいわよ。でもお金大丈夫ですか?御形先生からいろんな占いとか鑑定受けてるみたいだって聞いてますけど」
「何もかもは失いましたが、再就職できて社員宿舎にも入ってますし、質素に暮らしてますから、鑑定のお金は十分あります」
「ならいいけど、占い借金で身動きとれない人もいるからね」
「先生のご予約はとることはできませんか?」
「今日は埋まってたんだけどお昼のお客さんがキャンセルになってるから、3時までならいまなら大丈夫よ」
「本当ですか?2ちゃんねるには予約はいつもいっぱいって書いてあったから無理だと思ってました」
「いまは1ヶ月は埋まってるわよ。でも初回の人はとりにくいようにしているだけよ、実は」
「1ヶ月いっぱいなんですよね」
「ふふふ、私働きたくないから一日基本は3人なのよ」
「3人だけ?」
「その枠以外に依頼のあった常連さんを何人か入れるやり方をしてるのよ」
「じゃあ2回目からはなんとか取ることも可能なんですね?」
「ええ、じゃあ午後1時までにうちに来られますか?」
「わかりました。大丈夫です」

電話を切ると同時に御形先生からいただいたものをすべてもってあわてて家を出た。 


【続く】

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