青いトレーナー

 さようなら。
 まだ少し明るい空が、僕の気持ちを押し留めて、やるせなくする。
 帰らなくてはいけない。
 駅の西側に面した小さなバス停。
 無機質な乗り物が僕を送り返す。
 時間と場所と愛する人がすれ違い、ねじれて、離れていく。
 一つの窓から覗ける色彩は、まばらで、艶やかだ。

 鍵を回す。
 気がつけば、勝手の分かる、つまらない部屋の中。三日前、濡れたまま放ったバスタオルが、床で乾ききっている。
 トランクケースを放り投げ。ベットの上、軽く目を閉じる。 
 意識が一人でに逍遥する。
 眠ってしまおう。



 君が泣いている。



 どうして泣いているのか。
 その理由は僕に分からない。
 深く、近づいていくほど、それは遠くに行ってしまい、遠く離れてしまうほど、それは内側から近づいてくる。

 朝が来て、
 鳥も一緒に鳴いている。
 優しく照らす太陽が、日常を携えて、トランクケースに線を引く。
 光った表情に、
 隠しきれない気持ち。
 まだ、少しだけ。
 まだ、もう少しだけ。
 慌てて、ケースに詰め込んだモノを引っ張り出す。
 まだ。
 まだ、大丈夫。

 君の匂い。
 君の微笑み。
 君の温もり。
 感情が溢れだす。
 もう少し、
 もう少し、側にいてほしい。
 もう少し……
 もう少し、
 もう少し。

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