行き過ぎた平等志向

現在、書くことによって親との別れを粛々と遂行中であります。

さて、今日はババの話。
ババは、ずっと中学校の教員でした。理科という科目を教えていましたが、今はその片鱗もありません。先日お友達と話しながら、年をとると本当にやりたかった姿に戻るみたいだよ、という話を聞いて、ほほ―――ゥ、とうなってしまいました。

ババは几帳面です。そして、繊細ではありません。

目の前にある仕事をガツガツこなしてゆくタイプです。今では見られなくなってしまいましたが、その手際は目を見張るものがあり、父親似の私は子供のころから”グズでマヌケなカメ”呼ばわりされていました。(笑)
正しく言うとこうです。
「どうして何もやってないのよ。洗濯物が日が暮れても干したままって、考えればわかるっことがどうしてできないのよ。何のためにお母さんは職員会議で遅くなるってわざわざ電話したと思ってるの。わかるでしょう?帰ってからご飯作ったんじゃあ遅くなるからよ!一から十まで言ってあげなきゃわからないってこと?馬鹿じゃないんだから周りのことも考えなさい!何も手を受けて無いってどういうこと!」
家事というものの手ほどきを受けていない9歳にとって、暗闇迫る夕暮れ時に不機嫌になる妹の相手をするのが精いっぱいのお勤めです。
今でもセリフを再現できるのは、ババがお孫に同じ口調でキンキンやっているからであります。私はようやく慣れてきましたが、ババがそのテンションになると私は体の中のトラウマ防衛本能が発動して仮死状態になります。すると、考える機能が停止するので動きも能無し人間になります。ヒステリックに怒る人は、本当に苦手です。怒られて育つ子供はかわいそうなのであります。(余談ですが、うちの子供はババのヒステリーは全く怖くないと言います。だってママの方が怖いじゃん!だそうです。それを聞いて、保育園の先生にトラウマについての作文を勝手に提出してしまうくらい驚きました。親子の鎖はこうしてつながれていくわけですね・・・。)

まあ、父の血も引いている私はここにいながら別の世界に飛んで行く技も身に着けつつ育ち、現在に至り、とうとう反撃のチャンスを得たわけです。

ババは、かつての給食指導の刷り込みからなのか、家族全員同じものを同じように食べなければいけないし、時間を守らなければいけない、という規律を自分の中に持っています。

ところが、私は作ったおかずを残されると処理がめんどくさいので、食べる人の皿に食べられる分だけ盛りたいわけです。特に、ネギやしょうがの薬味は、5歳の子供は嫌がります。その薬味が乗っただけでその下のおかずを丸ごと食べない事態に陥るので、子供の皿は別にします。もっと言えば、大皿にバーンと出して、食べたい分だけ取り分けていただければありがたいのですが、ババは対応できません。

ババは、自分がどれだけ食べたかを覚えていられないので、そして、周りの人が食べていないかもしれないのに自分が食べるわけにいかない、と思っているので、大皿料理や鍋は食べられません。

今朝は、残り物を処理しようとして、残ったご飯をゆかりご飯にしてジジとババ、私と子供はカレーをかけるように白ご飯、で食卓に出しましたが落ち着かないババです。何しろ、ご飯の色が違いますし、盛り付ける器も違いますからね。
どうして違うのかと盛んに聞くので、特に意味はなく、あまりものを処理しただけですよ、というと一度は納得したふりをしますが、気に入りません。本当は、シラス干し一匹に至るまで平等に皿に盛りつけたいババなのです。

なので、彼女が盛り付けをすると、このゴミのような小さい黒いものは何だ?というものが乗っていたりします。眺めまわしてもわからず、食べてみると、昨夜のナスのぬかみその一切れを4等分にされたものだったりします。(笑)

ある時、子供の皿にゴーヤの炒め物が乗っていないことに気が付いたババは、さっと自分の皿と交換しました。先生は、不足が出れば自分の皿を差し出すものなのです。子供は苦くてゴーヤは食べないから、私の皿の分を少しずつ食べるからいいんだと説明すると、仕方なく皿を戻します。で、3分おきに同じ会話を繰り返します。

更に、ガツガツ仕事をする人はガツガツ食べるので、ババはあっという間に食べ終わります。そして、周りに目を光らせます。
そこ!こぼしてる!とティッシュを山のように押し付けたり、しょうゆかけなさい!と人の皿なのにババ自ら滝のようにしょうゆをかけたり、とにかく回りが気になるのです。

食べた気がせんなあ・・・。

は、たまに来るババの弟の一言ですが、きっとババも食べた気がしていないのではないかと思います。

この世に生れ落ちて食事を楽しめないというのは、なんとも寂しいものです。去年まで、一緒にご飯を食べに行ったり、何かアトラクション的な食卓にしようと試みたり、心を砕いておりましたが、もういいか、とあきらめがついた私。最後にしてあげることは、冷凍庫の一等席を常にチョコジャンボモナカ用に一列空けておいてあげることだと自負するようになりました。これで、ジジがお風呂に行った帰りにアイスを買ってきてあげたよ、と夫婦の会話とババの主食が出そろう訳です。めでたしめでたし。
(がらりと冷凍庫を引き出すとお目見えするチョコジャンボモナカの列は、圧巻です。そして、その隣にいらっしゃいますよ。鯉!)




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